最近、「+87」から始まる電話番号からの着信が増えています。この番号は一見、海外からの電話のように見えますが、実は一般的な国とは異なる、特殊な用途に使われている番号です。もし、知らずに折り返すと高額な通話料金が発生する恐れもあるため、注意が必要です。そこで、「+87」から始まる電話番号や、最近多い国際電話番号について解説していきます。
今回の記事をポッドキャスト風にしました。テキストを読むのが面倒な方は、ぜひこちらをご覧ください。
「+87」は国に属する番号ではなく、大抵は衛星電話
結論から言うと、「+87」番号は特定の国に割り当てられた国番号ではありません。
これは国際ネットワークサービス用として国際電気通信連合(ITU)によって割り当てられている番号帯で、地上の通信網が届かない場所で通信を行う必要がある場合に使われています。つまり、いずれも日常生活で使うことはほとんどないでしょう。
この「+87」の番号ですが、具体的には、次のようなケースで使われます。
- 衛星通信サービス
Inmarsat(インマルサット)などによる衛星電話。遠洋の船舶や航空機、山岳地域などで使用される。 - 海外特殊回線
探査隊、報道、軍事、災害支援などの特殊通信。
また、「+87」で始まる番号をさらに分けていくと、次のように分類できます。
- +870:Inmarsatの衛星電話
- +871〜+874:同じくInmarsatの異なるサービスグループ
このように、「+87」番号はかなり特殊な事情で使われる番号です。たとえば、遠洋の漁船や孤島、砂漠地帯など、通常の携帯通信が届かない場所で使われています。
なぜ注意が必要?詐欺や高額請求の可能性
こうした番号は本来、特殊な事情で使われるものですが、最近ではこれを悪用した詐欺やスパム電話も増えています。
実際にこの番号からの電話に出てみると、「国税庁からお知らせがあります、認識のため1番をプッシュしてください」とか「これから2時間後に通信できなくなります」のような自動音声が流れてきたりします。さまざまなパターンが報告されていますが、いずれにせよ詐欺やスパムの類ですので、出る必要はありません(国民生活センター:不審な国際電話に関する注意喚起)。
中には、「着信に出てしまった!高額の請求をされるのでは?」と心配になる人もいるかもしれません。しかし、基本的に、電話に出ただけで高額な通話料が発生することは少ないとされているのでご安心ください。
ただし、相手側が通話時間を引き延ばすような手口を使ってくるケースもあり、その間の通話料が国際料金で加算されてしまう可能性があります。特に衛星電話との通話は、1分あたり数千円にもなることがあるため、このような番号からの着信には出ないのが最も安全です。万が一電話に出てしまったら、すぐに切ってしまうのがベストです。
また、国際電話だと気づかずに折り返してしまうと、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もあります。特に+87の通話は1分数千円以上かかるケースもあるため、心当たりがない限り絶対に折り返さないようにしましょう。
「+87」以外にもある!要注意の国際番号帯
詐欺に使われやすい国際番号は+87に限りません。中には一見して有名な国の番号もありますが、それを逆手にとって安心感を与え、詐欺の手口に使われるケースも報告されています。
とくに以下のような番号帯は、過去にスパムやワン切り詐欺で使われたことがあるため、十分な注意が必要です。
- +1(アメリカ・カナダ):信用されやすいが、実際には多くのスパムやフィッシング詐欺にも使用されている。
- +44(イギリス):SMSや通話を使った銀行詐欺などで報告例あり。
- +86(中国):アジア圏で詐欺通話の発信源として報告されることが多い。日本語での詐欺音声が流れることもあり、注意が必要。
- +82(韓国):日本国内に対して偽装電話やアンケート詐欺に使われたケースあり。
- +852(香港):日本人を狙った架空請求詐欺やフィッシング電話の事例が確認されている。
- +676(トンガ):詐欺に悪用されることが多い。
- +960(モルディブ):ワン切り詐欺に使用される。
- +881(衛星通信/Iridiumなど):国際衛星通信サービスで、通話料が非常に高額。
これらの番号から着信があった場合、特に心当たりがない場合は出ないようにしましょう。
着信拒否はできる?
