Copilot+ PCの目玉機能と呼ばれていた「リコール機能」ですが、ようやく2025年4月からプレビュー版の提供が開始されました。発表された当初は色々と物議を醸したこの機能ですが、早速Copilot+ PCで試してみたので、この機能の概要や基本的な使い方を詳しく解説していきます。
リコール機能って何?:AIが過去の画面を覚えてくれる画期的な機能
リコール機能は、PC上で行った操作や閲覧内容を自動的にスナップショットとして保存し、時系列で遡れる「タイムライン」として提供する革新的なAI機能です。従来の検索のようにファイル名や保存場所を覚えていなくても、「あの時見た資料」や「先週編集した表計算」など曖昧な記憶からでも検索できるんです。
例えば「レシピに関するWebページ」と自然な言葉で検索すると、過去に閲覧したレシピ関連のWebページ一覧が表示されます。テキストだけでなく、Webページや画像、アプリの画面など、PC上で見たほぼすべてのコンテンツを記録し、AIが自動で解析・分類してくれるのが特徴です。
わざわざブラウザの履歴を探す必要もありません!まさに「PCの記憶」とも言える機能ですね。
ただ、ご存知の人も多いと思いますが、この機能は2024年にCopilot+PCのリリースと同時に提供される予定の目玉機能でした。しかし、発表直後からプライバシーやセキュリティの懸念が相次いで噴出し、Microsoftは慎重な対応を余儀なくされていました。
特に次のような問題が指摘されていました。
- 機密情報の記録リスク:パスワードやクレジットカード情報が誤って保存される可能性
- プライバシー侵害の懸念:すべての画面を記録することへの不安
- セキュリティホールの指摘:外部からのアクセスリスクに関する議論
このため、Microsoftは一度機能の提供を延期し、約1年間にわたってセキュリティ強化とプライバシー保護機能の改良を行いました。そして2025年4月、ようやくプレビュー版としてリリースされたというわけです。
リコールの基本動作
リコール機能の使い方は驚くほど簡単です。有効化すると自動で次のような動作を行います。
自動記録機能
リコール機能の核となる部分です。ユーザーが何も操作しなくても、バックグラウンドで常に動作して、次の動作を行います。
- 数秒ごとにPC画面のスナップショットを自動保存
- テキスト・画像・アプリ画面など、表示されたすべてのコンテンツを記録
- AIによる自動解析でコンテンツを分類・整理
検索とタイムライン
リコールで記録されたデータは、タイムラインや検索を使って探します。これまでのPCの検索とはまったく違うアプローチで情報を検索できるようになります。
- タイムライン検索:過去の作業履歴を時系列で遡って確認
- 自然言語検索:「昨日見た料理のサイト」といった曖昧な表現で検索可能
- 直感的な再発見:AIが内容を解析して該当するスナップショットを提示
スナップショット管理
プライバシーと利便性のバランスを取るために管理機能が用意されています。次の内容は、自分好みにカスタマイズできます。
- 不要なデータの削除:特定のスナップショットを個別に削除
- アプリ・Webサイトの除外:記録したくないアプリやサイトを設定で除外
- 一時停止機能:必要に応じて記録を一時停止
利用できるのはCopilot+ PCのみ
リコール機能に対応するデバイスは、NPU搭載のCopilot+ PC限定です。それ以外のWindows PCでは利用できません。これは、この機能はNPUをフル活用して実現しているためですね。なお、ストレージ等の要件については、次のとおりです。
- ストレージ容量:50GB以上の空き容量
- Windows Helloの生体認証(顔認証または指紋認証)
- アップデート:4月のnon-security preview アップデート (KB5055627以降)の適用
なお、現在はプレビュー版として提供されており、段階的なロールアウトの対象となっています。対象のCopilot+PCに順次配信されているため、まだ利用できない場合は少し待つ必要があるかもしれません。
フィルタリング対応ブラウザ
リコール機能は画面に表示されたすべてのコンテンツを記録するため、どのブラウザを使っていても基本的に記録されます。ただし、特定サイトの除外やプライベートブラウジングの自動除外などのフィルタリング機能に対応しているブラウザは次のとおりです。
- Microsoft Edge:指定サイトのフィルタリング、プライベートブラウジングの除外
- Google Chrome:指定サイトのフィルタリング、プライベートブラウジングの除外
- Firefox:指定サイトのフィルタリング、プライベートブラウジングの除外
- Opera:指定サイトのフィルタリング、プライベートブラウジングの除外
- Chromium系ブラウザ(バージョン124以降):プライベートブラウジングの除外のみ(特定サイトのフィルタリングは非対応)
なお、上記に挙げなかったBrave、Vivaldiなどのブラウザでも画面の記録自体は行われますが、次の制限があります。
- 特定Webサイトの自動除外設定ができない
- プライベート/シークレットモードの自動除外が機能しない場合がある
- 手動でのフィルタリング設定が必要
なお、Braveブラウザでは独自に「Block Microsoft Recall」設定を導入し、デフォルトでリコール機能からの記録をブロックする開発が進められていると報告されています。
リコールを使えるようにする
リコール機能は、ユーザーが「積極的に同意」しない限り機能が有効にならない「オプトイン方式」を採用しています。そのため、初期状態ではオフになっています。ユーザーが自分で有効化しない限り記録は始まりません。リコール機能を有効にするには、次の手順で操作します。
- Windows Updateで「KB5055627」をインストールし、PCを再起動する
- 再起動後に「リコールを使用して写真メモリを呼び覚ます」というリコール機能の紹介画面が表示されるので、「はい、保存します」をクリックする
これでリコール機能が有効になります。リコールが有効になると、システムトレイ(通知領域)に「リコール(プレビュー)」アイコンが追加されます。

