最近、XなどのSNSで「YouTubeに怪しいメガネ広告が出てくる」という注意喚起のポストを目にする機会が増えています。
その広告では「福井県鯖江市の老舗メガネ工房」「百年眼鏡工房」などを名乗り、感動的なストーリーと破格の値段でメガネを販売しているのですが、実態は鯖江とは無関係な海外(中国・香港)系の通販業者による「なんちゃって日本ブランド」である可能性が高いようです。まぁ、「またあの国か」という感じですね。
実際に注文した人からは「届いたのは全然違う安価なメガネだった」「中国の会社から発送された」といったトラブル報告も出ています。そこで、SNSで急増している鯖江メガネ詐欺広告の実態と、騙されないための具体的なチェックポイントを解説します。
SNSで急増中:「鯖江の百年眼鏡工房」を名乗るYouTube広告とは
XなどのSNSで共有されている詐欺広告には、いくつか共通した特徴があります。
広告のコピーは「福井県鯖江市の百年眼鏡工」「メガネの聖地・鯖江から直送」「検眼不要でピント自動調整」といった、いかにも日本の職人技を感じさせるフレーズが並んでいます。
さらに、震災支援や在庫処分といった演出を装っているのも特徴。「能登半島地震の復興支援」「工房閉鎖のため原価割れの特別価格」「本数限定」など、感情に訴えかけるストーリーと大幅値引きで購買意欲を煽るパターンが目立ちます。
SNSに投稿されている被害報告を見ると、「注文したら全然違うものが届いた」「明らかに中国製の安物だった」「連絡先に問い合わせても返信がない」といった体験談が複数投稿されています。YouTube広告という多くの人が視聴するプラットフォームを経由しているため、つい信じてしまう人が後を絶たないようです。
鯖江市と本物の鯖江メガネメーカーが出している公式注意喚起
この問題に対して、鯖江市は公式サイトで明確な注意喚起を公開しています。「鯖江市の技術」などをうたいながら実際は無関係な商品を販売するオンライン広告に対して、市民や消費者に注意を呼びかけています。
また、鯖江の実在メーカーも独自に警告を発しています。例えば、折りたたみ式老眼鏡で知られるPaperglassは、公式サイトで「当社と関係のない動画広告・通販サイトが出回っている」と明確に否定する声明を掲載しました。
報道でも「ピント自動調整の老眼鏡を鯖江産と偽った広告」による実被害が取り上げられており、自治体と企業が連携して消費者保護に乗り出している状況です。本物の鯖江メガネメーカーにとっても、ブランドイメージを傷つけられる深刻な問題になっているんですね。
背後にいる中国・香港系「なんちゃって日本ブランド」ビジネス
SNS上の調査によると、これらの広告主として「HONGKONG GOBLIN DIGITAL TECHNOLOGY CO., LIMITED」といった中国・香港系の業者名が指摘されています。興味深いのは、同じ業者が使い回している可能性が高いテンプレートの存在です。
鯖江メガネ(百年眼鏡工・百年職人眼鏡)だけでなく、次のような「日本の伝統」を騙る商品が同じパターンで展開されていることが報告されています。
- 南部鉄器のフライパン
- 日本製の高級調理器具
- 老舗の革製品・バッグ
- 伝統工芸品を謳う家電
これらの共通点は、実際には住所が中国・香港であること、企業情報が曖昧で信頼性に欠けること、そして注文サイトのドメインが短期間で次々と入れ替わることです。「福井県百年眼鏡工」「百年眼鏡工房」といった実在しない工房名のバリエーションを作り、検索逃れをしながら広告を打ち続けているわけです。
ビジネスモデルとしては、おおむね次のような構図になっていると見られます。日本の地域ブランドや伝統工芸の信頼性を無断で利用し、感動的なストーリーで購買意欲を刺激しつつ、実際には安価な製品を送りつけるという手法です。返金対応が難しく、泣き寝入りせざるを得なかったという声も少なくありません。
なぜYouTubeでここまで野放しなのか:広告システムの穴
ここまで被害が広がっているのに、なぜYouTubeはこうした詐欺的な広告を止められないのでしょうか。その背景には、プラットフォーム広告システムの構造的な問題があります。
YouTube広告は少額からでも出稿しやすく、審査体制も完全ではありません。法律事務所の解説記事によると、詐欺的な通販広告や投資詐欺広告が審査をすり抜け、トラブル相談が寄せられていると注意喚起されています。広告の内容が「日本の老舗メガネ工房」という一見正当なものであれば、自動審査では弾かれにくいんです。
