Nintendo Switch 2が発売されて数ヶ月が経ちましたが、ユーザーの間で大きな議論を呼んでいるのが「ゲームキーカード」の存在です。パッケージ版を買ったはずなのに、結局ゲームデータは本体にダウンロード…そんな状況に戸惑っている人も多いですね。それに、「これってほとんどダウンロード版と変わらないじゃん」という声は少なくありません。
そこで、このキーカードが抱える問題点と、最近噂されている「低容量ゲームカード構想」について、パッケージ派の視点から整理していきます。
Switch2の「キーカード」とは何か
まず基本的なところから確認しておきましょう。Switch2のゲームキーカードは、見た目は従来のゲームカードとそっくりですが、中身は大きく異なります。
カードに保存されているのは、ゲームを起動するための「キー(鍵)」だけ。ゲームデータ本体は含まれていません。初回プレイ時にインターネット接続してゲームデータをダウンロードし、それ以降はキーカードを本体に挿入することでプレイできるという仕組みです。
カード表面には鍵マークがプリントされているので、通常のゲームカードとは見分けがつくようになっています。

また、パッケージの表面にも記載があります。

キーカードの何が問題なのか
ユーザー体験の問題
キーカードの最大の問題は、従来のパッケージ版が持っていた利点の多く失われているという点です。
具体的にどんな問題があるのか、整理してみましょう。
- 本体容量を消費する
ゲームデータは結局本体ストレージやmicroSD Expressカードに保存される。Switch2の本体ストレージは256GB(実効容量は約250GB)あるものの、最近のゲームは1本で20GB〜50GB以上のものも珍しくありません。マリオカートワールドだけで約22GBも消費してしまいます - 初回はインターネット必須
初回プレイ時にはネット接続してダウンロードが必要。オフライン環境でゲームを楽しみたい方や、子ども用に買い与える場合など、すぐに遊べないのは困りますよね
パッケージ版を買う理由の一つは「本体容量を節約できる」ことだったはずなのに、キーカードではその恩恵が得られないわけです。
保存性・将来性の不安
パッケージ版の魅力として「いつでも遊べる安心感」がありました。しかしキーカードの場合、ゲームデータはサーバーからダウンロードする必要があります。
将来的にサーバーが閉鎖されたらどうなるのか
この不安は拭えません。10年後、20年後にSwitch2のオンラインサービスが終了したとき、キーカードでのゲームプレイができなくなる可能性があるのです。
中古流通についても疑問が残ります。キーカード自体はアカウントに紐付いていないため再販は可能とされていますが、そもそもの価値が「ダウンロード権」でしかないことに変わりはありません。
microSD Expressカードのコスト問題
容量不足を解消するには、microSD Expressカードの追加購入が現実的な選択肢になってきます。しかし、ここにも大きな問題が。
| 容量 | 価格目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 256GB | 7,000円〜1万円前後 | 任天堂公式でも販売、セール時は安くなることも |
| 1TB | 2万〜3万円前後 | 時期やセールで変動、本体価格に近い出費になることも |
1TBモデルは2万〜3万円前後と高価で、本体価格に近い出費になるケースも少なくありません。時期やセールによって価格は変動しますが、それでも大きな追加投資が必要になってしまうのは確かですよね。
さらに問題なのは、現状、市場に出回るmicroSD Expressカードの多くが「Switch2対応」として販売されており、他機器での採用例はまだ少ないという点です。競合製品が限られるぶん価格は高止まりしやすく、PS Vita専用メモリーカードが高止まりし続けたことを思い出す人はいるかもしれません。
なぜ「キーカード」ができたのか
では、なぜこんな不便なシステムができたのでしょう。理由はシンプルで、コストなんです。
Switch2のゲームカードは最大64GBまで対応していますが、NANDフラッシュを使用したこのゲームカードは製造コストが高額。ある開発者のリーク情報では「64GBカードを使うと数千円規模でコストが増える」とされており、日本円換算で約2,000〜3,000円程度の負担増になるとの見方もあります。
ゲームソフトの価格を考えると、この数千円という追加コストは無視できない金額ですよね。
さらに悪いことに、ここ数年NANDフラッシュの価格が高騰しています。一部の試算では、Switch2の本体コストもメモリ価格高騰の影響で数十%規模で増加したとされています。ゲームカードも例外ではありません。
結果として、コストを抑えつつ「パッケージ版」という形を維持するために、多くのメーカーがキーカードを選択せざるを得なかったというわけ。ビジネス的には理解できる判断ですが、そのしわ寄せがユーザー体験と保存性に出ているのが現状なんですよね。
低容量ゲームカード登場の噂
そんな中、海外のリーカーから興味深い情報が出てきています。16GBや32GBといった低容量ゲームカードを任天堂がパブリッシャー向けに用意し始めているというリーク情報が、複数の情報源から報告されているんです。
Physical ParadiseのJordan氏をはじめとする複数のリーカーが言及しており、ININ Gamesによる「うっかり発言→撤回」という経緯もあって、信憑性は比較的高いと見られています。ただし、具体的な容量ラインナップや投入時期については公式には明かされておらず、2026年以降との見方が取り沙汰されているものの、あくまで「リーク情報」という位置づけです。
低容量ゲームカードのメリット
もしこれが実現すれば、何が変わるのか?
