「最近スマホの電波が不安定で急に圏外になる」「繋がりにくいことがある」そんな経験をした人も少なくないのではないでしょうか？
最近、X（旧Twitter）上で話題となっているのが、そんな不可解な現象の原因とも言われる「偽基地局」の存在です。投稿によると、日本国内、特に東京や大阪の都市部で、偽基地局を搭載した車両の目撃情報が相次いでいます。
そこで、「そもそも偽基地局って何？」「何が怖いの？」「どうすれば防げる？」という疑問に対し、できるだけわかりやすくまとめました。
偽基地局とは？
偽基地局とは、携帯電話やスマートフォンの通信を傍受したり、位置情報を追跡したりするために使用される装置です。一般的な携帯電話は、周囲にある最も強い電波の基地局に自動で接続する仕組みになっていますが、この仕組みを悪用して「偽の基地局」を設置し、ユーザーの通信を盗聴・改ざん・誘導することが可能になるのです。
偽基地局の仕組み
偽基地局は、正規の基地局になりすまして、強力な電波を発信し、近隣のスマホが優先的に接続するように仕向けます（ユーザーのスマホと通信事業者のネットワークの間に割り込むイメージですね）。その結果、スマホは偽基地局を本物と誤認して接続してしまいます。そして、次のようなことが発生します。
- 中間者攻撃（MITM）
接続したスマホの通信内容を傍受・改ざんされるリスクが生じます。 - 電波の優先利用
偽基地局はセキュリティの弱い2Gネットワークへの接続を強制する手法が使われます。これは、3Gや4G、5Gの通信を妨害（ジャミング）して意図的に2Gにダウングレードさせることがあります。 - IMSI/IMEIの取得
偽基地局は、デバイス固有の識別子であるIMSI（国際モバイル加入者識別番号）やIMEI（国際モバイル機器識別番号）を取得できます。これにより、ユーザーの個別識別や追跡が行えます。
主な用途
なぜ、偽基地局などを使ってこのようなことをするのか？それは主に次のような目的があります。
- 詐欺：偽の SMS を送信し、フィッシングリンクをクリックさせて個人情報（例：クレジットカード情報）を盗む
- 盗聴：通話や SMS などの通信内容を傍受
- 監視：政府機関や犯罪組織による行動監視や位置情報の追跡
- ジャミング：正規の通信を妨害し、意図的に圏外状態にする
平和な世の中だと思っている人も多いかもしれませんが、世界情勢はかなり緊迫しているので、こういう動きはかなり洒落になりません。もし災害や有事になったときに、モバイル回線が妨害されたらどうなってしまうのでしょう？正直かなり危険な状態だと思っています。
最近の事例
X などの SNS 上では、最近では東京・銀座や大阪・梅田などで偽基地局を搭載した車両が目撃されており、主に中国人観光客をターゲットとしたフィッシングSMSの送信に利用されているという報告が増えています。
これらの車両は、正規の電波をジャミングし、GSMやW-CDMAを用いて詐欺行為を展開している模様です。
「中国人が狙われているのなら、自分には関係ない」と考えるのは危険です。技術的には日本人を狙うのも容易であり、対岸の火事では済まされません（でも、報道はあまりされていないんですよね。不思議だ）。そのため、かなり強めに危機感を持った方がいいと感じています。
偽基地局の目的と被害の実態
偽基地局が使われる目的は、大きく分けて「特定・追跡」と「詐欺・情報窃盗」の 2 つに集約されます。これらの行為は、単に技術的なイタズラではなく、明確な意図をもって行われている点に注意が必要です。
デバイスの特定・追跡
この目的で偽基地局を使用する攻撃者は、特定のユーザーを識別し、監視対象にする意図を持っています。たとえば、銀座の高級ブランド店周辺でスマホを利用しているユーザーの IMSI/IMEI を収集することで、「裕福な層」や「外国人観光客」など、詐欺に適したターゲットを絞り込むことが可能です。さらに、政府や犯罪組織が個人の行動パターンを把握しようとする監視行為にもつながりかねません。
現代のスマートフォンはセキュリティが強化されているものの、2Gネットワークへの強制接続や初回接続時など、わずかな隙を突かれると、個人識別情報が漏洩するリスクがあります。
具体的な被害内容は次のとおりです。
- IMSI/IMEI の漏洩によりユーザーが特定される
- 位置情報のリアルタイム追跡
- 後続の詐欺行為のためのターゲティング準備
- 行動監視によるプライバシー侵害
詐欺・情報窃盗
