2025年11月、Windows 11の最新更新プログラムを適用したら、突然エクスプローラーの「ネットワーク」から他のPCが見えなくなった――そんな報告が相次いでいます。この現象、実はWindows 11 24H2/25H2とESETセキュリティソフトの組み合わせで起きている既知の不具合です。そこで、この問題の詳細と対処法について詳しく解説していきます。
どんな症状が出ているの?
まず、今回の不具合がどういうものなのか整理しておきましょう。
エクスプローラーを開いて左側のメニューから「ネットワーク」をクリックしても、本来表示されるはずの他のPC(コンピューター)が一覧に出てこないという症状です。社内の共有フォルダにアクセスしようと思ったのに、サーバーやほかのPCが見当たらない…そんな状況ですね。
ただし、これは「ネットワーク探索による表示」に限定された問題である可能性が高いです。というのも、\\サーバー名\共有フォルダ名のようなUNCパスや、IPアドレスを直接入力すれば共有フォルダにアクセスできるケースが報告されているからです。つまり、ネットワーク自体は生きているけれど、エクスプローラー上での「見える化」機能だけが動いていないということが考えられます。
この不具合が起きる条件
今回の問題が発生するのは、次の3つの条件が揃った環境です。
- Windows 11のバージョンが24H2または25H2である
- 2025年11月12日に配信されたセキュリティ更新プログラム「KB5068861」を適用している
- ESET製のセキュリティソフトをインストールしている
この3つが揃ったときに、ネットワーク上のPCが表示されなくなる現象が確認されています。逆に言えば、Windows 11の他のバージョン(23H2など)や、ESETを使っていない環境では基本的に発生しない問題だということです。
公式発表の内容と影響範囲
ESETの日本代理店であるキヤノンITSは、この問題を公式に認めています。サポートサイトでは「KB5068861を適用後、エクスプローラー上のネットワークにPCが表示されなくなる現象が発生している」と明記し、現在修正モジュールの配信準備を進めているとのことです。
影響を受けるのは、個人向けから法人向けまで、ほぼすべてのESET製品です。具体的には次のような製品が該当します。
個人向け製品
- ESET HOME セキュリティ(各エディション)
- ESET Security Ultimate
- ESET Smart Security Premium
- ESET Internet Security
- 旧バージョンのESET製品
SOHO・中小企業向け製品
- ESET Small Business Security
- ESET NOD32アンチウイルス
法人向け製品
- ESET Endpoint Security
- ESET Endpoint アンチウイルス
- ESET PROTECT関連製品
ESETを使っている方は、個人・法人を問わず注意が必要ですね。
なぜこの問題が起きているの?
現時点で、キヤノンITSやマイクロソフトから原因の詳細な説明は出ていません。ただ、ある程度の推測は可能です。
まず、KB5068861はセキュリティ更新を含む累積更新プログラムで、ネットワーク関連の脆弱性修正も含まれています。この更新によってWindows側のネットワーク通信の仕組みが変更され、その変更がESETのネットワークフィルタリング機能と相性が悪かった可能性があります。
実際、KB5068861は他にもいくつかの問題が報告されている更新プログラムです。一部環境でPCが起動しなくなったり、シャットダウンや再起動が正常に完了しないという不具合も出ているんですよね。これらを見ると、今回の更新プログラムはシステムの深い部分に影響を与える変更が含まれていたことがわかります。
ESETが影響を受けているのは、セキュリティソフトという性質上、ネットワーク通信を監視・フィルタリングする機能を持っているため。SMB(Server Message Block)プロトコルやネットワーク探索機能に関わる通信を、ESETが何らかの形でブロックしてしまっている可能性が考えられます。
今すぐできる対処法はあるの?
