メーカー製PCを選ぶとき、同じスペックでも「Windows 11 Home」と「Windows 11 Pro」で数千円の差額がありますよね。この差額を「たかが数千円」と考えるか、「今は節約したい」と考えるかで、後々の出費が大きく変わってきます。
実は、Homeモデルを買った後にProへアップグレードしようとすると、約1万3800円のコストがかかります。つまり、「今ケチるか、先に保険をかけるか」という選択になるわけです。
Windows 11の最新バージョン25H2が自動展開されるようになった今、アップデート周りのトラブルも増えています。こうした背景を踏まえながら、HomeとProのどちらを選ぶべきか、実用的な視点で整理していきましょう。
Windows 11は「勝手に変わる」時代に――25H2自動展開の現実
最近のWindows 11アップデートでは、気づいたら大型アップデートが適用されていたという経験をした方も多いのではないでしょうか。特に2024年後半からは、24H2や25H2といったバージョンが「有効化パッケージ」という形で展開され、機械学習ベースで自動的に配信されるケースが増えています。
これまでは「アップデートを手動で管理する」という選択肢もありましたが、現在のWindowsは基本的に「自動更新が前提」の設計になっています。もちろん、HomeでもProでも完全にアップデートから逃げることはできません。
ただし、アップデートのタイミングや適用方法について、ある程度コントロールする余地を残しておきたいなら、OSの選択が重要になってきます。トラブル事例も散見される中で、「様子見してから適用したい」というニーズは決して少なくないはずです。
購入時の差額は小さいが、後からのアップグレードは約1.4万円という現実
メーカー直販サイトや家電量販店のPCモデルを見てみると、同じCPU・メモリ・SSD構成で「OS(HomeとPro)だけが異なる」場合、価格差は5,000円から1万円程度に収まっているケースがほとんどです。たとえば、Core i5プロセッサーに16GBメモリ、512GB SSDという標準的な構成で比較すると、この程度の差額になります。
一方で、Home搭載モデルを購入した後にProへアップグレードしようとすると、Microsoftストアでライセンスを購入する必要があり、その費用は約1万3800円かかってしまいます。
つまり、購入時点での「+数千円」をケチって後で欲しくなると、「数千円の差額」では済まなくなります。HomeかProかという選択は、単なる機能の違いだけでなく、「今払う少額 vs 後から払う高額」という時間差コストの問題でもあるわけですね。
特に、PCを長く使うつもりがある方や、将来的に仕事用途が増える可能性がある方は、このコスト構造を頭に入れておく必要があります。
アップデート・トラブル回避に直結するPro機能
ProとHomeの機能差については、さまざまな比較記事が存在しますが、まずは「アップデートトラブルを避ける」という視点で機能を整理します。
機能更新・品質更新の延期設定が柔軟
Proエディションでは、機能更新プログラム(大型アップデート)や品質更新プログラム(月例パッチ)の適用タイミングを、より細かく設定できます。Homeでも一時停止はできますが、Proの方が様子見期間を取りやすく、トラブル情報を確認してから適用するという選択肢が広がるんです。
リモートデスクトップのホスト機能
Homeエディションではリモートデスクトップの「接続先」になることができませんが、Proなら可能になります。トラブルが発生したとき、外出先や別のPCから遠隔で状態確認や設定変更ができるため、対処のしやすさが格段に向上します。
BitLockerによる暗号化機能
BitLockerは、ドライブ全体を暗号化することで、PCの盗難や紛失時にデータを保護する機能です。企業や組織で機密情報を扱う場合には重要な機能と言えます。
ただし、個人利用ではパフォーマンス低下やデータロックのリスクなど、注意すべき点も多いのが実情です。BitLockerのデメリットや無効化方法については、以下の記事で詳しく解説していますので、導入を検討される方は併せてご確認ください。
重要なのは、Proは「アップデートを永遠に止める魔法」ではないという点です。あくまで「様子見してから適用する余地」と「何かあったときの対処のしやすさ」を数千円で買うイメージと考えてください。
Proだけで使える重要機能
アップデート対策以外にも、Proエディションには見逃せない機能がいくつかあります。現時点では必要なくても、将来的に「あれば便利」という状況が出てくる可能性も考慮しておく価値があるでしょう。
