現在、iPad には 4 種類のシリーズが展開されており、どの iPad が最適か迷うことがあるでしょう。特に選択に迷いがちなのは、エントリーモデルの「iPad」とミドルモデルの「iPad Air」です。iPad Air は、iPad よりも数万円高価なので、この価格差に見合う価値があるかどうかは検討すべきポイントです。
ここでは、エントリーモデルである iPad (A16) と、より高性能な iPad Air(M3) を比較し、それぞれの特徴や用途に応じた選び方を解説します。どちらを選ぶべきか、この記事を参考に自分のニーズに合った iPad を見つけてください。
結論:どんな人にどちらのiPadがおすすめか

iPadを選ぶ際、最も重要なのは自分の使用目的と予算のバランスです。両モデルの主な特徴を踏まえたうえで、それぞれ向いているユーザー像を簡潔にまとめました。基本的に、日常的な利用が中心であればiPad(A16)で十分ですが、より高度な利用やクリエイティブな作業を行いたい場合はiPad Airの方が適しています。
iPad(A16)がおすすめの方
- 手頃な価格で基本的なタブレット機能を求める方
- ウェブブラウジングや動画視聴、SNS がメイン用途の方
- 学生や家族での共有利用を考えている方
- コストパフォーマンスを重視する方

iPad Air(M3)がおすすめの方
- クリエイティブな作業や高負荷アプリを使用する方
- Apple Pencil Pro を活用したい方
- マルチタスクや生産性向上のために iPad を使いたい方
- 将来性を考えて長く使えるモデルを求める方
- Apple Intelligence の機能を活用したい方


性能比較
それでは、それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。
ディスプレイ
特徴 | iPad 11(A16) | iPad Air(M3) |
---|---|---|
サイズ | 11インチ Liquid Retinaディスプレイ | 11インチまたは13インチ Liquid Retinaディスプレイ |
明るさ | 最大500ニット | 最大500ニット(11インチ)または600ニット(13インチ) |
色域 | sRGBカラースペース | P3広色域対応(より鮮やかな色表現) |
ラミネート | 非ラミネートディスプレイ(ガラスと画面の間に隙間あり) | フルラミネートディスプレイ(隙間なし) |
コーティング | 反射防止コーティングなし | 反射防止コーティングあり |
ポイント: iPad Air(M3)は、フルラミネートディスプレイと P3 広色域対応により、色の再現性や視認性が優れています。特にイラスト制作や写真編集など、正確な色表現が求められる作業に向いています。また、反射防止コーティングにより、明るい場所でも画面が見やすいのが特徴です。
一方、iPad(A16)は、基本的な使用には十分なディスプレイ性能を備えています。ただし、ガラスと画面の間に隙間があるため、Apple Pencil で描くときに若干の違和感を感じる可能性があります。ただし、メモを取る程度であれば問題ないでしょう。
パフォーマンスとプロセッサ
特徴 | iPad 11(A16) | iPad Air(M3) |
---|---|---|
プロセッサ | A16 Bionicチップ(5コアCPU、4コアGPU) | M3チップ(8コアCPU、9コアGPU) |
Neural Engine | 16コア(17TOPS) | 16コア(18TOPS) |
メモリ | 6GB | 8GB |
メモリ帯域幅 | 51.2GB/s | 100GB/s |
Apple Intelligence | 非対応 | 対応 |
ポイント: M3 チップを搭載した iPad Air(M3)は、A16 Bionic チップを搭載した iPad(A16)よりも大幅に高い処理能力を持っています。特に、ハードウェアアクセラレーテッドレイトレーシングや ProRes エンコード/デコードなど、専門的な作業に適しています。
重要なポイントとして、iPad Air(M3)は Apple Intelligence に対応していますが、iPad(A16)は対応していません。これは将来的に大きな差になる可能性がありますね。Apple Intelligence の文章作成支援や Genmoji などの AI 機能を使いたい方は、iPad Air を選ぶべきでしょう。
A16 チップも十分強力ですが、M3 チップは Mac にも搭載されているチップで、より本格的なクリエイティブ作業や高負荷なアプリケーションを快適に動かせます。日常的な使用では違いを感じにくいかもしれませんが、複雑な作業をする機会が多い方には、この性能差は重要なポイントになるでしょう。
ストレージと価格
特徴 | iPad 11(A16) | iPad Air(M3) |
---|---|---|
ストレージ | 128GB、256GB、512GB | 128GB、256GB、512GB、1TB |
価格 | 5万8,800円(128GBモデル)~ | 9万8,800円(11インチ128GBモデル)~、12万8,800円(13インチ128GBモデル)~ |
ポイント: iPad Air(M3)は最大 1TB のストレージオプションがあり、iPad(A16)は最大 512GB までです。価格差は 5万8,800円からありますが、ストレージを増やすとさらに価格差が広がります。
実際のところ、一般的な使用であれば 256GB もあれば十分と言えるでしょう。現在は写真や動画、ドキュメントなどは iCloud に保存するのが一般的になっているため、端末内の大容量ストレージは必ずしも必要ではないケースが多いです。Netflix などの動画ストリーミングサービスや Apple Music のような音楽ストリーミングサービスを利用するなら、さらにストレージの必要性は低くなります。
512GB 以上の大容量ストレージが必要になるのは、主に以下のようなケースです。
- 大量の高解像度写真や 4K 動画を端末内に保存したい場合
- ProCreate などのアプリで多数のキャンバスを使用する場合
- 動画編集を頻繁に行い、素材を端末内に保存する場合
- 大型ゲームを多数インストールする場合
- オフライン環境で作業することが多い場合
正直、動画編集を主な用途としない限り、内部ストレージを増やす必要性は限りなく薄くなっていると思っています。もし、大容量ストレージが必要になる場合は、外付けの SSD を導入した方がコストは抑えられるでしょう。
iPad では、汎用的な外部 SSD が利用可能です。やUSBメモリを使えば、必要に応じてファイルの出し入れができます。例えば、SanDiskやSamsungなどから手頃な価格のポータブルSSDが販売されており、ファイルアプリから直接アクセスできます。こうすることで、本体は容量の少ないモデルを選び、価格を抑えることが可能です。


