最近、ChromeOSとAndroidの統合、そして「Aluminium OS」という新しい名前が話題になっているのを知っていますか?これは、Googleが開発していると言われている新しいOSのこと。
GoogleがPC向けの新しいオペレーティングシステムを開発しているという噂は以前からありましたが、いまいち実際のところは不明瞭でした。しかし、2025年11月に求人情報や内部資料から「Aluminium OS」というコードネームが判明し、ChromeOSからAndroidベースの新OSへと移行する計画がいよいよ現実味を帯びてきたんです。
このOSは中核にAIを据えたものになるというのが最も大きなポイント。しかし、Google新OSはそれほどAIについて叩かれていません。WindowsがAI機能を積極的に導入しようとしたら激しい批判を浴びたのと対照的です。この温度差、不思議ですよね。
そこで、「ChromeOS→AndroidベースOSへの流れ」と「AI OSへの温度差」の2つのテーマを整理して解説していきたいと思います。
ChromeOSとAndroid統合の事実関係
まずは事実関係を整理しておきます。2024年以降、Googleが「ChromeOSをAndroid技術基盤に移行する複数年計画」を進めているという報道が増えてきました。そして2025年9月、QualcommのSnapdragon Summitで、GoogleのデバイスサービスSVPであるRick Osterloh氏は、「これまでPCとスマートフォンで別々のシステムを作ってきたが、このプロジェクトはそれらを統合するためのものだ」という趣旨の発言をしています。
つまり、GoogleはChromeOSとAndroidを「単一プラットフォーム」にまとめる方向性をはっきりと示したわけです。ただし注意したいのは、「ChromeOSが完全に消える」と断定できるわけではないということ。現時点では「AndroidベースのPCプラットフォームへ収束する」方向性が強く示されている段階なんですね。
実際、複数の報道によれば、GoogleはChromeOSとAluminium OSを並行して扱いながら、長期的にはChromeOSからAluminiumへ移行する戦略を取るとされています。既存のChromebookユーザーを放置するわけにはいきませんから、段階的な移行になるのは当然でしょう。
Aluminium OSとは何か(求人情報から読める「事実」)
「Aluminium OS」というコードネームが明るみに出たのは、Googleの求人情報からでした。Android Authorityが発見した「Senior Product Manager, Android, Laptop and Tablets」という職種の募集要項に、「新しいAluminium、Androidベースのオペレーティングシステムに取り組む」と明記されていたのが発端です。
この求人情報から読み取れることをまとめると、Aluminium OSの特徴は次のような感じになります。
- 基盤: Androidベース(ChromeOSではなくAndroidがベースになる)
- コンセプト: AIをコアに据えたPC向けOS
- ターゲットデバイス: ノートPC、デタッチャブルタブレット、ミニPC(Chromebox的なもの)
- 価格帯: エントリーからプレミアムまで幅広く展開予定
特に注目したいのは、「AL Entry」「AL Mass Premium」「AL Premium」といった複数のティアが言及されている点です。これは、Googleが単に「安いChromebookの後継」を作ろうとしているのではなく、本格的にWindows PCやMacBookに対抗する高級機まで狙っていることを意味します。
また、求人情報では「ChromeOSとAluminium OSの両方を扱いつつ、ChromeOSからAluminiumへの移行戦略を策定する」という内容が含まれていました。つまりGoogleとしても、いきなり全てをAluminiumに切り替えるのではなく、慎重に移行を進める計画のようです。
ちなみに「Aluminium」という名前の由来ですが、ChromeOSのオープンソース版が「Chromium」(クロム、金属の一種)であるのと同じように、金属名で「-ium」で終わる単語を選んだのでしょう。イギリス式スペル(Aluminium)を採用しているのも、「Al」という略称を意識してのことかもしれません。Android (A) + Linux (L) = AL、という解釈もできますね。
どこからが「推測・解釈」なのか
ここまで事実ベースの話をしてきましたが、実は多くのメディアや動画で語られている内容には、「推測」や「解釈」が混じっています。そこで、事実と推測の線引きをはっきりさせておきましょう。
一次情報から直接読み取れる事実
- コードネーム「Aluminium OS」が存在する
- AndroidベースのPC向けOSとして言及されている
- AIを中核に据える設計であると求人に書かれている
- 複数のデバイス・価格帯をターゲットにしていると求人に書かれている
一次情報+複数メディアから導かれる強い見通し
- ChromeOSとAluminium OSを並行させつつ、長期的には移行していくと見られている
- 2026年頃のリリースを目標にしていると報じられている
まだ不確定な部分