まず、64GBほどの容量を必要としない中小規模のタイトルにとって、より安価に「データ入りゲームカード」を提供できる可能性が出てきます。インディーゲームやミドルクラスのタイトルであれば、16GB〜32GBで収まるものも多いはず。
つまり、こういうことです。
- 現状:予算の都合で「キーカード」しか選べない
- 今後:低容量カードで「ちゃんとしたパッケージ版」を出せる
これはパッケージ派にとっては朗報ですよね。ゲームカードを挿せばすぐ遊べて、将来的なサーバー閉鎖の心配も少ない。パッケージ版の本来の魅力が戻ってくるかもしれません。
現実的な課題
ただし、手放しで喜べない事情もあるんです。
NANDフラッシュの価格高騰問題は依然として深刻。容量を半分にしたからといって、価格が半額になるわけではありません。製造工程や基板のコストなど、容量以外の要素も多いですからね。64GBカードから大幅なコストダウンを実現するのは難しいというのが、業界関係者の見方なんです。
また、Switch2のゲームカードは読み取り速度の面でも課題を抱えています。多くのサードパーティタイトルはPCやPS5向けに開発されたゲームの移植版ですから、わざわざゲームカードの速度に最適化するケースは少ないでしょう。
結局のところ、次のような状況が続く可能性が高そうです。
- 小〜中規模タイトル → 低容量カードで改善の可能性あり
- 大容量タイトル → 依然としてキーカード頼み
「キーカード完全終了」とは言えない理由
仮に16GB/32GBのゲームカードが登場したとしても、キーカードがなくなるわけではありません。
現在のSwitch2向け物理ゲームカードは最大64GBまでとされているため、65GBを超えるタイトルは1枚のカードでは収まりません。こうした大容量タイトルは、どうしてもキーカードに頼らざるを得ないでしょう。
また、最新のAAAタイトルはSSD前提で設計されているものも多く、ゲームカードの読み取り速度では快適なプレイ体験を提供できないケースもあります。技術的な制約から、キーカードを選択せざるを得ない場面は今後も残るはずです。
つまり、低容量ゲームカードとキーカードは「共存」していくというのが現実的なシナリオと言えそうです。
パッケージ派にとっての未来
では、パッケージにこだわるユーザーは今後どう向き合えばいいのでしょう。
低容量ゲームカードがもたらす希望
もし16GB/32GBゲームカードが本当に投入されるなら、インディーゲームや中堅タイトルでは「ちゃんとしたパッケージ版」が増える可能性があります。これは素直に歓迎すべき動き。
オフラインでもすぐ遊べて、将来的なサーバー閉鎖の心配も少ない。パッケージ版の本来の魅力が戻ってくるかもしれません。
依然として残る不安
ただし、状況が劇的に改善するかと言えば、そうとも限らないんです。
大作タイトルやAAAクラスのゲームは、依然としてキーカードやダウンロード版が主流になるでしょう。また、メーカーによって対応がバラバラになる可能性も高く、「欧米ではキーカード、日本ではフルカード」といった地域差が出ることも考えられます。
実際に購入する際には、そのタイトルがキーカードなのか通常のゲームカードなのかを事前に確認する習慣が必要になってきそうです。パッケージを手に取る前に、公式サイトやパッケージ表記をチェックするクセをつけておくのがいいでしょう。
今後のチェックポイント
Switch2のパッケージ版をめぐる状況は、まだ流動的です。今後注目すべきポイントを整理しておきます。
- 任天堂の公式発表
リークされている低容量ゲームカードが本当に投入されるのか、そしてその価格設定はどうなるのか。正式なアナウンスを待ちたいところです。 - サードパーティの動向
実際にメーカーがキーカードから通常カードへ切り替える動きを見せるのかどうか。具体的なタイトル発表が重要な判断材料になります。 - NAND価格の推移
フラッシュメモリの価格動向次第では、状況が好転する可能性も。ただし、現状Switch2向けが中心のmicroSD Expressカードの値下がりは期待薄かもしれません。
まとめ
Switch2のキーカード問題は、コスト削減という経営判断がユーザー体験の犠牲の上に成り立っているという、なかなか厳しい現実を示しています。
低容量ゲームカードの登場は、インディーや中堅タイトルにとっての「救世主」になる可能性を秘めていますが、万能薬ではありません。NANDフラッシュの価格高騰という外部要因もあって、状況は思ったより複雑ですね。
パッケージ派としては、どのタイトルがキーカードでどれが通常カードなのかを見極めながら購入するというのが、当面の現実的な対応になりそう。そして、メーカーの動向や任天堂の対応をチェックしていくのが大切でしょう。