ただし、注意点として、iPad(A16)は USB 2.0 相当の転送速度(最大 480Mbps)しか持っていません。これは大きなデメリットで、大容量ファイル(特に 4K 動画など)の転送が非常に遅くなります。例えば、100GB の動画ファイルの転送には数時間かかる可能性があります。一方で iPad Air(M3)は、USB 3.1 Gen 2 相当の転送速度(最大 10Gbps)
外部ストレージを頻繁に使用する予定がある場合は、 iPad Air(M3)を選ぶのが圧倒的におすすめです。
接続性とアクセサリ対応
特徴 | iPad 11(第11世代) | iPad Air(M3) |
---|---|---|
Wi-Fi | Wi-Fi 6対応 | Wi-Fi 6E対応(より高速で安定した接続) |
セルラー | 5G対応モデルあり | 5G対応モデルあり |
Apple Pencil | Apple Pencil(第1世代、USB-Cアダプタ経由)対応 | Apple Pencil Pro対応(ホバリング機能、ハプティックフィードバック) |
キーボード | Magic Keyboard Folio対応 | Magic Keyboard対応(トラックパッドとファンクションキー列あり) |
ポイント: ここでは特に Apple Pencil とキーボードの違いに注目する必要があります。
Apple Pencilについて: iPad(A16)は第 1 世代 Apple Pencil と Apple Pencil(USB-C)に対応しています。つまり、筆圧検知を使いたい場合は、第 1 世代 Apple Pencil を使わねばならず、しかも USB-C 変換アダプタを介して充電する必要があります。これは利便性の面で大きなデメリットです。充電時にアダプタを紛失するリスクもあり、使い勝手が良いとは言えません。
一方、iPad Air(M3)は最新の Apple Pencil Pro に対応しており、ホバリング機能やハプティックフィードバック、バレルロールといった高度な機能を利用できます。これらは、イラスト制作やデザイン作業において大きなアドバンテージとなります。筆圧検知を活用した描画や書き込みを頻繁に行う方には、この点だけでも iPad Air を選ぶ価値があるでしょう。

なお、Apple Pencil については、👇の記事で詳細にまとめているので、併せてご覧ください。
キーボードについて: キーボードの違いも重要なポイントです。iPad(A16)は、Magic Keyboard Folioに対応していますが、こちらにはトラックパッドは搭載されていません。一方、iPad Air はトラックパッド搭載の Magic Keyboard に対応しています。
純正品でトラックパッドがメリットは、iPad を直感的に使えるトラックパッドジェスチャーが利用できる点です。iPad に最適化されたジェスチャーなので、より快適に iPad が利用可能です。
iPad(A16)でも同等のトラックパッド体験を求めるなら、Logitech ComboTouch などのサードパーティ製キーボードを選択肢に入れることもできます。特に Logitech ComboTouch は、Apple 純正に近い使用感を得られるとして評価が高いです。

