新しいiOSがリリースされると、数週間もすればほとんどの人が最新バージョンに移行している――。これがこれまでのiOSアップデートの「常識」でした。
実際、iOS 16、17、18といった過去数世代では、リリースから3〜4か月で過半数のユーザーが新バージョンに移行していたんですよね。Androidと比較しても、この普及スピードは異常なほど高く、Appleのエコシステムの強さを象徴する数字として語られてきました。
ところが、2025年9月にリリースされたiOS 26では、状況が明らかに違います。複数の分析サービスで「立ち上がりが鈍い」というデータが出始めており、特にLiquid Glassを中心としたUI刷新に対する懐疑的な層の存在が浮き彫りになっているのです。そこで、この「異変」の背景を掘り下げてみたいと思います。
データが示す「iOS 26の鈍い立ち上がり」
StatCounterなどのトラフィック分析サービスでは、iOS 26のシェアがリリース後数か月経過した時点でも、過去の世代と比べて明らかに低い水準にとどまっています。一方で、TelemetryDeckなどの別の分析ツールでは6割前後という「楽観的」な数字も報告されており、データソースによって見え方が大きく異なっているんです。
この数字の違いには理由があります。計測するサンプル母集団の違い――たとえばStatCounterはWebトラフィックベース、TelemetryDeckはアプリ開発者が実装したSDK経由のデータといった具合に、計測手法そのものが異なるため、出てくる数字にバラつきが生じるわけです。
ただし、「iOS 26の立ち上がりが鈍い」と見る指標が目立つという点は重要です。TelemetryDeckのように「かなり進んでいる」というデータもありますが、少なくともStatCounterが示すカーブは、過去のiOSと比べて明らかに弱い。つまり、全体として見れば「従来より慎重になっているユーザーが増えている」という傾向は読み取れます。
データを絶対視しすぎるのも危険ですが、複数のソースが示す「鈍化の兆し」は、やはり無視できないシグナルです。
Liquid Glassという賛否両論のUI刷新
では、なぜユーザーは慎重になっているのか。その最大の要因と目されているのが、iOS 26で導入された「Liquid Glass」と呼ばれる新しいUI デザインです。
Liquid Glassは、従来の不透明なUIパネルから大きく舵を切り、半透明のレイヤーと動的な奥行き表現を全面的に採用した、iOSの歴史の中でも最も大胆なデザイン変更のひとつ。コントロールセンターやウィジェット、通知画面など、あらゆる場所で背景が透けて見え、まるでガラスのような質感が表現されているのが特徴です。
このデザインに対する海外メディアやコミュニティの反応は、はっきりと二極化しています。「未来的で洗練されている」「iPhoneがようやく次の時代のUIに進化した」といった好意的な声がある一方で、「視認性が落ちた」「情報密度が下がって使いにくい」「派手すぎて落ち着かない」といった否定的な意見も多数寄せられているんです。
これまでのiOSアップデートは、デザイン面では比較的「安全なマイナーチェンジ」に留まることが多く、UIの好みで大きく評価が分かれることは少なかったと言えます。
しかし今回のLiquid Glassは、明確な趣味性を持つ方向へと振られたデザインであり、それが「自分の好みに合うかどうかわからない」という不安を生み、アップデートを躊躇する層を増やしているような気がしてなりません。個人的にはWindows Vistaっぽいデザインなので、嫌いではないけどどうなのかなぁという印象です。
Liquid Glassがもたらす「重さ」とバッテリー不安
見た目の好みだけではありません。Liquid Glassには、もうひとつ大きな懸念材料があります。それがパフォーマンスとバッテリー持ちへの影響。
半透明効果やブラー処理、奥行き表現といったグラフィカルな演出は、当然ながらGPU負荷を高めます。特に古い機種では、この負荷増加が体感レベルで感じられるケースが報告されているんですよね。
具体的には、画面切り替え時のアニメーションがカクついたり、スクロール時にもたつきを感じたり、ホーム画面のアプリアイコンが遅れて表示されたりするなど、負荷が高そうな印象を受けます。さらに端末が以前より発熱しやすくなったという声が上がっていますね。