アイコンをクリックすると使い方の画面が表示されるので、すべて確認してください。確認が終わるとWindows Helloの認証画面が表示されます。画面の指示に従ってWindows Helloを設定すればリコール機能が利用できるようになり、自動的にスクリーンショットを撮影し始めます。
リコールで履歴を検索する
リコールで履歴を検索するには、前述の通り、タイムラインを使う方法と、検索する方法の2種類があります。
リコールを開く
リコール機能を開くには、システムトレイのリコールアイコン→「リコールを開く」をクリックします。

Windows Helloで認証されたら、「OK」をクリックします。これで過去のスナップショットがタイムライン表示されます。

タイムラインで探す
タイムラインで探す場合は、画面下部に表示されているスライダーを移動させます。

スライダーを動かした時刻のスナップショットが表示されます。このように、過去のスナップショットを遡りながら情報を検索できます。

キーワードで検索する
入力したキーワードに該当するスナップショットを検索することもできます。この場合は、画面上部の検索ボックスにキーワードを入力します。このキーワードに合致するテキストとイメージが表示されます。

検索結果に表示されたサムネイルをクリックすると、そのスナップショットを拡大表示できます。検索結果に戻る場合は、画面左上の「←」をクリックします。

タイムラインに戻るには、検索結果一覧が表示されている画面で、検索ボックスの右横にある「タイムライン」をクリックします。
「クリックして実行」を使う
スナップショットを拡大表示すると、AIによる自動認識機能「クリックして実行」が実行されます。これにより、テキストは選択してコピー、画像はフォトアプリを使った操作などが行えます。


リコールをカスタマイズする
リコール機能は「設定」アプリから詳細にカスタマイズできます。
設定画面を開く
リコールを設定する場合は、設定アプリで「プライバシーとセキュリティ」→「リコール & スナップショット」をクリックします。

ストレージの設定
ストレージに関する設定をする場合は、「ストレージ」をクリックします。ここでリコールに使うストレージの容量や保存期間を設定できます。

- スナップショットの最大ストレージです:25GB、50GB、75GB、150GBから選択(ストレージの空き容量によっては、大きなサイズは表示されないことがある)
- スナップショットの最大ストレージ期間:30日、60日、90日、180日、または無制限から選択
スナップショットの削除
スナップショットを削除する場合は、「スナップショットの削除」をクリックします。指定した時間内のスナップショットの削除、すべてのスナップショットの削除が行えます。

フィルターするアプリやWebサイトを管理
機密情報は自動的にフィルターするようになっていますが、機能としては万全ではなく、誤って記録されるリスクも指摘されています。そのため、記録したくないアプリやWebサイトはフィルターリストに手動で追加が可能です。
アプリやWebサイトをフィルターリストに追加すると、そのアプリやWebサイトがデスクトップで表示されている間はスナップショットが保存されなくなるようです。
アプリを追加する
フィルターするアプリを追加する場合は、「機密情報のフィルター処理」をオンにし、「フィルター処理するアプリ」にある「アプリの追加」をクリックします。

