PCを起動すると真っ先に重くなるのは、だいたいTeamsですよね。何もしていないのにメモリを大量消費して、会議が始まるとさらに動きが鈍くなる。「またか…」とため息をついた経験、誰にでもあるはずです。
「そろそろアップデートで軽くなるだろう」と期待しても、一向に改善されない。それどころか、アップデートのたびに新機能が追加されて、ますます重くなっていく気さえします。
そこで、なぜTeamsが重いのか、そしてなぜMicrosoftが本気で軽量化に取り組まないのかを整理していきたいと思います。これは「あなたのPCが非力だから」という話ではありません。Teamsというアプリの設計そのものに問題があるんです。
チャットアプリの皮をかぶった「ミニOfficeスイート」
まず理解しておきたいのは、Teamsは単なるチャットアプリではないということです。いや、正確に言えば「チャットアプリとして売っておきながら、実態はMicrosoft 365一式の窓口になっている」んですね。
チャット・会議・通話・ファイル共有・カレンダー・タスク管理──本来なら別々のアプリで済むはずの機能を、Teamsは全部抱え込んでいます。起動時にTeamsが行っているのは、チャットを開くだけではありません。「チーム情報」「チャネル」「過去のチャット履歴」「予定表」「共有ファイル」など、あらゆる情報をまとめて読み込みに行きます。
「ちょっとメッセージを確認したいだけなのに、なんでこんなに待たされるの?」と思ったことがある人は多いと思いますが、それは裏で相当な処理が走っているからです。一般的な軽量メッセンジャー(SlackやDiscordなど)とは根本設計がまったく異なります。
もちろん、多機能であることは悪いことではありません。でも問題は、「多機能」を理由に「重い」ことを正当化していることです。ユーザーが求めているのはシンプルなチャット機能なのに、使いもしない機能のために延々と待たされる──これがTeamsの重さの出発点です。
ウィンドウを閉じても、裏ではずっと働いている
「Teamsを閉じたのに、まだPCが重い」──この経験、ありますよね?実は、デスクトップ版Teamsはウィンドウを閉じても終了していません。バックグラウンドで通知・同期・通話準備などを続けているため、「閉じたつもり」でもメモリやCPUを使い続けます。
タスクマネージャーを開くとわかりますが、待機中でも数百MB〜1GB程度のRAMを占めています。これは、ただのチャットアプリと比べて明らかに異常な水準です。
「すぐに通知を受け取るため」「会議にすぐ参加できるようにするため」──Microsoftはこう説明しますが、ユーザーからすれば「使ってもいないアプリに、なぜそこまでリソースを取られなきゃいけないのか」という話ですよね。
もっと言えば、多くのユーザーは「常駐してほしい」と頼んだ覚えがないんです。勝手にスタートアップに登録されて、勝手にバックグラウンドで動き続けて、勝手にメモリを食い潰す。
常駐して働き続けるという設計自体は、技術的には理解できます。でも、その代償としてシステムリソースを常に消費し続けることを、ユーザーに強制するのは別問題。それに、完全終了するにはタスクトレイからの操作や設定変更が必要で、一般ユーザーにはかなり分かりにくい場所に追いやられています。
アプリの中にブラウザごと抱えた設計
現行のTeamsは、内部でEdgeベースの「WebView2」というエンジンを使っています。簡単に言えば、「アプリの中でブラウザを1つ起動したのに近い状態」で動いています。ブラウザを開いてメモリを食うのは当たり前ですが、それをデスクトップアプリの中に丸ごと抱え込んでいるわけですから、重くならないはずがありません。
Microsoftは「Web技術を使うメリット」を強調します。開発スピードが速い、機能追加がしやすい、Windows・Mac・Linuxなど複数のプラットフォームで同じコードを使い回せる──確かにそれは事実です。でも、それは完全に「開発者側の都合」です。
ユーザーからすれば、「開発が楽だから」という理由で重いアプリを押し付けられているだけですよね。Teamsと同じくWebView2を採用した他のアプリでも「メモリ使用量が大きい」「CPU負荷が高くなりがち」という報告が相次いでおり、これはTeamsだけの問題ではありません。Web技術ベースのアプリ全般に共通する構造的な弱点ではあります。
「クロスプラットフォーム対応のためには仕方ない」という部分もあると思います。しかし、SlackやDiscordも同じくElectron(Web技術ベース)を使っていますが、Teamsほど極端に重くは感じないという声は多いです。つまり、Web技術を使うこと自体が問題なのではなく、Microsoftの実装や設計の優先順位の付け方に問題があるのでしょう。
ブラウザベースの技術は便利な反面、ネイティブアプリに比べて動作が重くなりやすいという特性を持っています。それを承知の上で採用しているなら、せめてパフォーマンスの最適化に本気で取り組むべきですが、現状を見る限り、その姿勢は感じられません。
2026年の「通話分離」アップデートは何を変えるのか
2026年1〜2月にかけて、Windows版Teamsで通話機能を別プロセス(ms-teams_modulehost.exe)に切り出すアップデートが予定されていますが、これが「劇的な軽量化」をもたらすかというと、正直なところ期待しすぎない方がいいでしょう。
