2025年末を迎えようとしている今、PC業界に大きな変化が起きようとしています。DellやLenovoといった大手PCメーカーが、年末から来年にかけてPC価格を大幅に引き上げる可能性が浮上しているんです。
背景にあるのは、AI向けメモリの需要急増によるDRAM価格の高騰。この動きは一部のメーカーだけの問題ではなく、業界全体に影響を及ぼす可能性があります。
そこで、なぜこのタイミングでPC価格が上がるのか、そして私たちユーザーは何を知っておくべきなのかを整理してみました。
何が起きているのか?AIブームがPC価格に影響
2025年末時点で、DRAM(メモリ)の価格が急激に上昇しています。
その主な理由は、AI関連サーバーからの需要が爆発的に増えているためです。ChatGPTのような生成AIサービスが広く使われるようになり、これを支えるデータセンターでは大量の高性能メモリが必要になっているんですよね。
このメモリ需要の急増により、PC向けメモリの調達コストが大幅に上昇してしまいました。メモリメーカーは利益率の高いAI向け製品の生産を優先するため、一般消費者向けのPC用メモリの供給が絞られている状況なんです。
こうしたコスト上昇を受けて、「PC価格の値上げ」という観測が現実味を帯びてきています。特にDellやLenovoといった大手メーカーから、具体的な動きが報じられ始めています。
TrendForceレポートが明かすDell/Lenovoの値上げ計画
市場調査会社TrendForceが2025年12月上旬に発表したレポートによると、DellとLenovoの2社が近い将来に価格改定を実施する見込みだと報じられています。
Dellの動き
TrendForceのレポートでは、Dellが2025年12月中旬にもPC及びサーバー価格を15〜20%程度引き上げる見通しであると伝えられています。これはかなり大きな値上げ幅ですよね。すでに一部の取引先には価格改定の通知が行われているとの情報もあります。
Lenovoの動き
一方のLenovoは、顧客向けに「現行価格は2025年末まで」という案内を出しているとのこと。つまり、2026年1月以降に値上げを実施する予定だと伝えているわけです。Dell同様、こちらも二桁台の値上げになる可能性が指摘されています。
海外メディアも一斉に報道
この情報は、Tom’s HardwareやCNETといった海外の有力テックメディアでも取り上げられました。各メディアがいずれも同じTrendForceのレポートを情報源としており、「業界レベルで共有されている観測」として受け止められていることがわかります。
ただし、これらはあくまで「報じられている」内容であり、Dell・Lenovoからの公式発表ではない点には注意が必要です。
Dell・Lenovoの値上げ観測まとめ
| メーカー | 報じられている値上げ幅 | 開始時期(観測) |
|---|---|---|
| Dell | 15〜20% | 2025年12月中旬〜 |
| Lenovo | 明確な数値は未公表だが二桁台の可能性 | 2026年1月以降 |
※上記は報道ベースの情報であり、公式発表ではありません(2025年12月上旬時点)
HPや他のPCメーカーも無関係ではない
では、DellとLenovo以外のPCメーカーは安泰なのでしょうか?残念ながら、そうとは言えません。
HPも値上げを検討中?
前述のTrendForceレポートでは、HPやHPEといった他の大手OEMメーカーについても言及されています。サーバーで約15%、PCで約5%程度の値上げを検討・実施する可能性があるとのことです。
実際、HPのCEOは投資家向けの説明会で「2026年後半は市場環境が厳しくなり、必要であれば価格引き上げも検討せざるを得ない」という趣旨の発言をしたと報じられています。
メモリ調達の構造上、どのメーカーも同じ圧力を受ける
ここで重要なのは、メモリの調達構造です。PC用DRAMの主要サプライヤーは、サムスン電子やSK hynixといった韓国メーカーが中心。つまり、Dell、Lenovo、HP、Acerといった各社は、基本的に同じサプライヤーからメモリを調達しているんですよね。
現時点で公に具体的な値上げ率を発表しているのはDell/Lenovoの観測情報が中心ですが、メモリ調達の構造上、HPや他のOEMメーカーも同じコスト圧力を受けていることは間違いありません。「Dell・Lenovoが値上げするなら、他社も追随する可能性が高い」という見方が業界では広がっています。
なぜメモリだけでここまで価格に影響するのか
「たかがメモリ1つで、PC全体の価格が15〜20%も上がるの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。実は、メモリはPCのコスト構造において意外と大きな割合を占めているんです。
メモリがPCコストの15〜18%を占める
業界アナリストの分析によると、DRAMはPCの部品コスト(BOM:Bill of Materials)の約15〜18%程度を占めていると言われています。つまり、メモリ価格が2倍近くになれば、PC全体のコストは10%以上押し上げられる計算になるわけです。
サムスンやSK hynixがAI向けメモリを優先
なぜメモリ価格がこれほど高騰しているのか?それは、メモリメーカーがAI向けの高性能メモリ(HBM:High Bandwidth Memory)やサーバー用DRAMの生産を優先しているためです。
サムスン電子やSK hynixといったメモリ大手は、利益率の高いAI向け製品に生産ラインを振り向けており、結果としてコンシューマ向けPC用DRAMの供給が絞られているんです。需要と供給のバランスが崩れれば、価格が上がるのは経済の基本原理ですよね。
PC出荷予測も下方修正
TrendForceや他のアナリストによると、PC用DRAM契約価格は2025年以降も上昇傾向が続く見通しとのこと。実際、当初は「前年比プラス成長」と予想されていたノートPC出荷台数が、「マイナス成長」へと下方修正される事態にもなっています。
