「昨日知人と話していた商品の広告が、今日のスマホに表示されてびっくりした」。そんな経験はありませんか?まるでスマホが盗み聞きしているかのような現象に、不安を感じている人が多いようです。
そこで、会話内容と広告表示の関係について、実際の仕組みや対策方法まで詳しく解説していきます。このカラクリを知って、安心してスマホを使えるようになりましょう。
実際のところ、会話は広告に使われているの?
まず結論から言うと、一般的には会話の内容が直接広告に使われることはほとんどありません。しかし、100%安全とは言い切れないのが現実です。
広告業界の専門家によると、Googleをはじめとした主要な広告プラットフォームに「普段の会話をスマートフォンが認識してターゲティング広告に利用する」機能は、少なくとも公式には備わっていないとのことです。
音声による広告ターゲティングが一般的でないのには、いくつか理由があります。
- プライバシー問題: 会話を盗聴するような機能があれば企業の存続が危うくなる
- 技術的な課題: 音声データの収集・通信・解析は現在の技術では負荷が大きすぎる
- 法的リスク: プライバシー保護の規制が強まる中、そんなリスクを犯す企業は少ない
「会話した直後に関連広告が出る」本当の理由
では、なぜ会話の直後に関連広告が表示されるように感じるのでしょうか?広告業界の視点から、4つの主な要因を見てみましょう。
- 会話後に検索をしている
最も多いパターンが事前に関連キーワードを検索しているケースです。検索キーワードに基づいて広告を配信する機能は、GoogleやYahoo!などの主要プラットフォームに標準装備されています。音声検索を使った場合も同様に、その内容が広告配信の対象となります。 - LINEやメッセンジャーでURLを共有している
会話の流れで友人がLINEでURLを送ってくれたり、自分から送ったりすることはよくあります。そのURLにアクセスすると、「リターゲティング広告(サイト訪問者向けの再ターゲティング広告)」の対象となります。
リターゲティング広告とは、一度サイトを訪問した人に対して関連する広告を表示する仕組みです。サイト訪問直後に表示されることが多いので、「検索していないのに広告が出てきた!」と感じる人が多いのはこのためです。 - SNSで関連投稿を閲覧・リアクションしている
会話をきっかけにInstagramで関連する投稿を見て、いいねやコメント、保存をしていた場合も要注意です。こうした行動は「その分野に興味がある人」として認識され、関連広告の配信対象となります。 - もともと広告配信の対象だった
実は会話とは無関係に、あなたがもともと「その広告が配信されうる属性」だった可能性もあります。
自分がどんな属性に分類されているか確認してみよう
Googleでは、自分がどのような属性として認識されているかを確認できます。マイアドセンターにアクセスしてみてください。ここでは主に次の情報を基に、ユーザーの興味関心が推定されています。
- 検索行動: 普段どんなキーワードで検索しているか
- ウェブサイトの閲覧履歴: どのようなサイトを見ているか
- YouTubeの視聴履歴: どんな動画を見ているか
この情報を見ると、「確かにこの分野に興味があるから、関連広告が出ても不思議じゃない」と納得できるかもしれません。

実際に音声データが使われた事例もある
ただし、アメリカでは音声データが実際に広告に使われていた事例も存在します。2024年に報道された事例では、一部の広告企業が「アクティブリスニング」という技術を使って、スマホやスマートスピーカーから収集した会話データを広告ターゲティングに活用していたことが明らかになりました。
特に問題になったのが「Cox Media Group(CMG)」という企業のケースです。この会社は、ユーザーの許可なく音声データを収集し、それを基に広告配信を行っていたと報じられました。
幸い、日本国内でこのような大規模な音声監視による広告配信が報告された事例は現在のところありません。しかし、グローバル企業のサービスを使っている以上、完全に無関係とは言えないのが実情です。
スマホが常に音声を監視しているわけではない
「でも実際のところ、スマホって常に私たちの会話を聞いているんじゃないの?」と心配になる方も多いでしょう。実は、技術的に見ても、スマホが24時間音声を監視し続けることは現実的ではありません。
音声処理が行われるタイミング
多くの人が誤解しているのですが、スマホは常時すべての会話を監視しているわけではありません。音声が処理されるのは主に次のタイミングです。
- 音声アシスタントがオンのとき:SiriやGemini(旧Googleアシスタント)、アレクサなど
- 特定のアプリがマイクにアクセスしているとき:通話アプリや録音アプリなど
- 音声アシスタントの起動ワードを話しかけたとき:「Hey Siri」「OK Google」「アレクサ」などの起動ワードを認識した場合
バッテリーの観点からも現実的ではない
もしスマホが24時間音声を録音・解析していたら、バッテリーはあっという間に消耗してしまいます。現在のスマホの性能を考えると、常時音声監視は技術的にも現実的ではありません。
自分のプライバシーを守る方法
それでも「盗み聞きされている」と気になる人はいるでしょう。その場合は、次の対策を試してみてください。どれも簡単な設定変更で実現できますよ。
マイクが使われているかを確認する
マイクが現在使われているかどうかを知るには、次の場所を確認します。通話やボイスメモなど、明らかにマイクを使っているとき以外にこれらの表示が出ていたら要注意です。
iPhoneの場合
iPhoneでは、Dynamic Islandまたは画面右上にオレンジ色の点が表示されているときは、何かのアプリがマイクを使用中です。