現時点でキヤノンITS側から「こうすれば回避できます」という公式の手順は提示されていません。ただし、実務的にいくつかの方法が報告されているので、それらを紹介します。
KB5068861をアンインストールする(注意が必要)
一部のユーザーからは、KB5068861をアンインストールすることで、不具合発生前の状態に戻ったという報告があります。
Windows 11でKB5068861をアンインストールする手順は次の通りです。
- 「設定」を開く(Windowsキー + I)
- 「Windows Update」→「更新の履歴」をクリック
- 「更新プログラムのアンインストール」をクリック
- 一覧から「KB5068861」を見つけて選択
- 「アンインストール」をクリック
ただし、KB5068861はセキュリティ更新プログラムのため、アンインストールすると重要な脆弱性が未修正のまま放置されることになります。セキュリティリスクが高まるため、注意が必要です。
もしアンインストールする場合は、あくまで「ESET側の修正モジュールが配信されるまでの暫定措置」と考えてください。そして、できるだけ早く修正モジュールを適用する必要があります。
ネットワーク探索に頼らないアクセス方法を使う
エクスプローラーの「ネットワーク」に表示されなくても、直接的な方法でアクセスできる可能性があります。
UNCパスを使う方法
エクスプローラーのアドレスバーに、次のような形式で入力してみてください。
\\サーバー名\共有フォルダ名
または
\\192.168.1.100\共有フォルダ名
サーバー名やIPアドレスさえわかっていれば、ネットワーク探索機能を経由せずに直接アクセスできます。よく使う共有フォルダは、このUNCパスをショートカットとして保存しておくと便利です。
ネットワークドライブとして割り当てる
頻繁にアクセスする共有フォルダは、ネットワークドライブとして割り当ててしまう方法もあります。
- エクスプローラーを開く
- 左側の「PC」を右クリック
- 「ネットワークドライブの割り当て」を選択
- ドライブ文字を選んで、フォルダーのパスを入力
- 「完了」をクリック
こうすれば、エクスプローラーの「PC」の下に、Cドライブと同じようにアクセスできるようになります。
いつ修正されるの?今後の見通し
キヤノンITSは「修正モジュールの配信準備中」と発表しているので、近いうちにESET側のアップデートで解消される見込みです。
ESETの修正モジュールは、通常は自動的にアップデートされる仕組みになっています。ただ、確実に最新の状態にするために、次の点を確認しておくといいでしょう。
- ESET製品の「自動アップデート」が有効になっているか確認する
- たまにESETのメイン画面を開いて、アップデート状態をチェックする
- キヤノンITSのサポートページをブックマークして、修正モジュール配信のお知らせを追う
また、企業のIT部門の方は、この不具合について社内に周知しておいた方がいいでしょう。「ネットワークにPCが見えなくても、サーバー自体は正常に動いている可能性がある」ことを伝えておけば、無駄なトラブルシューティングを減らせます。
マイクロソフト側がKB5068861の修正版をリリースする可能性もゼロではありませんが、今のところそのような発表はありません。ESETとの相性問題である以上、ESET側の対応を待つのが現実的でしょう。
他にも出ているKB5068861の問題
せっかくなので、KB5068861で報告されている他の不具合についても簡単に触れておきます。
起動やシャットダウンの問題
一部の環境で、KB5068861適用後にWindows 11が起動しなくなったり、シャットダウンや再起動が正常に完了しないという報告が出ています。これらは環境依存の問題のようで、すべてのユーザーに発生しているわけではありません。
SMB検索の不具合
ネットワーク共有フォルダでの検索が異常に遅くなったり、検索結果が空になるという問題も報告されています。企業環境では、ファイルサーバー内の検索が使い物にならなくなるケースもあるようです。
Bluetooth関連の問題
Bluetooth機器の接続に問題が出たという報告も一部で見られます。
こうした複数の不具合報告を見ると、KB5068861はかなり広範囲に影響を及ぼす更新プログラムだったことがわかります。
まとめ:慌てずに状況を把握しよう
今回のトラブルですが、ESET側の修正モジュールが配信されるまで、UNCパスやネットワークドライブの活用で乗り切るのが現実的な対応でしょう。また、この機会に普段からネットワーク探索機能に頼りすぎず、直接アクセスする方法も覚えておくと、今後のトラブル時にも役立ちます。