Microsoftが公式に案内している目的は「起動時間の短縮」「会議・通話の安定性向上」「リソース使用の最適化」です。これまでは1つのTeamsプロセスがチャットもUIも通話も全部抱えていたため、どこかで不具合があるとまとめて巻き込まれていました。それを役割別に分けるというわけですね。
確かに、「通話だけ落ちてチャットは生き残る」という構造は理想的に聞こえます。会議中にTeamsごとクラッシュして全てを失うよりは、通話プロセスだけ再起動すればいい方が明らかにマシですから。
しかし、プロセスが増える=必ず軽くなる、ではありません。例えて言うなら、「仕事を分担する」ことで動きは安定しやすくなりますが、全員分の給料(メモリ使用量)が必ず減るわけではありません。むしろ、プロセス間の通信オーバーヘッドが増える可能性すらあります。
なぜ「根本的に軽いTeams」は期待しづらいのか
ゴテゴテと重くなっていくTeams、昔はもっと軽かったのに、なぜ軽くできないのか?答えはシンプルです。Microsoftにとって、Teamsを軽くすることは優先順位が高くないからです。
TeamsはMicrosoft 365の中核として、頻繁な機能追加・改修・多プラットフォーム展開が求められています。新機能のリリース速度、クロスプラットフォーム対応、サードパーティとの統合──Microsoftが重視しているのはこういった「開発の都合」であって、エンドユーザーの「PCが重い」という悲鳴ではないわけです。
WebView2+Web技術による共通基盤は、Microsoft側から見れば非常に都合が良いシステムです。一度コードを書けば、Windows・Mac・Linuxで動きますから。でも、ユーザー側から見れば「ブラウザを丸ごと抱えた重いアプリ」でしかありません。
Windows用のネイティブ版を作り直すことは、技術的には可能です。しかし、それには莫大な開発コストと時間がかかります。しかも、変更後に既存の機能やサードパーティ製アプリとの互換性を保証するのも大変な作業になります。
要するに、Microsoftは「技術的にやれない」わけではなく、「コストや優先順位の観点からやる選択をしていない」ように見えますね。
Microsoftが公式に言っている「リソース使用の最適化」「会議体験の向上」という言葉の裏を読めば、「根本的な軽量化はしないけど、できる範囲で改善します」という意味です。ユーザーとしては「魔法の軽量化パッチ」を待つより、「Microsoftはこれ以上軽くする気がない」と割り切ってPC側や運用を見直す方が、よほど現実的だと言えます。
一般ユーザーが今できる現実的な対策
「Microsoftが悪い」と分かっても、実際に困っているのは私たちユーザーですよね。会社で使わざるを得ない以上、文句を言っているだけでは何も解決しません。ここからは、Teamsの重さを前提として、少しでも快適に使うための現実的な対策を紹介します。
アプリ側でできる対処
まず、スタートアップの自動起動を見直してみてください。常に立ち上がっている必要がない場合は、必要な時だけ起動する設定にするだけでも体感速度が変わります。
また、使わないチームやチャネルを整理することも効果的です。Teamsは参加しているチームの情報を定期的に同期しているので、不要なものを退出するだけで負荷が軽減されます。
不具合が起きた時は、キャッシュクリアや再インストールといった基本対策も有効です。Teams のキャッシュは自動的に削除されないため、定期的にクリアすることで動作が改善することがあります。
PC側でできる対処
メモリ8GBの環境では、Teams+ブラウザ+Officeアプリを同時に使うと簡単に逼迫してしまいます。快適に使いたいなら、16GB以上のメモリを搭載するのが現実的な目安でしょう。
まだHDDを使っている方は、SSDへの換装を検討してみてください。これだけで起動速度や全体的な体感速度がかなり変わります。
代替的な使い方
デスクトップ版ではなく、ブラウザ版Teamsを使うという選択肢もあります。環境によっては、ブラウザ版の方がメモリ消費が安定しやすいケースがあります。
すでにブラウザを開いているなら、わざわざデスクトップアプリを立ち上げるより、ブラウザ内でTeamsを使った方が全体的なリソース管理がシンプルになることもあります。
まとめ:Teamsと現実的に付き合う
Teamsが重いのはバグではなく「そういう設計のアプリ」だからです。多機能を詰め込み、ブラウザエンジンを丸ごと内蔵し、バックグラウンドで常駐し続ける──これらすべてが、重さの原因になっています。
2026年の通話分離アップデートで少しはマシになる可能性はありますが、「劇的に軽いTeams」を想像してしまうと、またガッカリするだけです。
「業務で使わざるを得ないから我慢するしかない」──多くのユーザーがこう感じているはずです。でも、せめて自衛はできます。TeamsにPCを合わせるのか(メモリ増設・SSD換装)、運用を見直すのか(スタートアップ無効化・ブラウザ版への移行)──エンドユーザー側の選択も、そろそろ本気で考える時期に来ています。
「重い」という前提で対策を打つことが、今のところ最も現実的なアプローチです。 Microsoftの改善を待っていても、状況が劇的に変わることはないでしょうから。