Androidの場合
Android 12以降では、アプリがマイクを使っていると、画面右上に緑色の点が表示されます。これが表示されていたら、マイクが使われています。

最近マイクを使ったアプリを確認する
最近マイクを使ったアプリはいつでも確認できます。
iPhoneの場合
iPhoneでは、コントロールセンターの上部に、権限が必要な機能(マイクや位置情報など)マイクを使ったアプリが表示されます。つまり、ここを確認すれば、最近マイクを使ったアプリがわかるというわけです。なお、「>」をタップすると、使用した権限をすべて確認できます。


Androidの場合
Androidの場合は設定アプリで確認できます。設定アプリの検索ボックスに「マイク」と入力。検索結果に表示された「マイク(権限マネージャ)」をタップします。マイクを利用できるアプリの一覧が表示されます。最近使用したアプリには、その時刻が表示されています。


マイクへのアクセスを制限する
明らかにマイクを使わないのに、マイクが利用できるようになっているアプリは、マイクへのアクセス権限をオフにしておきましょう。
iPhoneの場合
設定アプリで「プライバシーとセキュリティ」→「マイク」を開きます。マイクへアクセスできるアプリ一覧が表示されるので、不要なアプリをオフにします。


Androidの場合
上記の手順でマイクの画面を表示したら、不要なアプリをタップします。表示された画面で「許可しない」を選択します。


心理的な要因も関係している
技術的な仕組みを理解した上で、もう一つ考慮すべきなのが「人間の心理」です。「会話した内容の広告が出てくる」と感じる背景には、実は心理的なメカニズムも働いています。
記憶に残りやすい現象
一度「会話を聞かれているかも」と気にしてしまうと、関連する広告が表示された時に「やっぱり!」と強く印象に残りやすくなります。これは心理学でいう「確証バイアス」の一種かもしれません。
逆に、会話と無関係な広告については特に記憶に残らないため、「会話した内容の広告ばかり出てくる」と感じてしまうのですね。
広告の精度が向上している
現在の広告技術は非常に高精度になっており、ユーザーの興味関心を的確に捉えた広告が配信されます。その精度の高さが、「まるで会話を聞かれているかのような」感覚を生み出している面もあるでしょう。
まとめ:正しい知識でバランスよくスマホを使おう
ここまでさまざまな角度から「会話と広告の関係」について確認してきましたが、大切なのは、恐怖に駆られることなく、冷静で現実的な対応を取ることです。要点をまとめると次の通りです。
- 基本的には会話後の行動や元々の属性が原因
- 検索、URL共有、SNS閲覧などが広告配信のトリガーになる
- 海外では実際に音声データが使われた事例もある
- スマホが常時音声を監視しているわけではない
- マイク使用状況を確認し、適切な設定で自分のプライバシーを守れる
前述したように、会話内容が直接広告に使われることは現在のところ稀なケースです。しかし、プライバシーに対する意識を持つことは非常に大切です。
完全にシャットアウトしてしまうと便利な機能も使えなくなってしまうので、自分にとって必要な機能とプライバシー保護のバランスを考えて設定するのがおすすめです。
完璧な対策は難しいかもしれませんが、正しい知識を持って適切な設定をすることで、安心してスマホを使えるはずです。気になる設定があれば、ぜひ一度見直してみてください。