2025年10月21日、モバイルバッテリーやBluetoothスピーカーで人気のアンカー・ジャパンが、経済産業省から行政指導を受け、約52万台の製品自主回収を発表しました。
今回の行政指導は、モバイルバッテリー販売事業者への初の行政指導となっており、事態の深刻さがうかがえます。Ankerといえば、コストパフォーマンスの高さで多くのユーザーから支持されているブランドですよね。そのAnkerの製品が大規模なリコール対象となったことで、「自分の持っている製品は大丈夫かな?」と心配になっている方もいるかと思います。
そこで、今回の行政指導の経緯から対象製品の詳細、そして私たちユーザーが取るべき対応まで、わかりやすく解説していきます。
行政指導の経緯と発表内容
まずは、今回の行政指導がどのような経緯で行われたのか、そして経済産業省が具体的にどのような指摘を行ったのかを見ていきましょう。
いつ、どのような経緯で行政指導が行われたのか
経済産業省は2025年10月21日、アンカー・ジャパンに対して行政指導を実施しました。この行政指導は、単なる注意喚起ではなく、同社の製品安全管理体制そのものに対する重大な指摘です。
実は今回が初めてではありません。これまで同社の製品については複数回のリコールが実施されており、その対象台数は約50万台に上っていました。つまり、以前から問題が繰り返されてきた経緯があるんですね。
経済産業省による具体的な指摘内容
経済産業省は同社に対して、年内をめどに次の事項について報告を求めました。
まず、リチウムイオン蓄電池に関する国内販売全製品を対象とした総点検の実施。次に、現在販売している製品についての製造・品質管理体制の報告。そして、実施するリコールの周知・広報の実施状況と、リコールの進捗状況についても報告が求められています。
これらの要求からも、経済産業省が今回の問題をいかに深刻に受け止めているかが伝わってきます。単なる一製品の不具合ではなく、企業全体の品質管理体制が問われているわけですね。
発火事故の実態と原因
次に、実際にどのような事故が発生し、何が原因だったのかを詳しく見ていきます。
報告された重大事故の件数
今回のリコール対象製品については、消費生活用製品安全法に基づき、合計41件の重大製品事故報告がなされています。41件という数字を聞くと、決して少なくない事故が発生していたことがわかりますよね。
「重大製品事故」というのは、製品の使用に伴って発生した事故のうち、死亡や重傷、火災などの深刻な被害を伴う事故のことを指します。つまり、単なる製品の故障ではなく、実際に危険な状況が発生していたということです。
発火の原因は何だったのか
特定の製品において発火する事象が日本国内で発生し、原因究明のための調査が行われました。その結果、電池セルの製造を委託しているサプライヤーの製造工程で、特定時期に異物が混入した可能性がある一部製品が日本国内に出荷され、使用に伴い電池セルの内部短絡が発生する可能性が判明しました。
もう少し詳しく説明すると、バッテリーセルというのはモバイルバッテリーやスピーカーの心臓部分です。ここに異物が混入してしまうと、使っているうちに内部でショート(短絡)が起きて、発火につながる危険性があるということです。
品質管理体制の課題
今回の問題で浮き彫りになったのは、サプライヤー管理の甘さです。Ankerは電池セルを外部のサプライヤーから調達していましたが、そのサプライヤーの製造工程で異物混入という重大な問題が発生していました。
大手メーカーであっても、部品を作っている会社の品質管理まで目が行き届かないケースがあるということですね。ユーザーとしては、有名ブランドだから安全だと思い込まず、製品選びには注意が必要だということを改めて認識させられます。
対象製品の一覧と販売期間
ここからは、具体的にどの製品が回収対象になっているのかを見ていきましょう。お手持ちの製品と照らし合わせながら確認してみてください。
モバイルバッテリー
Anker PowerCore 10000(A1263)

対象販売期間は2022年12月25日から2025年10月21日まで。対象台数は410,124台です。
このモデルはAnkerのモバイルバッテリーの中でも特に人気が高く、多くの方が使っていた製品ですよね。カラーバリエーションはブラック、ホワイト、ブルー、レッドの4色で展開されていました。
ポイントは、2022年12月15日以前に購入した製品は対象外という点です。もし古い製品をお持ちの方は、購入時期を確認してみましょう。
Bluetoothスピーカー
Soundcore 3(A3117)

対象販売期間は2022年12月16日から2025年10月21日まで。対象台数は91,933台。カラーはブラック、ネイビー、レッド、グレーの4色展開でした。
このスピーカーも手頃な価格で音質が良いと評判で、多くのユーザーが愛用していた製品ですね。
Soundcore Motion X600(A3130)

対象販売期間は2023年4月24日から2025年10月21日まで。対象台数は11,200台。
重要な注意点として、ホワイトカラーは対象外となっています。スペースグレー、ブルー、グリーンの3色が対象です。
取っ手のついた持ち運びしやすいデザインが特徴のモデルで、アウトドアでも使いやすい製品として人気がありました。
会議用スピーカー
Anker PowerConf S500(A3305)

