ChatGPT や Gemini、Claude、Copilot など、生成 AI を活用して情報収集やアイデア出しをする際、質問の仕方によって出力される回答の精度が大きく変わります。せっかく AI を活用するなら、できるだけ的確で使いやすい回答を得たいものですよね。しかし、AI は魔法のように完璧な答えをくれるわけではなく、こちらの指示次第で精度が大きく左右されます。では、どうすれば最適な回答を引き出せるのでしょうか?
その鍵となるのが「プロンプト設計」です。プロンプトとは、AI に対する指示や質問のこと。これを工夫することで、より有益な情報を得ることができます。本記事では、AI をより賢く活用するためのプロンプト作成のコツをご紹介します。
「〇〇式プロンプト」は必須ではない
生成 AI が一般に広まり始めた頃、「〇〇式プロンプト」といった細かい指示の仕方が話題になりました。これは、AI に対して複数の前提条件を与え、詳細な背景や具体的な流れを指示することで、より高度な回答を得る手法です。しかし、現在の AI は以前よりも賢くなり、必ずしも複雑なプロンプトを作成しなくても、ある程度の精度で回答がもらえます。
たとえば、「記事の見出しを考えて」と指示するだけでも、それなりに良い候補を出してくれます。ですので、この手の「〇〇式プロンプト」は無理に覚える必要はありません。むしろ、覚えようとする時間は、実際に AI を使って試行錯誤する方がよっぽど有意義です。
とはいえ、『記事の見出しを考えて』といったシンプルな指示だけでは、得られる回答の質が向上しにくいでしょう。より的確な回答を得るためには、もう少し工夫が必要です。そこで重要なのが、次に紹介するプロンプトのコツです。
より良い回答を得るための 5 つのコツ
プロンプトを書く際のコツは 5 つだけです。しかも、すべてを無理やり入れて書く必要はなく、必要なものだけを書けば OK です。それでは 5 つのコツについて確認していきましょう。
相手の立場を指定する
AI に対して書き手の立場を明確に伝えることで、より適切な表現や内容の出力が期待できます。AIは汎用的な情報を提供するため、こちらがどのような立場で回答を求めているのかを示すことで、より目的に合った答えを得やすくなるためです。
例えば、
- 「あなたは最高のコピーライターです」
- 「あなたは製品管理のスペシャリストです」
のように指定すると、それに応じた語彙やトーンで回答を得ることができます。実際の仕事や用途に即した実践的なアドバイスを求める場合には、特に効果的です。細かいポイントですが、上記のように「最高の」とか「スペシャリスト」のように、相手の立場を最上級に持ち上げると、さらに良い回答が引き出せる可能性が高くなります。人を相手にするときも「褒めれば伸びる」ということが往々にしてありますが、これは AI も同じです。
具体的にタスクを説明する
AI は万能ではなく、文脈が不明瞭なままだと曖昧な回答を返すことがあります。そのため、できるだけ詳細にタスクの内容を伝えることが重要です。
例えば、単に「アイデアを出して」と言うだけでは、AI は無作為にアイデアを出力するだけになってしまいます。そこで、次のように具体的な条件を加えると、より実用的な回答が得られます。
- 「新規商品のアイデアをブレストしたい。ただし、ターゲット層は 20 代女性で、環境に配慮した商品を想定してほしい。」
- 「ユーザーの意見を整理するための方法を知りたい。特に、SNS で集めたコメントを効率的にカテゴリー分けする手法を知りたい。」
また、タスクの性質によって、指示の仕方を次のように工夫することも有効です。
- 発想系のタスク
「ユニークな視点から考えたアイデアを出して」 - 問題解決系のタスク
「具体的な手順を3ステップで説明して」 - 比較系のタスク
「メリット・デメリットを箇条書きでまとめて」
このようにタスクを詳細に伝えることで、AIの出力をより自分の目的に合ったものにできます。
出力する形式を指定する
AI は、求められる情報をどのように整理すべきか明確に伝えると、その形式で回答します。そのため、出力の形式を指定すると、より使いやすい回答が得られます。