Hyper-V(仮想環境)
Hyper-Vは、Windows上で仮想マシンを動かせる機能です。たとえば、新しいソフトウェアを試す前にテスト環境で動作確認したり、古いバージョンのWindowsやLinuxを動かしたりできます。古いWindowsでしか使えないアプリを使いたい人や、開発やテストを行う人にとっては必須の機能です。
グループポリシーエディター
Windowsの細かな設定を変更できる強力なツールです。通常の設定画面では変更できない項目にアクセスでき、PCの動作を細かくカスタマイズできます。上級者向けの機能ですが、トラブルシューティングの際にも役立ちます。
ドメイン参加
企業や組織のネットワーク(Active Directoryドメイン)に参加できる機能です。会社のPCとして使う場合や、将来的に小規模オフィスのネットワーク管理が必要になる可能性がある方には重要でしょう。
これらの機能は、使わない人にとっては全く不要ですが、必要になったときに「Homeでは使えない」と気づくと、前述の約1万4000円の追加出費が発生してしまうわけです。
こういう人はHomeで十分:差額は他に投資しよう
すべての人にProが必要なわけではありません。次のような使い方をしている方は、Homeエディションで十分な可能性が高いです。
PCは1台のみで、用途はブラウジング、動画視聴、Office作業、軽いゲームが中心という方なら、Homeの機能で事足ります。在宅勤務やリモートデスクトップによる業務利用がなく、仕事は会社のPCやクラウド環境で完結しているケースも同様です。
また、アップデートで多少トラブルがあっても、「最悪クリーンインストールすればいい」くらいの余裕や知識がある方も、Homeで問題ないでしょう。
こうしたユーザーにとっては、Homeでも「更新の一時停止」機能を活用し、バックアップを徹底し、アップデート情報を確認してから再起動するという運用で、現実的なラインでリスクを下げられます。
むしろ、数千円の差額を購入時のスペックカスタマイズ(メモリやストレージ容量のアップグレード)、外付けバックアップドライブの購入など、体感と安全性に直結する部分に振った方がリターンは大きいはずです。
こういう人はProの差額を「保険」として先に払う価値がある
一方で、次の内容に1つでも当てはまる方は、Proを前向きに検討する価値があります。
- 自宅PCが仕事兼用で、アップデートトラブルによる数時間〜半日のダウンが収入や納期に響く
- 家族や小規模事務所の複数台PCを管理していて、全台一斉トラブルだけは避けたい
- 将来的にリモートデスクトップで自宅PCに接続したい、外出先からメインPCを操作したいニーズがある
- 暗号化や企業向け機能を使う可能性があり、仕事用途が増えるかもしれない
こうした状況では、「今の+数千円」でProを選んでおけば、将来そうしたニーズが出てきたときに「約1万4000円の出費」を避けられます。長く使う1台、仕事にも使う1台なら、この差額を「将来の選択肢を残す保険料」と考えるのは合理的な判断ですよね。
特に、在宅ワークが増えている現在、プライベートと仕事の境界が曖昧になりがちです。今は完全に趣味用途でも、数年後には状況が変わる可能性を考慮に入れておくのも悪くありません。
まとめ:数千円と1.4万円、どちらを選ぶか?
ここまでの内容を踏まえて、次の3つを確認してみてください。
1つ目は、25H2のような大型アップデートを「いつ・どう受けるか」を、どこまで自分でコントロールしたいかです。完全に任せても構わないのか、それとも様子見期間が欲しいのか。
2つ目は、トラブルが起きたとき、自力やリモートでどれだけ対処するつもりがあるかです。自分で何とかできる自信があるのか、それともサポートに頼る前提なのか。
3つ目は、Homeで足りなくなる可能性がどれくらいあり、そのとき「約1万4000円」を払う覚悟があるかです。将来の自分にその出費を強いることになっても大丈夫なのか。
迷っているなら、「今の+数千円で将来の選択肢を買う」のか、「割り切ってHome+バックアップ徹底で行く」のかを、この視点で決めてもらえればOKです。
Windows 11の25H2時代は、「アップデートとどう付き合うか」が重要なテーマです。Windows Updateのトラブルは深刻ですからね(Microsoftには本当にもっとしっかりしてほしいものです)。
メーカー製PCのHome/Pro選びで悩んでいる方にとって、どちらを選ぶかの判断材料になればと思います。