こちらの目的では、金銭や個人情報を盗み出すことが主な狙いです。偽基地局を介してフィッシング SMS を送信し、ユーザーを偽の銀行サイトなどに誘導する手口は巧妙かつ悪質です。また、通話やデータ通信を傍受することで、個人の機密情報や認証情報を不正に入手することも可能です。
特に銀座や渋谷など人が多く集まるエリアでは、不特定多数のスマホに偽電波を送って一斉に詐欺 SMS をばらまく手法も確認されており、被害の範囲は広範にわたります。
具体的な被害内容は次のとおりです。
- フィッシング SMS によるクレジットカードや口座情報の詐取
- 通話・メール・Web 閲覧内容の傍受
- 偽サイト誘導での情報入力
- 偽アプリのインストールによるマルウェア感染
銀座・渋谷などでの「繋がりにくい」事例と偽基地局の関係
銀座や渋谷など、大都市圏でスマホが繋がりにくくなる症状が報告されている件について、偽基地局が原因である可能性は十分に考えられます。しかし、断定するには注意が必要です。以下に、偽基地局が原因と考えられる根拠と、他の可能性も含めた考察をまとめます。
偽基地局が原因と考えられる根拠
X での報告との一致
最近の X の投稿では、銀座や渋谷を中心に「ドコモの電波が圏外になる」「アンテナ表示が E（Edge、2G）に切り替わる」といった事象が報告されています。これらの症状は、偽基地局が正規の電波をジャミング（妨害）し、デバイスを 2G 接続に強制的に切り替えさせる典型的な挙動と一致します。
偽基地局の技術的特性
偽基地局は、正規の基地局よりも強い電波を発信してデバイスを誘導し、接続を乗っ取ります。この際、正規の4G/5G 基地局の電波を妨害するため、特定のエリアで突然「圏外」や「電波が不安定」になる症状が発生します。特に銀座のような人混みの多い都市部は、偽基地局を設置してフィッシング SMS を送信する犯罪者にとってターゲットになりやすい環境です。
タイミングとエリアの符合
X の情報によると、2025年1月頃から銀座や渋谷で偽基地局の存在が観測されており、最近の「繋がりにくさ」の報告と時期・場所が重なります。このことから、偽基地局が一因である可能性は高いです。
他の可能性
偽基地局以外にも、スマホが繋がりにくくなる原因は複数考えられます。以下の要因も排除できません。
- 通信輻輳（ふくそう）
大都市は人が多く、特に休日やイベント時には大量のデバイスが同時に通信を試みます。これにより、基地局が過負荷（パケ詰まり）になり、繋がりにくくなることがあります。 - 基地局のメンテナンスや障害
キャリアが基地局のメンテナンスを行ったり、予期せぬ通信障害が発生したりすると、特定のエリアで一時的に電波が不安定になることがあります。キャリアの公式サイトで障害情報が公開されていないか確認するとよいでしょう。 - 端末側の問題
スマホの設定（例：機内モードが誤ってオン、モバイルデータオフ）や、SIM カードの接触不良、OS の不具合も繋がりにくさの原因となり得ます。自分でしか発生していないなら、端末固有の問題の可能性もあります。 - 環境要因
高層ビル密集地では、電波がビルに遮られたり反射したりして不安定になることがあります。また、地下街や建物内では電波が届きにくい場合があります。
偽基地局が原因かどうかの判断ポイント
次のような状況の場合、偽基地局の可能性が高いと言えます。
- 2Gへの切り替え：普段 4G/5G で接続しているのに、突然「E」や「2G」と表示される
- 不審なSMSの受信：クレジットカード停止や偽のリンクを含む SMS が届く
- 特定のエリア限定：銀座や渋谷などの大都市や、特定の場所で繰り返し発生し、他のエリアでは問題がない
- 複数キャリアで発生：偽基地局は複数キャリアの周波数をジャミングする可能性があるため、ドコモ以外のユーザーでも同様の症状が報告されている
他の原因の可能性が高い場合
逆に、次のような場合は、偽基地局以外の原因である可能性が高いです。
- 特定のキャリア（例：ドコモのみ）でしか発生しない
- 不審なSMSがなく、単に「圏外」になるだけ
- 時間帯やセール期間などのイベントと連動して発生する
偽基地局への対策
今回の問題は、ユーザー側でできることはかなり限られます。特に iPhone は、最も強い信号を自動的に掴む設計であり、偽基地局が正規の基地局より強い信号を発している場合、ユーザーに通知することなく自動的に接続してしまう可能性があります。Android の場合は、いくつかの設定を変更することによって対策が可能です。
2G を掴まないように設定する