表示されたダイアログでフィルターするアプリを選択し、「追加」をクリックします。アプリが一覧にない場合は、アプリ名を入力して検索してください。

追加されると、アプリ名が表示されます。ゴミ箱アイコンをクリックすれば、フィルターから削除できます。

Webサイトを追加する
Webサイトの追加手順もほぼ同様です。「フィルター処理するWebサイト」にある「Webサイトを追加してください」をクリックします。

表示されたダイアログにそのサイトのURLを入力し、「追加」をクリックします。

追加されると、URLが表示されます。ゴミ箱アイコンをクリックすれば、フィルターから削除できます。

プライバシーとセキュリティ:しっかり守られているけど注意点も
「画面を常に監視されているなんて怖い」と思う方もいるでしょう。リコール機能では多重のプライバシー保護措置が講じられていますが、完璧ではないことも理解しておきましょう。
強固なセキュリティ機能
データ保護の面では、スナップショットはクラウドに送信されず、PC内にのみ保存されます。さらにBitLockerやTPMによる強力な暗号化が施されており、Microsoftや他のユーザーがアクセスすることは不可能です。
認証システムについても、Windows Hello(顔認証・指紋認証)が必須となっており、機能の有効化・無効化時にも認証が必要になります。加えて、セキュリティプロセッサ(Pluton)による最新の保護機能も組み込まれています。
自動フィルター機能では、パスワードやクレジットカード番号といった機密情報を自動検出して除外する仕組みが既定で有効になっています。ユーザーが特別な設定をしなくても、基本的な保護は機能するようになっているので、過剰に心配する必要はなさそうです。
注意すべき点とリスク
ただし、技術的な制限もあります。機密情報の自動フィルターは万全ではなく、重要な情報が誤って記録される可能性があります。
PIN認証のセキュリティリスク
リコール機能の起動には基本的にWindows Helloの生体認証が求められますが、生体認証に失敗した場合はPINでも起動できてしまいます。生体認証は失敗することも多いことからこのような仕様になっていると思われますが、PINが盗まれてしまうとWindows 11にサインインされ、さらにリコールの履歴から過去の作業内容なども漏えいしてしまう危険性があります。
ログイン必須サイトの制限
ログインしないと全文が読めないWebサイトの場合、ログインした段階でそのサイトはリコールのスナップショット対象外となってしまいます。例えば、有料記事を掲載しているサイトもそうですし、Gmailの場合も対象となってしまいます。
これはプライバシー保護や著作権保護の観点からの仕様と思われますが、ログインを求めるWebサイトは意外と多く、それが除外されるとリコール機能を使う価値が大きく減ってしまうのが現実です。
一方で、ログイン画面自体はスナップショットされることがあるため、ログインアカウントが保存されてしまう可能性があります。ログインアカウントがわからなくなった場合は便利ですが、プライバシーやセキュリティの面でやや心配な点です。
なお、DRM保護コンテンツやプライベートウィンドウ(シークレットウィンドウ)で表示したサイトも記録の対象外となります。プライベートウィンドウが開いている場合、そのブラウザはスナップショットの対象外となるようなので、この点も注意が必要です。
使わない場合は無効化しておく
リコール機能が不要な場合や、プライバシーが気になる場合は、無効にしておいた方がいいでしょう。設定アプリで「リコール&スナップショット」の画面を表示したら、「スナップショットの設定」をオフにします。これでリコールは無効にできます。

ただし、リコールをオフにしても、これまで保存されたスナップショットは削除されないので、不安な人は前述の方法でスナップショットを削除してください。
今回使用した端末 #デルアンバサダー
この記事を書くにあたって使用した端末は、DELLのXPS13です。非常にスタイリッシュで美しいという端末ですね。非常に物欲を刺激するデザインです。性能面も申し分なく、パワフルであらゆる用途でストレスなく利用できます。
この端末ですが、デルアンバサダープログラムでモニターに当選し、今回お借りすることができました。どうもありがとうございます。

デルアンバサダーは、モニター体験だけではなく、限定イベントの招待や特別価格での提供など、色々と特典があります。無料で登録できるので、気になる方は登録しておくのがおすすめです。

なお、XPS13については、過去にレビューしていますので、もしよかったら、そちらも併せてご覧ください。
まとめ:便利だけど理解して使おう
リコール機能は、過去の作業履歴をAIが「記憶」し、直感的に検索・再発見できる画期的な機能です。特に情報収集や資料作成を頻繁に行う方にとっては、大幅な作業効率向上が期待できます。ただし、記事にも書いたような注意点や制限があるため、まだこなれていないという印象は拭えないですね。
現在はプレビュー版のため、今後の機能改善にも期待したいところです。利用前には記録される内容やプライバシーリスクを十分に理解し、必要に応じてオフや一時停止、除外設定を積極的に活用することが大切です。
Copilot+PCをお持ちの方は、まずは小さく始めて、自分の使い方に合わせて徐々に設定を調整していくのがおすすめです。