Windows11のエクスプローラーを使っていて、ダークモードなのに一瞬だけ真っ白な画面が表示される「白フラッシュ問題」。2025年12月の更新プログラムKB5070311で問題が発生し、その後KB5072033で修正されたはずでしたよね。
ところが、「直った」と思っていたのに、まだ白いフラッシュが出るという報告が続いています。実は、今回の修正で直ったのは「ホーム画面」を開いたときの白フラッシュだけで、エクスプローラーの既定の表示を「PC」にしている場合の白画面は、そのまま残されていたのです。
「またか…」と思われた方も多いかもしれません。今回は、この”直りきっていない白フラッシュ問題”について、何が起きているのか、なぜ起きるのか、そして当面の対処法までを整理して解説します。
何が起きているのか:症状と発生条件
症状の詳細
問題の症状はシンプルです。ダークモードでWindows11を使っているとき、エクスプローラーを開いた瞬間や新しいタブを作成したときに、一瞬だけ画面全体が真っ白になるというもの。まるでフラッシュを焚かれたような眩しさで、特に暗い部屋で作業しているときには目に痛いほどです。

この白フラッシュは一瞬で消えて、すぐに正常なダークモード表示に戻ります。機能的には問題ないのですが、頻繁にエクスプローラーを使う作業をしていると、何度も眩しい思いをすることになるんですよね。
発生条件の整理
この白フラッシュが誰にでも起きるわけではないという点。発生条件は次の通りです。
発生する条件
- Windows11でダークモードを使用している
- エクスプローラーの「既定のフォルダ」設定を「PC」にしている
- エクスプローラーを初回起動するとき、または新規タブを開くとき
発生しない条件
- 既定のフォルダ設定が「ホーム」になっている場合
つまり、KB5072033で修正されたのは「ホーム」を開いたときの白フラッシュで、「PC」を開いたときの白フラッシュは手付かずのまま残されているということなのです。
どのバージョンで起きるのか
さらに厄介なことに、この問題はWindows11 23H2、24H2、さらには最新の25H2でも発生が報告されています。更新を停止している環境でも起きることから、かなり古くから存在する「古参バグ」と言えるでしょう。
なぜこうなるのか:技術的な原因の仮説
Microsoftは公式に内部実装の詳細を説明していませんが、Microsoft Q&Aやフォーラムでの議論、そして類似する問題の事例から、技術的な原因の仮説を立てることができます。
ウィンドウ描画のタイミング問題
エクスプローラーのウィンドウが開かれるとき、内部では複雑な処理が走っています。まずウィンドウのサーフェス(描画領域)が初期化されますが、このとき一度「白い背景」で初期化されるようです。その後、ダークテーマの設定を読み込んで黒い背景に塗りつぶし、さらにXAML(WindowsのUIフレームワーク)側の描画処理が実行されます。
問題は、この一連の処理のタイミングです。本来であれば、ユーザーに見せる前にすべての描画が完了しているべきなのですが、「白い背景」の状態がユーザーの目に見えてしまうタイミングで画面が表示されてしまうのです。これは、いわゆる「レースコンディション」と呼ばれる、処理の順序や速度の問題によって起きる典型的なバグの一種と考えられます。
「PC」ビューと「ホーム」ビューの違い
では、なぜ「PC」ビューだけで問題が残っているのでしょうか。
「PC」ビューと「ホーム」ビューでは、内部的に異なる処理パス(コードの実行経路)が使われていると考えられます。「PC」ビューでは、ドライブの列挙やレガシーな(古い)シェルビューの処理が絡むため、より複雑な処理が必要になります。この処理の重さが、ダークテーマの描画よりも先に白い背景がユーザーに見えてしまう原因になっているようです。
一方、「ホーム」ビューは比較的新しい設計で、モダンなUIフレームワークで実装されているため、KB5072033の修正で対応しやすかったと推測できます。しかし、「PC」ビュー側の古い描画パスには手が入らなかったため、そこだけが「置いてきぼり」になってしまったわけですね。
なぜすぐに直らないのか
このような描画タイミングの問題は、一見シンプルに見えても、実際には複雑な修正が必要になることがあります。特にエクスプローラーのような基幹システムでは、修正によって別の問題が発生するリスクもあるため、慎重な対応が求められます。
「PC」ビューの描画パスは長年使われてきたコードであり、多くの処理が絡み合っているため、安易に変更すると予期しない不具合を引き起こす可能性があります。Microsoftとしても、優先度の高い機能的なバグではなく、視覚的な問題として後回しにされている可能性が高いでしょう。
公式情報・既知の関連バグとの位置づけ
KB5072033での修正内容
2025年12月に公開されたKB5072033では、「ダークモードでのエクスプローラー白フラッシュ」が既知の問題として認められ、修正が提供されました。Microsoft公式のリリースノートには、「File Explorerがダークモードで白くフラッシュする問題を修正」と明記されています。
ただし、この修正内容を詳しく見ると、「ホーム画面」周りの新規バグとして扱われていることがわかります。KB5070311で発生した、比較的新しい問題への対応だったということですね。
「PC」ビューの白フラッシュは?
問題は、「PCを既定にしたときだけ出る白画面」については、サポート文書やリリースノートに個別の既知の問題として明記されていないという点です。
技術的には同じ系統の問題(描画タイミングの問題)と考えられますが、公式には別扱いになっているか、あるいは長年放置されている小規模なグラフィカルバグとして認識されている可能性があります。
実際、Windows11の複数バージョンで同じ症状が報告されているにもかかわらず、Microsoftの公式サポートページには目立った記載がありません。ユーザーコミュニティやフォーラムでは活発に議論されているものの、Microsoft側からの正式なアナウンスは限定的な状況です。
とりあえずの回避策
現時点でこの現象を回避するには、エクスプローラーの既定のフォルダ設定を「ホーム」に戻すことです。設定方法は次の通りです。
エクスプローラーを開いたら、「…」→「オプション」をクリックします。

「全般」タブの「エクスプローラーで開く」を「ホーム」に変更し、「OK」をクリックします。

この設定変更により、今回の記事で取り上げた「PC起因の白フラッシュ」は回避できます。ただし、すぐにドライブ一覧を見たい場合には、ワンクリック余分に必要になるという使い勝手の変化はありますね。
まとめ
Windows11エクスプローラーの白フラッシュ問題は、KB5072033で一部修正されたものの、「PC」を既定フォルダにしている場合には依然として発生し続けています。これは描画タイミングの問題に起因する可能性が高く、古いコードパスが残されているために修正が後回しになっていると考えられます。
当面の対処としては、既定フォルダを「ホーム」に変更することで問題を回避できます。完全な修正を期待するなら、今後のWindows更新やMicrosoftの公式アナウンスを注視していくことが大切ですね。
視覚的な問題とはいえ、頻繁に目にすると気になるものです。早期の完全修正を期待したいところです。