まず、最初の目的「デバイスの特定・追跡」への対策ですが、最も有効なのは、2G を掴まないようにすることです。これについて、Android の場合は 2G を拒否するように設定できます。ここでは、Pixel 6a（Android 15）の画面で説明しますが、他の機種でもほとんど同じだと思います。
設定アプリを開き、画面上部の検索ボックスをタップし、「2G」と入力します。結果に表示された「2G を許可する」をタップし、設定項目をオフにします。
iPhone には、Android のように「2Gを許可する／しない」という明示的な設定項目は存在しません。
偽基地局をブロックする機能を使う
中国メーカーの一部 Android スマートフォン（例：Xiaomi、Huawei、OPPO など）には、「擬似基地局（偽基地局）をブロック」や「偽基地局検出」といったセキュリティ機能が搭載されています。この機能を使うと、偽の基地局（IMSIキャッチャーなど）による詐欺SMSや通信傍受のリスクを低減できます。
この機能を使うには、設定アプリを開き、前述の方法で「擬似」「偽基地局」などの名前で設定項目を検索します。「擬似基地局をブロック」「偽基地局検出」などの名前がヒットしたら、この設定項目を開き、偽基地局が検出された場合、通知や警告が表示される設定になっているか確認しましょう。
- お使いの端末によって、設定項目の名称が異なります。「擬似基地局をブロック」「偽基地局検出」「SMS詐欺防止」「危険なSMSをブロック」「不審な基地局からの通信を警告」などの表記があります。
- 検索してもヒットしない場合は、この機能が搭載されていない可能性が高いです。
- この機能を使っても、すべての偽基地局を 100% 検出できるわけではない点は注意が必要です。
Wi-Fiを活用する
モバイル通信を避け、信頼できるWi-Fiに接続するのも有効な対策です。ただし、街中のフリー Wi-Fi の中には「野良 Wi-Fi」のような危険なものもあるので、このようなアクセスポイントには接続しないように注意する必要があります。
キャリアや総務省に通報する
偽基地局による影響を受けた場合、利用している携帯キャリアに通報することも重要です。キャリアはネットワークの異常を調査し、必要に応じて総務省や警察と連携して対応します。キャリアに連絡する場合は、通信が途切れた時間帯や場所、受信した怪しいSMSの内容などを具体的に報告するようにしましょう。
また、総務省は電波法に基づき、違法な電波利用を監視・取り締まる責任を持っています。偽基地局は電波法違反に該当する可能性が高いため、総務省への通報も有効です。
詐欺・情報窃盗への対策
2つ目の目的「詐欺・情報窃盗」ですが、これは一般的なフィッシング詐欺対策に近いことをします。具体的には次のようなものがあります。
- OS やアプリのアップデート
スマホの OS やアプリを常に最新の状態にアップデートします。 - VPN の利用
VPNサービス（例：Nord VPN など）を利用し、通信内容を暗号化します。 - 怪しい SMS を無視する
怪しい SMS が届いたら、SMS 内のリンクをクリックしないようにします。リンクを長押しで確認する行為も危険です。どうしても内容が気になる場合は、リンクはクリックせず、公式アプリやブラウザのブックマークからアクセスします。 - 迷惑SMSフィルターの活用
キャリアが提供するアプリ（例：ドコモの迷惑 SMS 対策）を導入します。これにより、詐欺 SMS を自動検出・遮断できるので、安全性が高まります。
なお、VPN については👇の記事で詳しくまとめていますので、併せてご覧ください。
対策の優先順位と限界
このような感じでユーザーができることはそれほど多くありません。Android スマホをお使いなら「2G無効化」の設定は見直しだけは確実にやっておいた方がいいでしょう。
あとは、基本的にできることをすべてやっておくのがベストです。また、怪しい SMS を開かないなどの対策は常に意識してください。また、VPN やフィルターアプリの導入も有効ですが、お金がかかることなので必要に応じて利用の判断をしてください。
いずれにせよ、偽基地局の存在は個人では完全に検知できず、ジャミングによる圏外は防ぎようがありません。その点については注意が必要です。
まとめ
偽基地局は、目に見えない「現代の脅威」です。すぐにできる対策を講じて、個人情報や資産を守ることが重要です。特に都市部に出かけることが多い人は、2G 無効化や VPN 利用などを習慣化しておくと安心です。