例えば、以下のように形式を指定すると、目的に適した回答を得やすくなります。
- 箇条書き形式:情報を簡潔に整理したい場合に便利
- 「主要なポイントを箇条書きでまとめてください」
- 表形式:比較やデータ整理に最適
- 「A社、B社、C社のサービスを比較する表を作成してください」
- ステップ形式:手順やプロセスの説明に有効
- 「この作業の手順を1から順番に整理してください」
- エレベーターピッチ(短時間で要点を伝える説明方法):簡潔に伝えたいときに有効
- 「30秒で説明できるような要約を作成してください」
なお、出力する文字数を指定したいことがありますよね。ただし、文字数については次のように指定しても思った通りに出力されないことの方が多いです。
- 「200字以内で簡潔に説明してください」
- 「詳細に説明し、500字程度でまとめてください」
これは私の経験則ですが、「全角〇〇文字」といったように指定すると、近い文字数で出力してくれることが多いです。
質問の背景や状況を説明する
AI はプロンプトに書かれた内容だけを頼りに回答を生成するため、文脈が掴めないと一般的な内容や曖昧な回答になりがちです。そのため、具体的な背景を伝えることが重要です。どのような背景や状況に基づいていてプロンプトを書いているのかを AI に伝えると、より的確な出力が期待できます。
マーケティングに関するプロンプトを例にしてみましょう。例えば、単に「マーケティング戦略を考えて」と指示すると大雑把な回答しか得られません。そのため、次のように背景をしっかりと伝えます。
- 「中小企業向けのマーケティング戦略を考えたい。特に予算が限られている企業を対象に、効果的なデジタルマーケティングの手法を知りたい。」
- 「BtoB 向けのマーケティング戦略について知りたい。ターゲットは製造業の企業で、オンライン広告よりも人的ネットワークを活用した方法を重視している。」
このように具体的な状況を説明すると、より適した回答を得やすくなります。また、ターゲット層や用途を明確に伝えることも有効です。
- 教育分野
「大学生向けのオンライン講座を作りたい。学習効率を高めるためのカリキュラム設計のヒントを知りたい。」 - ビジネスシナリオ
「新規事業を立ち上げる際のリスク管理について知りたい。スタートアップ企業の事例を交えて解説してほしい。」 - 技術関連
「AIを活用した文章生成技術の最新動向について知りたい。特にGPTやGeminiの技術的な違いに焦点を当てて説明してほしい。」
人に相談するときも、背景や状況を詳しく伝えれば、より良い回答が返ってきます。これは AI も同様です。
回答の例を見せる
AI は多様なスタイルやトーンで文章を生成できるため、具体的な例を示すことが有効です。つまり、求める回答のイメージを提示すると、AI が適切なスタイルを理解しやすくなります。
例えば、次のように対象を指定するのは非常に有効です。
- 「小学生向けに優しい言葉で書いて」
- 「専門家向けに詳細な分析を含めて」
- 「カジュアルな会話調で表現して」
- 「学術論文風に厳密な言葉遣いで説明して」
また、AIに求めるアウトプットの長さや構成も明確にすることで、より適切な回答を得ることができます。
- 「要点を3つにまとめて、各ポイントを2~3文で説明してください」
- 「500文字程度の詳細な解説をしてください」
- 「結論→理由→具体例の順番で説明してください」
さらに、AI に実際の回答例を見せて、「このスタイルに合わせてください」と指示しても有効です。例えば、以前の回答を提示し、「このトーンで別のテーマについて説明してください」と依頼すると、より一貫性のある出力が期待できます。
実際のプロンプト例
ここまで紹介した 5 つのポイントを踏まえた、実践的なプロンプトの例を作ってみました。簡単な事例ですので、全てが現実に即しているわけではありませんが、だいたいこんなニュアンスだと思ってもらえれば OK です。
例1:商品アイデアのブレスト
20代女性向けのエコフレンドリーな日用品の新商品アイデアを考える。