- 最終的な製品名(Aluminium OSという名前で出るとは限らない)
- ChromeOSブランドを完全に廃止するのか、共存させるのか
- 具体的なUIや操作感
- 既存Chromebookのアップグレード可否
- 日本市場での展開時期
メディアや動画で「iPad/Windows対抗の本命」「AI相棒としてのPC」といった未来像が語られていますが、これらはあくまで現時点での情報から導き出された「予測」です。実際にどうなるかは、2026年以降の正式発表を待つ必要があります。
ChromeOSの「限界」とAndroidベース移行の必然性
なぜGoogleはChromeOSを捨てて(あるいは吸収して)Androidベースに移行するのでしょうか。これには、ChromeOSが抱える構造的な限界があります。
ChromeOSの強みは、軽量で安全、管理しやすいと非常に明確。だから教育市場では圧倒的なシェアを獲得できたんです。実際、アメリカの教育市場では2023年時点で7〜8割程度のシェアを持っていると言われています。
しかし、デスクトップアプリの互換性や拡張性、プロ用途への対応といった面では限界がありました。ChromeOSは基本的に「Webブラウザ中心」の設計のため、PhotoshopやOfficeのようなデスクトップアプリを本格的に動かすのは難しかったわけです。後からAndroidアプリやLinuxアプリのサポートを追加しましたが、これも完璧とは言えません。
一方、Androidなら、スマホ、タブレット、テレビ、車載システム、XRヘッドセットまで、幅広いデバイスで動いています。アプリの数も桁違いですし、開発者コミュニティも巨大。つまり、「PCもAndroid側に寄せる」というのは、リソースの一本化という観点から見ると極めて合理的な判断です。
教育向けの「安価な端末」から、仕事やクリエイティブ用途を狙う本格PCまでカバーする——これがGoogleの描く構図です。ChromeOSでは届かなかった領域に、Androidの技術とエコシステムを使って挑戦するわけです。
また、Androidはすでにデスクトップモード(Dexモードのような機能)の実験も行ってきましたし、マルチウィンドウやファイル管理といったPC的な機能も徐々に強化されてきました。その延長線上に「本格的なPC向けAndroid」があると考えれば、技術的にも無理のない展開だと言えそうです。
AIを中枢に据えたOSの現実性と課題
Aluminium OSのもう一つの大きな特徴は、「AI at the core」。つまりAIを中核に据えた設計になるという点です。これは単なるキャッチフレーズではありません。GoogleはGeminiなどのAIスタックをOSレベルに統合する方向を明確に示しているんです。
実際、すでに存在するAI機能を見てみると、この方向性が現実的な延長線上にあることがわかります。例えば、次のような機能はすでにPixelスマートフォンやChromebookの一部で提供されています。
- 通知の自動整理・要約
- 文章の自動生成や書き換え提案
- 画像の自動認識と編集
- コンテキストに応じたUI変更
- 自然言語でのファイル検索
それを「OSの根幹部分」に組み込むというのが、Aluminium OSの狙いなわけです。
ただし、光があれば影もあります。OSが常に利用履歴や画面内容を解析するとなると、プライバシーの懸念は避けられません。「AIが便利にしてくれる」という利便性と、「常に監視されているかも」という不安感のバランスをどう取るか。これは技術者だけでなく、私たち利用者も考えなければならない問題です。
さらに、Googleという1社のプラットフォームへの依存度が高まるという点も見逃せません。AndroidスマホとAluminium OS搭載PCを使っていれば、確かにシームレスで便利になるはず。でも、それは同時に「Google以外の選択肢が減る」ことも意味します。
なぜWindowsのAIは叩かれ、Google新OSはあまり叩かれていないのか
さて、気になるのは、「AIをOSの中核に」という部分。WindowsにAIを本格的に導入しようとしたら、激しく炎上し、非難の嵐でした。しかし、Googleの新OSはそれほど批判されている感じはありません。どちらも「AIをOSの中核に」と言っているのに、なぜこれほど反応が違うのでしょうか。
Windows Recallが炎上した理由
まずWindows側の事情を見てみましょう。2024年5月、MicrosoftはCopilot+ PC向けの新機能「リコール」を発表しました。これはPC画面を数秒ごとにスクリーンショットして保存し、後から自然言語で検索できるという機能です。
一見便利そうに聞こえますが、セキュリティ研究者やプライバシー専門家から猛烈な批判を浴びました。理由は明確です。
- 既存環境への侵入: 何億台もの既存PCに「デフォルトで」入り込もうとした
- 具体的なリスクの可視化: 画面全キャプチャ+ローカルDB化という仕組みが明確で、危険性がイメージしやすかった
- 暗号化の不備: 初期実装ではデータベースが暗号化されておらず、マルウェアに狙われやすかった
- 信頼の欠如: Microsoftに対する過去の不信感(データ収集問題など)が背景にあった
特に「既存のホームに土足で上がり込んだ」という印象を与えたのが致命的でした。自分のPCで、今まで通り作業しているだけなのに、いきなり「全部記録されます」と言われたら、誰でも警戒しますよね。