対象販売期間は2022年12月29日から2025年10月21日まで。対象台数は8,980台。ブラックのみの展開です。
テレワークが普及する中で、オンライン会議用として導入した企業や個人も多かったのではないでしょうか。ビジネス用途で使っている方は、特に早めの確認をおすすめします。
ユーザーが取るべき対応(回収方法・窓口案内)
それでは、実際に対象製品を持っている場合、どのように対応すればよいのかを見ていきましょう。
シリアルナンバーの確認
まず最初に自分の製品が本当に対象かどうかを確認します。
- 製品本体の「SN:」という記載を探す
- その後に続くAから始まる16桁の番号がシリアルナンバー
- この番号をメモしておく
シリアルナンバーは製品本体に印字されていますが、小さく見づらい場合もあるので、明るい場所でしっかり確認してください。
オンライン受付フォームでの確認
シリアルナンバーが確認できたら、Ankerのモバイルバッテリー / スピーカー回収受付フォームにアクセスします。
受付フォーム: https://www.ankerjapan.com/pages/202510-support
このページの受付フォームにシリアルナンバーを入力すると、その製品が回収対象かどうかが判別されます。対象製品であれば、そのまま回収申し込みの手続きに進むことができます。
電話やメールでの問い合わせも可能
「オンラインでの手続きはちょっと不安」という方や、「スマホの操作が苦手」という方は、電話やメールでも対応してもらえます。
電話の場合、土日祝日を含む午前9時から午後5時まで対応しているので、平日お仕事で忙しい方も週末に問い合わせることが可能です。電話番号やメールでの問い合わせ先は受付フォームの下部に記載されています。

返金や交換対応の流れ
回収申し込みをすると、次のような流れで対応が進みます。
- 回収キットの送付 申し込みから通常2週間以内に、製品を返送するための回収キットが届きます。ただし、問い合わせが殺到している場合は、1ヶ月程度かかる可能性もあるようです。
- 製品の返送 送付される回収キットで郵送によって返品することが可能です。外箱やケーブルなどの付属品は返送不要で、製品本体のみを返送すればOKです。
- 交換品の発送 Ankerが製品を受け取り、確認が完了すると、交換品が発送されます。交換品の発送は2025年11月末から2026年2月末までの期間で順次行われる予定とのことです。
交換品の内容
交換品は製品によって異なります。
Anker PowerCore 10000の場合 このモデルはすでに販売終了しているため、上位モデルの「Anker Power Bank (10000mAh, 30W)」(型番:A1256)への交換となります。より性能が良いモデルになるので、ある意味ラッキーかもしれません。
ただし、交換品は充電仕様が異なり、5V=3Aでの充電が必要になります。付属ケーブルもUSB-C to USB-Cケーブルになるので、これまで使っていた充電器がそのまま使えない可能性があります。この点は注意が必要です。
その他のスピーカー製品 Soundcore 3、Anker PowerConf S500、Soundcore Motion X600については、同一製品の新品との交換になります。
交換後の製品には18ヶ月の保証期間が適用され、公式ストアで会員登録すれば延長保証も受けられます。
Ankerグループの対応と再発防止策
今回の問題を受けて、Ankerはどのような対応を取り、今後どう改善していくのか確認していきましょう。
該当製品の販売停止と契約終了
アンカー・ジャパンは、今回の事象を踏まえ、該当のサプライヤーとの契約を終了しました。問題の原因となったサプライヤーとは取引を打ち切るという、迅速な対応を取っています。
もちろん、対象製品はすでに販売停止となっており、これ以上問題のある製品が市場に出回ることはありません。
品質管理体制の厳格化
今後の再発防止策として、体制の見直し、製造時の品質やテスト基準の厳格化、サプライヤーの選定基準の再度見直し、Ankerグループが定める規定の強化、製品出荷前の検品における体制の見直しならびに検品項目の厳格化といった対応を進めています。
具体的には、次のような取り組みが行われる予定です。
セル製造サプライヤーの管理強化
前述したように、問題の根本原因はサプライヤーの製造工程にありました。セル製造サプライヤーにおける製品の製造過程にて、Ankerグループが定める規定に準拠するよう監査体制を強化しました。
製造から出荷までの各段階での厳格化
単にサプライヤーを監督するだけでなく、自社内での検品体制も見直されます。多層的なチェック体制を構築することで、万が一サプライヤー側で問題が発生しても、出荷前に発見できる仕組みづくりが進められています。
こうした再発防止策が実際に機能するかどうかは、今後の同社の製品品質を見守っていく必要がありそうです。
まとめ
今回のAnker製品の大規模リコールは、サプライヤーの製造工程における品質管理の不備が原因で、約52万台もの製品が対象となる重大な事態となりました。経済産業省からモバイルバッテリー販売事業者への初の行政指導が行われ、41件もの重大製品事故が報告されています。
対象製品をお持ちの方は、前述の通りにAnkerの公式サポートページ(https://www.ankerjapan.com/pages/202510-support)でシリアルナンバーを入力して確認し、回収申し込みの手続きを行ってください。
今回の事態でわかったことは、有名ブランドの製品であっても安全性に絶対はないということですね。リチウムイオンバッテリーを搭載した製品を使う際は、異常な発熱や膨らみなどの異変に注意し、少しでもおかしいと感じたらすぐに使用を中止しましょう。また、メーカーからのお知らせや経済産業省のリコール情報を定期的にチェックする習慣をつけることも大切です。