Apple自身も、大規模アップデート直後は一時的にバッテリーや発熱に影響が出ることがあることや、一部機能が追加のリソースを要求する可能性があることをサポートドキュメントで説明しています。さらに、YouTubeをはじめとする各種メディアでは「Liquid Glassのオンとオフでバッテリー持続時間を比較検証」といったコンテンツが次々と公開され、同じ操作でもiOS 26の方がiOS 18より電池消費が多かったというテスト結果も報告されています。
つまり、ユーザーが直面しているのは「見た目が好みでない」「動作が重くなりそう」「バッテリー持ちが悪化しそう」という三重の不安なんです。特にiPhone 12やSE(第2世代)といった古めの端末を使い続けているユーザーほど、これらのリスクを避けたいというインセンティブが強く働くのは当然と言えるでしょう。
それでも刺さらない「目玉機能」と、アップデートしない自由
では、Liquid Glassのデメリットを上回る「どうしても欲しい新機能」があれば、話は変わってくるはずです。しかし残念ながら、iOS 26の新機能は多くのユーザーにとって”今すぐ欲しい”と思わせる決め手に欠けているように見えます。
iOS 26にはもちろん、いくつもの新機能が搭載されています。しかしそれらの多くは、最新のモデルでしか使えない機能だったり、一部の地域限定だったり、あるいはヘビーユーザー向けの高度な機能だったりと、一般的なユーザーの「普段使い」にはあまり響かない内容が中心なんですよね。
一方で、iOS 18系は非常に安定しており、セキュリティアップデートも継続的に提供されてきました。つまり「18のままで困らない」「周囲が問題を報告し始めてから考えればいい」という”アップデートしない自由”が、かつてないほど現実的な選択肢として成立しているわけです。
この傾向は、実はiOSだけの話ではありません。Android陣営を見ても、主要メーカーのフラッグシップ級では、かつてのような深刻なOS断片化は改善され、長期アップデート保証が当たり前になりつつあります。モバイルOS全体として「すぐに最新バージョンへ移行しなくても困らない」という空気が強まっており、iOS 26の「鈍さ」は、そうした大きな流れの一部とも捉えられるでしょう。
Appleのポリシーとユーザー心理のギャップ
一方、Apple側の対応は従来通りです。古いiOSは順次署名が停止され、事実上iOS 26系への移行が誘導されています。これは、過去のiOSでも新バージョン公開後に旧版の署名が止められてきたのと同じパターンであり、Appleにとっては「最新のセキュリティパッチを含むバージョンに集約したい」という、いつものポリシーに沿った動きに過ぎません。
しかし今回に限っては、ユーザー側の反応が明らかに違います。UI刷新への不安や拒否感、パフォーマンスやバッテリーへの懸念、そして決定打となる新機能の乏しさ――これらが重なった結果、「Appleはいつも通り最新へ誘導しているのに、ユーザー側の足取りは明らかに重くなっている」というズレが、かつてないほど可視化されているんです。
このギャップは、単なる一時的な現象なのか、それともモバイルOSアップデートに対するユーザーの意識が構造的に変化しつつあることの表れなのか。iOS 26の今後の普及曲線が、その答えを示してくれるんじゃないかと思います。
まとめ:iOS 26は「嫌われている」のか、それとも「慎重になった」だけか
ここまで見てきた通り、iOS 26の普及状況を示す数字には確かにバラつきがあります。しかし少なくとも、「いつものiOSほど無条件に歓迎されてはいない」という事実は、複数のデータソースが共通して示唆しています。
Liquid Glassは、iOSの歴史の中でも最も大胆なデザイン変更のひとつです。その是非をユーザーがどう捉えるかは、今後数年のiOSの方向性を占う試金石になりそうです。
Appleがこのまま Liquid Glassを推し進めるのか、それともユーザーの反応を受けて軌道修正するのか――iOS 26.3以降のアップデート、そして来年のiOS 27で、その答えが見えてくるような気がします。