結果として、英国のデータ保護機関ICO(情報コミッショナーオフィス)が問い合わせを行い、Microsoftは2024年6月の一般公開を延期。機能を「オプトイン」(ユーザーが明示的に許可した場合のみ有効)に変更し、セキュリティ強化を余儀なくされました。2025年11月現在も、Recallは一部のWindows Insiderでのみテスト中という状況です。
Google新OSが(今のところ)炎上していない理由
一方、Aluminium OSはどうでしょうか。こちらも「AI at the core」を謳っているのに、Recallほどの大炎上には至っていません。理由はいくつか考えられます。
- 新しい選択肢として登場: Aluminium OSはこれから出る新OSなので、「嫌なら選ばなければいい」という心理的逃げ道がある
- 具体性の欠如: 仕様やUIがまだ抽象的で、具体的な「被害イメージ」が湧きにくい
- 段階的な移行: ChromeOSからの移行は段階的で、既存ユーザーを急に追い出すわけではない
- 実装前の段階: 実際に動くものがまだないので、セキュリティ研究者が検証できない
ただし、技術コミュニティでは既にプライバシー懸念やGoogleロックイン(特定企業への依存)の問題が指摘され始めています。つまり、「実はまだ炎上前夜」である可能性も十分にあるんですね。
温度差の本質
結局のところ、「同じAI OS」でも、既存プラットフォームを書き換えるか、新しい選択肢として出てくるかで受け止め方が大きく変わるということです。
Recallは「すでに持っているWindows PCの動作が変わる」話でした。だから「自分ごと」として捉えられ、強い反発が起きた。一方、Aluminium OSは「将来買うかもしれない新しいPC」の話です。今のところは「他人ごと」として眺めていられるわけです。
でも、もしAluminium OSが実際にリリースされて、プライバシー侵害やセキュリティ問題が明らかになったら? その時は、Recallと同じような炎上が起きる可能性は十分にあるでしょう。
ユーザー視点でのチェックポイント
WindowsでもGoogleでも、AI OSを選ぶかどうかを判断する前に、確認しておきたいポイントがあります。どのOSを使うにしても、次の点は必ずチェックしておきたいところです。
プライバシーとセキュリティの確認項目
AI機能の制御
- AI機能を「完全オフ」にできるか
- ローカル処理のみ(クラウド非連携)を選択できるか
- 機能ごとに細かく制御できるか
データの扱い
- 収集されるデータの範囲は?
- 保存場所(ローカル/クラウド)は選べるか
- 暗号化はどのレベルで行われるか
- 誰がアクセス権限を持つのか
サポートとサービス継続性
- OSサポート期間はどのくらいか
- サポート終了後はどうなるのか
- 過去のサービス終了実績(Googleの「墓場」問題、Microsoftの仕様変更頻度など)
実務的な互換性
- 今使っているソフトウェアは動くか
- 周辺機器(プリンタ、スキャナなど)は対応しているか
- 業務で必要なツールやサービスは使えるか
「どこまでAIに任せるか」を決めておく
「AI OSを選ぶかどうか」だけでなく、「どこまでをAIに任せ、どこからを自分でコントロールするか」を事前に決めておくことが重要です。
例えば、メール整理やスケジュール管理はAIに任せてもいいけど、財務データや個人的な文書はAIに触らせたくない——こういった線引きを自分なりに持っておくことは非常に重要。そうすれば、新しいOSの機能を見たときに、「これは使う」「これは使わない」という判断がしやすくなります。
また、Chromebookのサポート終了騒動の教訓も忘れてはいけません。「安いから」「新しいから」だけで飛びつくと、数年後に「サポートが切れて使えなくなった」なんてことになりかねません。長期的な視点でOSを選ぶことが大切なんですね。
まとめ:Aluminium OS時代にどう備えるか
さて、ここまで長々と書いてきましたが、事実ベースで言えるのは、ChromeOSとAndroidは中長期的に統合方向にあり、AndroidベースのAluminium OSがPC向けに動いていて、AIが中枢設計になるということ。そして2026年頃のリリースを目指しているという段階です。
WindowsもGoogle新OSも、「OSレベルでAIを組み込み、プラットフォーム支配力を高めたい」という方向では本質的に同じなんですね。つまり、これは「どちらがマシか」という選択の問題ではなく、「どう付き合うか」という問題です。MicrosoftのWindowsとGoogleのAluminium OS、どちらも目指している未来は似ています。ただ、アプローチの仕方とユーザーへの配慮の度合いが違うだけ——Windowsは性急すぎて反発を招き、Aluminium OSは(今のところ)慎重に進めているように見えるわけです。
AI OSの時代は確実に来るとは思います。個人的には、PCのOSは自分が制御できた方がいいと思っていますが、それもそのうち化石な考えになるんでしょうね。
とはいえ、素直に新しいものに乗れないのも事実。考えられるリスクは盛りだくさんですので。やはり、正しく情報を集めて理解し、その波に飲み込まれるのではなく、上手に乗りこなす——そんな賢い付き合い方をしていきたいものです。

