2025年秋以降、パソコンのメモリやSSDの価格が急激に上昇しています。自作パソコンを組み立てている方や、メモリの増設を検討していた方なら、価格の変化に驚いているのではないでしょうか。
実は、この価格高騰は一時的なものではなく、構造的な要因が絡んでいます。Macなどのメーカー製パソコンを購入予定の方にも影響が出る可能性が高いため、今回はその背景と今後の見通しについて詳しく解説していきます。
メモリ価格高騰の背景にある4つの要因
AI需要の爆発的な拡大
最も大きな要因は、生成AIとデータセンター向けのメモリ需要が急増していることです。ChatGPTをはじめとする生成AIサービスは、膨大な量のデータ処理を必要としますよね。そのため、サーバー用の高性能メモリが世界中で取り合いになっているんです。
この影響で、私たちが普段使うパソコン向けのメモリ供給が圧迫されています。メモリメーカーは限られた生産能力をどこに振り向けるか選択を迫られており、結果として一般消費者向けの供給が減少しているわけです。
高利益のHBM生産へのシフト
SamsungやSK hynixといった大手メモリメーカーは、より利益率の高いHBM(High Bandwidth Memory)やサーバー用メモリの生産に注力しています。HBMはAI処理に最適化された高性能メモリで、通常のDDR4やDDR5と比べて数倍から数十倍の価格で取引されるんです。
企業として、利益の出る製品に生産ラインを割きたいのは当然のこと。その結果、DDR4やDDR5といった一般向けメモリの生産量が減少し、市場での品薄状態を招いています。
驚くべき価格上昇の実態
具体的な数字ですが、DDR5メモリは、わずか1か月で価格が約2倍になったケースもあります。また、SSDに使われるNAND型フラッシュメモリの契約価格も、半年間で2倍に跳ね上がっています。
これは、ここ数年で見ても異例の上昇ペースと言えます。通常、半導体の価格は需給バランスで変動しますが、ここまで急激な上昇は珍しいケースです。
DDR4の価格逆転現象
面白いのは、古い世代のDDR4メモリで価格逆転現象が起きていることです。通常、新しい世代の方が高価なはずですが、DDR4の生産終了が相次いだ結果、在庫が少なくなり価格が高止まりしています。
一方で、DDR4を搭載したパソコンはまだ現役で多く使われているため、需要は依然として存在するんですよね。この需給ギャップが、DDR4の価格を押し上げる要因になっています。
SSDも例外ではない高騰の波
メモリ(DRAM)だけでなく、SSDの価格も急激に上昇しています。SSDはデータを保存するストレージですが、内部ではNAND型フラッシュメモリという半導体を使用しているんです。このNAND型フラッシュメモリも、メモリと同じく需給バランスの影響を受けているんですね。
NAND型フラッシュメモリの価格動向
SSDの主要部品であるNAND型フラッシュメモリの契約価格は、約半年間で2倍に跳ね上がっています。さらに、大手メーカーのSanDiskは契約価格を50%引き上げたと報じられており、小売価格への影響は避けられない状況です。
実際、店頭やオンラインショップでのSSD価格を見ると、1.5倍程度に上昇しているケースも珍しくありません。特に人気の高い1TBや2TBといった大容量モデルは、需要が集中しやすく価格上昇の影響を受けやすくなっています。
メモリとSSD、どちらも同じ流れ
メモリ(DRAM)とSSD(NAND)は別の製品ですが、どちらも半導体製造の生産能力を奪い合う関係にあります。メーカーは限られた工場の生産ラインを、より利益率の高い製品に優先的に割り当てるため、AI向けの高性能製品が優先され、一般向けの供給が減少するという構造は共通しているわけです。
つまり、パソコンのアップグレードを考えている方にとっては、メモリだけでなくSSDも「今買うべきか、待つべきか」という同じ悩みに直面することになります。
実売現場の「今」
秋葉原などのパソコンパーツショップでは、メモリやSSDに購入制限がかけられている店舗も出てきています。「お一人様1点まで」といった制限を見かけた人もいるかもしれません。
また、「在庫限り」「入荷未定」といった表示が増えており、欲しいスペックの製品が手に入らないケースも増えています。店員さんからも「必要なら今のうちに買っておいた方がいい」というアドバイスが聞かれるようになりました。
SSDについても同様の状況で、特に人気の高い大容量モデルは品薄が続いています。価格が落ち着くのを待っていたら、さらに高くなってしまったという声も少なくありません。メモリとSSDの両方を必要としている方にとっては、まさにダブルパンチとも言える状況です。
今後の見通しは?
専門家の予測では2026年初頭までは高値が続く可能性が高いとされています。サーバーやAI向けの需要は今後も高止まりする見込みで、一時的な値下がりは期待しにくい状況。
メモリメーカー側も、現在の価格水準を維持する姿勢を示しています。つまり、「もう少し待てば安くなるかも」という期待は、今回はあまり現実的ではないということになります。
むしろ、今後さらに価格が上昇するリスクもあるため、必要性が高い場合は早めの購入を検討する方が賢明かもしれません。
Macや増設できないPCを使っている方への影響
Appleのシリコン搭載Macや、多くのメーカー製ノートパソコンは、購入後にメモリを増設することができません。これらのパソコンを購入予定の方は、特に注意が必要です。
本体価格そのものが値上がりする可能性に加えて、メモリを増やすカスタマイズオプションの料金も高騰するリスクが非常に高いんです。たとえばMacを購入する際、16GBから32GBにメモリを増やすと通常でも追加料金がかかりますが、この金額がさらに高くなる可能性があります。
特に次期モデルの発売時や、カスタマイズでメモリを増やす場合は、以前と比べて割高感を感じることになるかもしれません。必要なメモリ容量をよく考えて、購入のタイミングを見極める必要があるでしょう。
購入を考えているならここを確認
購入を考えているなら、この状況を踏まえて、いくつか確認しておきたい点をまとめておきます。
必要性が高いなら早めの決断を
メモリの増設やパソコンの買い替えを検討しているなら、数カ月から1年待っても状況が劇的に好転する可能性は低いと考えられます。必要性が高い場合は、現在の価格で購入を決断するのも一つの選択肢です。
在庫やセール情報をこまめにチェック
店舗やオンラインショップの在庫状況は日々変動しています。セール時期やポイント還元キャンペーンを活用すれば、少しでもお得に購入できる可能性があります。
本当に必要なスペックかを見直す
この機会に、本当にそれだけのメモリ容量が必要かを見直してみるのもいいでしょう。用途によっては、現在のメモリ容量でも十分に使える場合があります。
特に影響が大きいユーザー
次のような人は、特に今回の価格高騰の影響を受けやすいため、早めの対応がおすすめです。
- 自作パソコンの組み立てを予定している
- 既存パソコンのメモリ増設を検討している
- SSDへの換装や大容量SSDの追加を計画している
- 大容量メモリが必要な動画編集や3D制作を行う
- Macやメーカー製PCでメモリ多めのカスタマイズを予定している
まとめ
2025年秋のメモリやSSDの価格高騰は、AI需要の拡大という大きな構造変化によるものです。一時的な供給不足とは異なり、しばらく続く可能性が高いことを理解しておく必要があります。
「もう少し待てば下がるかも」という期待は今回は難しく、必要性が高い場合は現在の市況を前提に判断することが求められます。特に後からメモリを増設できないパソコンを購入予定の方は、初期構成でのメモリ容量選びがより重要になってきました。
賢い消費者として、最新の価格動向をチェックしながら、自分にとってベストなタイミングで購入したいものです。

