2025年3月31日、GoogleはAndroid 12および12Lに対するセキュリティパッチの提供を正式に終了しました。これにより、今後Android12を搭載したAndroidスマホが危険に晒される可能性が高まります。しかし、「サポート終了」と言われても、具体的にどのような影響があるのかピンとこない方も多いかもしれません。そこで、どのような影響があり、どのような対策を取るべきかについて、解説していきます。
Android 12/12Lのサポート終了とは?
Android 12は2021年10月に、その改良版であるAndroid 12L(Large screen向け)は2022年3月に正式リリースされました。これまでGoogleは定期的にセキュリティパッチを提供してきましたが、2025年3月の更新を最後に、これらのバージョンへの公式サポートが終了となりました。
つまり、これからはAndroid 12/12Lを搭載したデバイスに対して、新たに発見された脆弱性を修正するパッチが提供されなくなるのです。スマホの基本機能は引き続き使えますが、セキュリティ面では徐々に時代遅れとなっていきます。
ちなみに、Androidのサポート期間は一般的に次のようになっています。
バージョン | 発売時期 | セキュリティサポート終了 | サポート期間 |
---|---|---|---|
Android 12/12L | 2021年10月/2022年3月 | 2025年3月 | 約3.5年 |
Android 13 | 2022年8月 | 2026年予定 | 約4年 |
Android 14 | 2023年10月 | 2027年予定 | 約4年 |
Android 15 | 2024年10月 | 2028年予定 | 約4年 |
最近のGoogleやSamsungの最新機種では、最大7年間のセキュリティサポートを約束するモデルも登場しています。長く安全に使いたい方は、こうした長期サポート対応モデルを選ぶのも一つの方法です。
なぜセキュリティパッチが重要なのか?
「別にパッチがなくても普通に使えるじゃない」と思われるかもしれません。実際、セキュリティパッチがなくてもアプリは起動しますし、電話もメールも使えます。しかし、セキュリティパッチがないことによるリスクが数多くあります。
セキュリティパッチの役割
セキュリティパッチは、悪意ある攻撃者が悪用する可能性のあるシステムの穴(脆弱性)を塞ぐための更新プログラムです。スマホのセキュリティ対策は、家の鍵を定期的に強化するようなものと考えるとわかりやすいでしょう。
セキュリティパッチは、次のような脆弱性を修正します。
- リモートコード実行:遠隔からデバイスを操作される危険性
- 権限昇格:アプリが不正に管理者権限を取得する問題
- 情報漏洩:個人データが外部に送信される脆弱性
- システムクラッシュ:端末を強制的にフリーズさせる攻撃
サポート終了によるリスク
Android 12/12Lのセキュリティパッチサポート終了により、次のようなリスクが高まります。
- 新たな脆弱性が修正されずハッキングのリスク増加
これから発見される新しいセキュリティホールは、もう修正されません。しかし、サポート終了後も発見される脆弱性は公表されます。悪意ある攻撃者はこの情報を利用して、セキュリティが更新されない古いデバイスを標的にします。つまり、時間が経つほど、リスクが高まります。 - 個人情報の漏洩リスク
銀行アプリ、決済情報、SNSアカウント、写真、位置情報など、スマホには私たちの重要な個人情報が詰まっています。セキュリティの弱いデバイスはこれらの情報を盗まれる危険性が高まります。 - 最新アプリとの互換性低下
サポート終了から時間が経つにつれ、新しいアプリがインストールできなくなったり、既存のアプリが正常に動作しなくなったりする可能性も高まります。
影響を受けるデバイス
2025年時点で、約12.5%のAndroidデバイスがまだAndroid 12/12Lを使用しているという統計があります。これは世界中で約370万台ものデバイスに相当します。主に次のような機種が、影響を受けます。
- Google Pixel 3aシリーズ、4シリーズの一部
- Samsung Galaxy S10シリーズ、A52など
- OnePlus 7シリーズ、8シリーズの一部
- OPPO、Xiaomi、motorola、Xperiaなどの2020-2021年モデルの一部
お使いのデバイスがAndroid 12/12Lを搭載しているかどうかは、設定アプリで「端末情報」(または「デバイス情報」)をタップし、「Androidバージョン」を確認します。ここに表示されている数字が「12」であれば、今回のサポート終了対象となります。


なお、一部のメーカーでは、Googleの公式サポート終了後も独自にセキュリティパッチを提供する場合があります。特にSamsungやXiaomiなどの大手メーカーは、独自のセキュリティポリシーを持っていることがあるため、お使いのデバイスのメーカーサイトで最新情報を確認するのがおすすめです。
ただし、メーカー独自のサポートも永久に続くわけではなく、いずれは終了します。根本的な解決にはならない点は注意が必要です。
必要な対策
セキュリティパッチのサポート終了に伴い、次のような対策が必要です。
OSのアップグレード
最も理想的な対策は、お使いのデバイスをAndroid 13以降にアップグレードすることです。設定アプリで「システム」→「システムアップデート」を開き、Android 13以降へアップグレードできるのであれば、速やかにアップグレードするようにしましょう。
ただし、すべてのデバイスがアップグレード可能というわけではありません。メーカーがお使いの機種に最新バージョンを提供していない場合は、アップグレードできません。
新しいデバイスへ買い換える