さらに、課金額次第でリーチを一気に伸ばせるため、「派手なストーリー+激安価格」を打ち出す中国系業者にとって格好の舞台になっています。広告費をかければかけるほど多くの視聴者に届くシステムなので、詐欺業者が効率よく被害者を増やせる環境が整ってしまっているわけです。
この問題は、2025年に報道されたMetaの詐欺広告問題とも共通する構造を持っています。大手プラットフォームの広告が安全ではないことをユーザー側も認識しておく必要があります。
騙されないために確認すべきポイント
では、こうした詐欺広告に引っかからないためには、どんな点に注意すればいいのか?具体的なチェックポイントをまとめました。
広告を見たときの基本チェックリスト
YouTube広告で気になる商品を見つけたら、まず次の項目を確認してください。
1. 地名・工房名で検索する
広告に出てくる「○○市」「△△工房」といった固有名詞を検索してみましょう。本物であれば、自治体サイトや公式サイトが必ずヒットします。鯖江市の例でいえば、「百年眼鏡工房」で検索しても実在する企業は出てきません。
2. 特定商取引法の表示を確認する
通販サイトには、住所・電話番号・代表者名などを明記した「特定商取引法に基づく表記」が必須です。ここに中国・香港の住所が記載されていたり、日本語が不自然だったり、そもそも表記自体がない場合は要注意。
3. 過剰な性能・価格のうたい文句を疑う
「検眼不要で何でも見える」「一生モノの品質」「原価以下の特別価格」など、現実離れした表現が並んでいる場合は危険信号です。本物の職人製品は、適正価格で販売され、誇大広告はしません。
4. 決済方法をチェックする
決済ページが独自ドメインで、銀行振込や怪しいカード決済しか選べない場合は避けるべきです。正規の通販サイトなら、複数の大手決済サービスに対応しているはずですよね。
購入前の具体的な行動例
気になる商品があったときは、次のような手順で調べることをおすすめします。
手順1:検索で口コミを確認する
YouTube広告から直接購入せず、まず「商品名+注意」「商品名+詐欺」「商品名+評判」などで検索してください。被害報告や注意喚起が見つかることが多いです。
手順2:産地・自治体サイトを確認する
「鯖江市」「南部鉄器」など、地名や産地名が出てきたら、必ず自治体サイトや組合サイトもチェックしましょう。本物の産地ブランドには、必ず公式の情報源があります。
手順3:正規メーカーのサイトと比較する
正規の鯖江ブランド公式サイトと広告のサイトを見比べてみてください。ドメイン、デザイン、日本語の自然さ、企業情報の充実度など、明確な違いが見えてくるはずです。
時間をかけて調べるのは面倒に感じるかもしれませんが、数千円〜数万円の被害を避けるための投資と考えれば、決して無駄ではありません。
まとめ
鯖江メガネのケースは、詐欺業者にとって一つの成功モデルになってしまっています。「日本の伝統」「老舗」「職人」「震災支援」を組み合わせたこのテンプレートは、他のジャンルにも簡単に転用できるからです。
今後考えられるのは、日本酒、包丁、和牛、旅館、陶器、漆器といった、日本の伝統や地域ブランドを持つ商品への展開です。実際、南部鉄器のフライパンですでに同様の手口が報告されているように、このパターンはあらゆる「日本らしさ」を武器に使えてしまうんですよね。
これは、以前このブログで取り上げたフリマアプリでのAI偽画像を使った詐欺や、SNSのストーカーリスト詐欺、Metaの詐欺広告問題と同じ構造を持っています。つまり、「プラットフォーム任せにせず、ユーザー側が広告を疑う時代に入った」ということです。
特に「知らないブランド+感動的なストーリー+激安価格」の3点が揃ったら要注意です。本物の日本ブランドを応援するためにも、怪しい広告には引っかからないようにしましょう。
参考情報
- 鯖江市公式サイト:「鯖江市を騙る広告にご注意ください」
- 鯖江眼鏡協会:「【重要なお知らせ】鯖江市を騙る広告にご注意ください」
- Paperglass公式:「【注意喚起】当社と関係のないサイト・広告に関するご案内」
- FNNプライムオンライン:「“ピント自動調整の老眼鏡”鯖江産うたった偽広告に注意」