スマホで「+87」をはじめとする不審な国際番号からの着信を防ぐには、かかってきた電話を個別にブロックしていくのが基本です。ただ、この方法だと、別の番号からかかってきたら電話が鳴ってしまうので、正直イタチごっこです。そのため、国際電話自体をまとめてブロックしたいと考えるのは自然でしょう。
もし、まとめてブロックしたい場合は、次のような方法があります。
各キャリアの提供するサービスを使う
各キャリアでは、国際電話や迷惑電話の拒否するサービスを提供しています。これらのキャリアを活用するのが有効です。主要なキャリアごとの対応策は次のとおりです。
キャリア | 方法 | 月額料金 | 備考 |
ドコモ | 「迷惑電話ストップサービス」で国際番号を拒否 | 無料 | 最大30件まで登録可能。完全に拒否できない場合もあり。Androidでは外部アプリ併用も推奨。 |
au | 「迷惑メッセージ・電話ブロック」アプリで「切断する」を選択 | 非会員は月額350円(初回30日無料) | 危険な番号を自動検出・警告。auスマートパス会員は無料。 |
ソフトバンク | 「ナンバーブロック」サービスで番号登録 | 月額110円 | 音声通話の着信のみ対応。最大30件まで登録可能。要申込。 |
楽天モバイル | 「迷惑電話・SMS対策 by Whoscall」(オプション) | 月額330円(税込) | Rakuten Linkアプリ自体には拒否機能なし。番号識別や拒否設定が可能。 |
iPhoneは「不明な発信者を消音」をオンにする
iPhoneには国際電話だけをブロックする機能がありません。その代わりに、「不明な発信者を消音」機能をオンにすると、連絡先未登録の番号からの着信を自動でミュートできます。国内の電話でも、知らない番号からの着信はミュートしてしまうのが難点ですが、設定しないよりはマシかもしれません。
ただし、重要な電話(宅配、病院、ホテルなど)もミュートされる可能性がある点だけは注意してください。このようなところからかかってくる予定がある場合は、一時的にミュートを解除しておくのがおすすめです。
「不明な発信者を消音」機能をオンにするには、設定アプリで「アプリ」→「電話」をタップします。電話の設定画面が表示されるので、「不明な発信者を消音」をタップし、表示された項目をオンにします。


Androidは「不明な発信者」をオンにする
Androidも国際電話だけをブロックする機能がありません。サードパーティ製のアプリには国際電話だけをブロックできるアプリもありますが、端末によってはうまく動かないこともあります。また、Androidはメーカーによって使える機能が異なるので、お使いのメーカーでそのような機能があれば、それを利用するのが確実です。
例えばPixelの場合、純正の電話アプリにはiPhoneと同様に不明な発信者をミュートする機能があります。これも国内の電話でも、知らない番号からの着信はミュートしてしまうのが難点ですが、確実に電話に出ないようにするには、設定しておいた方がいいでしょう。
不明な発信者をミュートするには、電話アプリで「︙」→「設定」をタップします。電話の設定画面が表示されるので、「ブロック中の電話番号」をタップし、「不明な発信者」をオンにします。



紛らわしい「0800」から始まる番号にもご注意を
最近、「0800」から始まる電話番号から着信が増えています。「080」から始まるので、携帯電話番号に見えますが、これはフリーダイヤルです。これも非常に紛らわしく、電話に出てしまうと営業電話がほとんどなので、用心するに越したことはありません。
「0800」番号については、👇の記事で詳しくまとめていますので、併せてご覧ください。
まとめ:知らない番号には出ないのが一番
「+87」から始まる電話番号は、私たちのような一般人が使うことはほとんどない衛星通信や特殊用途の国際番号です。万が一着信があっても、思い当たる用件がないなら、電話に出ず、折り返さないことが大切です。対処法をまとめると、次のようになります。
- 心当たりがなければ無視してOK
- 折り返しは絶対にしない
- 不安な場合は番号をネットで検索して調べる
- 携帯会社に相談するのも有効
- 「国際電話の着信拒否設定」をしておくと安心
怪しい電話番号には、くれぐれもご注意を!