ただし、サードパーティ製品は完全な互換性やソフトウェア統合の面で、純正品に劣る場合があることも覚えておきましょう。特に安価なキーボードのトラックパッドは操作性が著しく低いことが多いので注意が必要です。
接続性について: iPad Air(M3)は最新の Wi-Fi 6E に対応しており、iPad(A16)の Wi-Fi 6 と比較してより高速で安定したワイヤレス接続が可能です。Wi-Fi 6E の最大の特徴は、新たに 6GHz 帯域を利用できる点です。これにより、既存の 2.4GHz や 5GHz 帯域が混雑している環境でも、安定した高速通信が実現します。
実際の使用感では、大容量ファイルのダウンロードが格段に速くなり、4K/8K 動画のストリーミングもより滑らかになります。また、複数のデバイスが同時に接続されている家庭環境でも、通信の遅延や途切れが少なくなるメリットがあります。
もちろん、これらのメリットを享受するには、Wi-Fi 6E に対応したルーターが必要です。現時点ではまだ普及途上ですが、今後数年で Wi-Fi 6E 対応機器は標準になっていくと予想されるため、将来性を考えると iPad Air の方が優位ですね。
日常的なウェブブラウジングや動画視聴程度であれば、iPad(A16)の Wi-Fi 6 でも十分快適に使用できますが、大容量データを頻繁に扱う方やオンラインゲームを楽しむ方には、Wi-Fi 6E の恩恵を受けられる iPad Air の方がおすすめです。
カメラ
特徴 | iPad 11(第11世代) | iPad Air(M3) |
---|---|---|
リアカメラ | 12MP、f/1.8、4K動画撮影対応 | 12MP、f/1.8、4K動画撮影対応 |
フロントカメラ | 12MP、f/2.4 | 12MP、f/2.0(より明るいレンズ) |
スピーカー | ステレオスピーカー | ステレオスピーカー |
ポイント: カメラ性能はほぼ同等ですが、iPad Air(M3)のフロントカメラはより明るいレンズを採用しており、ビデオ通話やセルフィーでの画質が向上しています。オンラインミーティングやビデオ通話をよく使う方は、この差が重要かもしれません。
どちらが自分に合っているか?
ここまで長々と書いてきましたが、まとめると次のような感じになります。
iPad 11(A16)が向いている人
エントリーレベルの iPad(A16)は、iPad を主に軽い日常的な作業に使う方に最適です。Safari でのブラウジング、YouTube や Netflix などの視聴、SNS の利用、そしてちょっとした宿題や軽いゲームなど、普段の使用範囲が幅広い方であれば、A16 チップ搭載の iPad(A16)は十分なパワーと適切な機能を備えています。
Apple Pencil にも対応しているので、気軽にメモを取ったり絵を描いたりできます。ただし、筆圧検知が必要な場合は、第1世代 Apple Pencil を使う必要があり、充電とペアリングには USB-C 変換アダプタが必要なため、頻繁にApple Pencil を使用する予定がある場合は注意が必要です。
ディスプレイはラミネート加工されていないため、ガラスと画面の間にわずかな隙間がありますが、精密に絵を描いたり文字を書いたりしない限り、ほとんどのユーザーは気にならないでしょう。
5万8,800円という価格は、特に家族での共有使用、子供用、あるいは古いiPadからの買い替えを考えている方にとって魅力的です。高度なマルチタスク機能やプロ仕様のアプリを必要としないなら、iPad Air に 4万円も余分に支払う必要はないかもしれません。
iPad Air(M3)が向いている人
iPad Air(M3)は、より高いパフォーマンスと汎用性を求めるユーザー向けです。M3 チップは明らかに高速で、A16 では対応していないハードウェアアクセラレーションによるレイトレーシングや ProRes ビデオのエンコード/デコードなどの機能も備えています。
特筆すべきは、iPad Air は Apple Intelligence に対応している点です。これにより、作文ツールや Genmoji といった最新のAI機能、そして Apple が将来的に追加する AI 機能をすべて利用できます。AI 機能を活用したい方にとって、これは大きなアドバンテージと言えるでしょう。
また、Apple Pencil Pro への対応も重要なポイントです。ケーブルレスの磁気接続・充電が可能であり、ホバリング機能や触覚フィードバックなど、より自然で高度な描画体験を提供します。イラストレーターやデザイナー、手書きメモをよく取る方にとって、この点は非常に重要です。
ディスプレイはフルラミネート加工されているため、Apple Pencil と画面の隙間がなく、より自然な書き心地です。また、P3広色域対応により、写真編集や動画編集においても正確な色再現が可能です。
13 インチモデルが選べるのもメリット。マルチタスク、アプリの並列表示、コンテンツ作成など、広い画面ならより快適に使えます。特に、動画編集、ハイエンドゲーム、大容量ドキュメントの編集、Logic Proといったクリエイティブアプリの利用、コーディングなどを行うなら、13 インチモデルの方が快適です。
iPad を生産性向上のために使う予定であったり、ノートパソコンのような感覚で使えるものを探しているなら、iPad Air(M3)の方がいいでしょう。価格は 9万8,800円(11インチ)または 12万8,800円(13インチ)からとなりますが、より高度な機能を活用するユーザーにとっては納得のいく製品だと思います。
まとめ:用途に合わせて最適な iPad を選ぼう

iPad 11(A16)は、コストパフォーマンスに優れたエントリーモデルとして、日常的な使用に最適です。ウェブブラウジング、動画視聴、SNS、メール、簡単なゲームなどを楽しみたい方にぴったりです。
一方、iPad Air(M3)は、より高度な作業やクリエイティブな用途に対応できる性能を備えています。Apple Pencil Pro に対応し、Apple Intelligence を利用できるため、クリエイティブ作業や生産性向上を重視する方、より大きな画面で作業したい方、そして長い間活用したい人におすすめです。
使い方や予算に合わせて、最適な iPad を選んでください。どちらを選んでも、高品質なApple製品の魅力を存分に楽しめることは間違いありません。
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