OSのアップグレードができない場合、最も確実な対策は新しいデバイスへの買い替えです。データ移行も心配かもしれませんが、最近のAndroidは「クイックスタート」機能で簡単に新旧デバイス間でデータを転送できます。また、Google アカウントを使っていれば、写真やアプリなどの多くは自動でバックアップされているので、比較的容易に機種変が可能です。ただし、LINEやゲームアプリなど、一部のアプリはデータ移行に注意が必要なものがあるので、事前に移行方法はしっかり確認しておいた方がいいでしょう。
セキュリティアプリの活用
新しいデバイスへの移行がすぐにはできない場合、一時的な対策としてセキュリティアプリを導入することも対策の一つです。ただし、これはあくまで「応急処置」であり、OSレベルの脆弱性は、アプリだけでは完全に防げず、根本的な解決にはなりません。
また、Google Playストアにはさまざまなセキュリティアプリがありますが、少なからずインチキなアプリが提供されています。中には、情報を盗むような悪質なものもあるので、個人的にはあまりお勧めできません。どうしても導入する場合は、Norton、Avastなど信頼性の高い実績あるセキュリティアプリを選ぶようにしましょう。
買い替えを検討する際のポイント
多くの人にとって、新しいデバイスへの移行が最も現実的な対策だと思います。現在の主流は、Android 14や15を搭載したモデルですので、次のポイントをチェックしながら買い換えを検討するいいでしょう。
移行のタイミング
「今すぐ買い替えるべき?」と疑問に思われるかもしれません。セキュリティリスクはサポート終了直後から急激に高まるわけではありませんが、時間の経過とともに徐々に高まっていきます。
一般的には使い方によって、次のようにタイミングが変わってきます。
- 重要な金融アプリを頻繁に使用する方:できるだけ早い買い替えを検討
- 通常の利用にとどまる方:半年から1年以内の買い替えを計画
- 一時的に使用する予備機としてのみ使う方:リスクを理解した上で使用継続も可能
いずれにせよ、無期限に使い続けることはセキュリティ上おすすめできません。
長期セキュリティサポートの確認
最近は長期サポートを謳うスマートフォンが増えています。代表的なモデルに次のようなものがあります。
- Google Pixel 9シリーズ:7年間のセキュリティアップデートを保証
- Samsung Galaxy S24シリーズ:7年間のOSとセキュリティアップデートを提供
- iPhone:一般的に5〜6年のサポート期間
スマホを長く安心して使いたい方は、こうした長期サポート対応モデルを選ぶと良いでしょう。
中古スマホを選ぶ場合
予算を抑えたい方は、中古スマートフォンの購入も一つの選択肢です。ただし、中古スマホを選ぶ際は、セキュリティの観点から特に以下のポイントに注意が必要です:
- OSバージョンとセキュリティパッチの確認
購入前に、そのモデルが現在どのAndroidバージョンまでアップデートできるか確認しましょう。Android 13以上にアップデート可能かつ、今後少なくとも2年以上のセキュリティサポートが残っているモデルを選ぶことをおすすめします。「メーカー名 + 機種名 + サポート期間」で検索すると、大抵の情報は見つかります。 - 製造年数をチェック
同じモデルでも、製造時期によってセキュリティパッチの対応状況が異なることがあります。なるべく新しく製造された個体を選びましょう。IMEI番号や製造番号から製造時期を確認できる場合もあります。 - バッテリー状態と全体的な劣化度
中古の場合、特にバッテリーの劣化が気になるポイントです。バッテリー健全性が80%以上のものを選ぶと良いでしょう。また、画面焼け、端子の劣化なども確認しておくことをおすすめします。 - 初期化の確認と自分での再セットアップ
購入後は必ず自分で初期化(ファクトリーリセット)を行い、最新のセキュリティパッチを適用しましょう。これにより、前のユーザーが残したマルウェアなどのリスクを排除できます。
中古スマホのメリットは価格の安さですが、セキュリティサポートが短くなるデメリットもあります。「安く済んだけれど1年後にまた買い替えが必要になった」といったことを避けるためにも、サポート期間の長さをしっかり確認することが重要です。
特にPixelシリーズやGalaxyの上位モデルなど、元々長期サポートが約束されている機種の1〜2年落ちを選ぶのがコストパフォーマンスの面でもおすすめです。
また、中古スマホを購入するなら、個人間取引よりも、ニコスマのような中古スマホ専門店や大手家電量販店の中古コーナーなど、ある程度の品質保証がついているところから購入した方がいいでしょう。これらの店舗では初期化や動作チェックが適切に行われていることが多く安心です。
まとめ:安心・安全なスマホライフのために
Android 12/12Lのセキュリティパッチサポート終了は、多くのユーザーにとって重要な転換点です。安心してスマートフォンを使い続けるためには、今後の対策を検討する必要があります。
- 現状を確認する:まずは自分のデバイスのAndroidバージョンを確認する
- 選択肢を検討する:OSアップグレード、新規デバイス購入、一時的なセキュリティ対策のいずれかを選ぶ
- 計画を立てる:特に機種変する場合は、コストやデータ移行を考慮して新しいデバイスを選ぶ
スマートフォンは単なる通信ツールではなく、個人情報や金融情報が詰まった重要なデバイスです。セキュリティをおろそかにすると、思わぬトラブルにつながる可能性があります。
「セキュリティに完全は無い」と言われるように、どんな対策も100%安全というわけではありません。しかし、適切な対策を取ることで、リスクを大幅に減らすことができます。Android 12以下のスマホやタブレットを使っている場合は、速やかに機種変などの対策をした方がいいでしょう。