価格が上がれば買い控えが起きる——これは消費者心理として当然のことです。メモリ価格の高騰は、PC市場全体の成長にもブレーキをかけつつあるんですね。
影響はPCだけじゃない:スマホやゲーム機も
DRAM価格の高騰が影響を及ぼすのは、PCだけではありません。メモリを使用する他のデバイスカテゴリにも波及しています。
スマートフォンへの影響
スマートフォンもまた、大量のDRAMを搭載しています。特にハイエンドモデルでは8GB、12GB、さらには16GBといった大容量メモリが当たり前になっていますよね。メモリコストの上昇は、スマホ価格にも影響を与える可能性があります。
ゲーム機への影響:Switch2も例外ではない
日本市場で圧倒的なシェアを持つ任天堂も、この状況と無関係ではありません。Switch2は2025年6月5日に49,980円(日本国内版)で発売されましたが、これも「メモリ価格高騰前の”ラストチャンス価格”だった可能性がある」という指摘が専門家から出ているんです。
実際、任天堂は「さまざまな部材の価格が上昇していることは認識している」とコメントしており、将来的な価格調整の可能性を示唆しています。初代Switchは発売から8年間、基本的に価格を維持し続けてきましたが、Switch2は同じようにいかないかもしれません。
PlayStation 5やXbox Series Xといった他のゲーム機も同様の状況です。一部のメディアでは、「ゲーム機メーカーはコスト増により価格据え置きや値下げを見送り、高価格帯路線を維持する可能性がある」と指摘されています。
通常、発売から数年が経過したゲーム機は生産コスト低下により値下げされるのが一般的なパターンでした。しかし、メモリコストが上昇している現状では、値下げどころか現行価格の維持すら難しくなりつつあるんです。業界アナリストの中には「2025年末が最安で、今後は値上げの可能性がある」と警告する声もあります。
Dell・Lenovo以外のPCメーカーも例外ではない
前述したHP以外にも、Acer、ASUS、そして日本のNECやFujitsuといった国内メーカーも、同じメモリ調達市場で競争しています。「Dell/Lenovoだけが値上げして、他社は据え置き」という状況は考えにくいでしょう。
市場構造を考えれば、「他メーカーも2026年にかけて何らかの価格調整を行う可能性が高い」というのが、現時点での妥当な見方だと言えそうです。
Appleはどうなる?
ただし、Appleに関しては少し事情が異なります。Appleは世界最大規模の半導体バイヤーとして、メモリメーカーと年単位の長期契約を結んでいるとされています。そのため、スポット市場の価格変動の影響を受けにくく、現行のM4チップ搭載Macについては当面価格据え置きが続く可能性が高いと見られています。
しかし、業界アナリストは「次期モデル(M5以降)については、いかにAppleといえども高騰したメモリ価格を反映し、値上げを余儀なくされる可能性がある」と指摘しています。現在のメモリ高騰は一過性ではなく、AI需要による構造的な供給不足だからです。
つまり、Macユーザーについては「今すぐ買い急ぐ必要はないが、次世代モデルからは価格が上がるかもしれない」という状況と言えます。
ユーザー視点でできること:購入タイミングと注意点
ここまで読んで、「じゃあ私たちはどうすればいいの?」と思った人も多いと思います。値上げが確実視される中、ユーザーとしてできることを考えてみましょう。
現状認識:値上げは現実的なシナリオ
まず押さえておきたいのは、「DellやLenovoはすでに値上げ前提のコミュニケーションを顧客に対して始めている」という事実です。これは単なる噂レベルの話ではなく、業界関係者の間では既定路線として受け止められつつあります。
他社についても、2026年にかけて何らかの価格調整があってもおかしくない状況だと考えておいた方が良いでしょう。
近い将来PC購入予定があるなら
もし2026年前半にPC購入を予定しているなら、以下のポイントに注意してみてください。
価格動向をウォッチする
2025年末から2026年前半にかけての価格動向を注視しましょう。特に、メモリ16GB以上を搭載したモデルは値上げの影響を受けやすい可能性があります。お目当てのモデルがあれば、在庫状況や価格の推移をチェックしておくと良いですね。
「今買う」か「構成を見直す」か
値上げを避けたい場合の選択肢は大きく2つあります。
1つ目は、「値上げ前の今のうちに買ってしまう」という選択。予算が決まっていて、近々PCが必要な方には現実的な選択肢です。
2つ目は、「メモリ以外のスペックを抑えて価格上昇を相殺する」という方法。例えば、16GBメモリモデルではなく8GBモデルを選び、後から自分でメモリ増設する(対応モデルの場合)という手もありますよね。ストレージをSSDの容量を少なめにして、外付けストレージで補うという選択もあるでしょう。
公式発表を待つ姿勢も大切
ただし、焦りすぎるのも禁物です。本記事は2025年12月上旬時点の情報に基づいており、今後メーカーからの公式発表や追加のレポートにより状況が変わる可能性もあります。
「絶対に値上げされる」と決めつけず、冷静に情報を集めながら判断することが大切ですね。
まとめ:メモリコスト高時代の到来
DellとLenovoのPC値上げ観測は、DRAM市場の構造変化が表面化した一例に過ぎません。AI技術の普及により、メモリ需要の中心がコンシューマ向けPCから高性能サーバーへとシフトしている——この大きな潮流の中で、PC業界全体が新たな局面を迎えようとしています。
他メーカーや、PC以外のスマートフォン・ゲーム機といったカテゴリ製品も含め、2026年以降の「メモリコスト高時代」をどう乗り切るかが問われているんです。
私たちユーザーとしては、こうした業界動向を理解しつつ、自分にとって最適な購入タイミングや製品選びを考えていく必要がありそうです。
※本記事は2025年12月上旬時点の報道および市場分析に基づく情報をまとめたものです。実際の価格改定時期や値上げ幅は、各メーカーの公式発表により変更される可能性があります。