あなたは優秀なマーケティング担当者です。20 代女性向けのエコフレンドリーな日用品の新商品アイデアを考えています。ターゲット層のニーズを考慮しながら、5 つのユニークな商品案を箇条書きで提案してください。
例2:SNS 投稿の作成
企業の公式SNSで、エンゲージメントを高める投稿を作成する。
あなたは最高の企業 SNS 担当者です。新商品発売の告知をするために、若者に響くようなユーモアのあるツイートを考えてください。140文字以内で、トレンドの言葉を使って作成してください。
例3:短編小説の執筆
有名な小説家の書き味を真似し、ファンタジー小説の短編を作成する。
あなたは伝説の小説家です。魔法が存在する世界を舞台に、孤独な少年が不思議な動物と出会う短編小説の冒頭を書いてください。文字数は全角500文字で、太宰治のスタイルで執筆してください。読者が引き込まれるような描写を重視してください。
例4:BtoB向けの営業戦略の提案
製造業の企業をターゲットとした新規営業戦略を考える。
あなたは BtoB 向けのトップ営業担当者です。製造業の企業をターゲットとした新規営業戦略を考えています。人的ネットワークを重視しながら、効率的なアプローチ方法を 3 つ提案してください。それぞれのメリット・デメリットも簡潔に説明してください。
例5:教育コンテンツの作成
大学生向けのオンライン講座のカリキュラムを作成する。
あなたは優秀なライターです。大学生向けのオンライン講座のカリキュラムを作成しています。効率的な学習を促すために、3 ヶ月間のカリキュラム構成を提案してください。各週のテーマと具体的な学習内容をリスト化し、短い説明を加えてください。
例6:技術トレンドの解説
最新のAI技術の違いについて詳しく解説する。
あなたは最高のテクニカルライターです。最新の AI モデルである GPT と Gemini の技術的な違いについて、専門家向けに詳しく解説してください。表形式で比較し、各項目ごとに簡潔な説明を加えてください。
追加で指示を出してブラッシュアップ
AI を使ったことのある人なら「あるある」と思ってもらえると思いますが、一度の指示で完璧な回答が得られることはかなり難しいです。そのため、AI と対話を繰り返しながら調整していき、より求めている回答に近づけていくことが大切です。
例えば、次のようなアプローチを試すと効果的です。
- 追加の具体的な指示を出す
- 最初の回答が曖昧だった場合、「より具体的に説明して」と補足を加える。
- 「例を3つ挙げて」や「専門用語を減らして」など、より細かい要望を追加する。
- フォーマットを変えて再依頼する
- 最初の回答が文章ばかりで読みにくい場合、「箇条書きで整理してください」と指示を変更する。
- データを整理したい場合、「表形式でまとめて」と依頼する。
- 段階的に深掘りする
- 「概要を簡単に説明してください」とまず広い視点での回答をもらい、その後に「その中で最も重要なポイントを詳しく解説してください」と細かく指示する。
- 逆に、「まず詳細な情報を提供してください。その後、初心者向けに簡単にまとめてください」と指示するのも有効。
- フィードバックを与えて修正を促す
- 「この部分は分かりやすかったが、もう少し具体例を増やして」といった形で、AIの出力に対してフィードバックを与えると、より精度の高い回答を得やすくなる。
AIとの対話は一回きりで終わりではなく、試行錯誤を重ねることで最適な回答を引き出せます。何度か調整を行いながら、最も目的に合った形にブラッシュアップしていくのが重要です。
まとめ:コツを押さえて習うより慣れろ
とにかく簡単に理解できるように説明してきました。コツはたったの 5 つ。しかも、全部を使わなくても、必要と思うものだけ使えば、十分に効果が現れます。
今回紹介したコツを押さえてプロンプトがある程度書けるようになれば、さらに高度なプロンプトがサクッと使えるようになります。本当に「習うより慣れろ」が大事なところですね。ぜひこの記事を参考にして、ぜひ AI を積極的に活用し、実践を重ねてみてください。きっといい感じで使えるようになると思いますよ。
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