「2年後に返せばタダで買い替えできる」という触れ込みで広まったスマホ返却プログラムが、静かに、しかし確実に変わりつつあります。2026年に入り、ドコモ・au・ソフトバンクが相次いで返却時のルールを改定。一見するとわかりにくい変更ですが、よく読むと「乗り換えると2.2万円の支払いが発生する」という、かつての解約金を彷彿とさせる仕組みが浮かび上がってきます。
そこで、新しい返却プログラムの中身と何が変わったのかを整理しながら、ユーザーとしてどう対応すべきかを考えていきます。
また始まった「わかりにくいスマホ商法」
少し前まで、スマホの契約は「1円スマホ」や「キャッシュバック祭り」が話題の中心でした。2019年以降、総務省の規制強化でこれらの過激な値引きは難しくなったはずなのに、最近また「おトクな返却プログラム」をめぐる話題が増えていると感じませんか?
その正体が、今回の制度改定です。2026年2月〜3月にかけて、3大キャリアが一斉に動きました。ソフトバンクはすでに2025年8月から先行して「新トクするサポート+」を導入。これを追いかけるかたちで、auが2026年2月26日から「スマホトクするプログラム+」を、ドコモが同年3月5日から「いつでもカエドキプログラム」の利用条件を変更しています。
「横並び」という言葉がぴったりな、3社そろっての制度変更です。しかも、変更内容が驚くほど似通っています。
3大キャリアの新・返却プログラム、何が変わったのか
新しいプログラムの最大の変更点は、「返却時に最大2万2,000円の利用料が発生するようになった」ことです。各社でその呼び方が微妙に異なりますが、実態はほぼ同じです。
| キャリア | プログラム名 | 返却時の費用 |
|---|---|---|
| ドコモ | いつでもカエドキプログラム | 最大2万2,000円(プログラム利用料) |
| au | スマホトクするプログラム+ | 最大2万2,000円(特典利用料) |
| ソフトバンク | 新トクするサポート+ | 最大2万2,000円(特典利用料)※機種による |
これだけを見ると「返却するのにお金を取られるの?」と思ってしまいます。でも実はそれだけではありません。各社とも、「自社で次のスマホに機種変更するなら、この2.2万円を免除する」という特典をセットで用意しているのです。
ドコモなら「ドコモで買替えおトク割」、auなら「au買替特典」、ソフトバンクなら「買替え応援割」という名称。つまり、旧プログラムと新プログラムを比べると、構造はこう変わっています。
旧プログラム:端末を返却する → 残債が免除される(追加費用なし)
新プログラム:端末を返却する+2.2万円を支払う → 残債が免除される。ただし、自社で機種変更する場合は2.2万円が免除される
こうして整理すると、狙いは一目瞭然。自社ユーザーにとっては表面上はほとんど変わらない。ところが、他社に乗り換えようとすると2.2万円の負担が生まれる──そういう仕組みで「囲い込み」をかけているわけです。
一番の問題は「乗り換えの自由」を価格で縛る構造
この制度の本質的な問題は、乗り換えコストを事実上引き上げている点にあります。「自社で買い替えれば無料」「他社に移ると2.2万円」という二段構えのインセンティブ設計は、表現を変えれば「MNP(番号持ち運び制度)にペナルティを課す仕組み」にも見えます。
かつて禁止された「解約金(違約金)」が名前を変えて復活した、という見方もできるでしょう。総務省の規制によって解約金は廃止・上限化されたはずですが、今回の「プログラム利用料」や「特典利用料」は、あくまで任意のプログラムに伴うオプション料金という位置付けです。名目上は違約金ではないため、現行の規制には抵触しない構造になっています。
実際の違いを数字で確認してみましょう。
ケース1:2年後にA社→B社へ乗り換える場合
- 返却して残債免除を利用する場合、特典利用料2.2万円の支払いが必要
- 実質的な端末コスト:(分割払い分)+2.2万円
ケース2:2年後にA社で機種変更する場合
- 残債免除を受けられる
- 特典利用料2.2万円は免除される
- 実質的な端末コスト:(分割払い分)のみ
乗り換えると2.2万円かかる一方、同じキャリアに留まれば無料です。この差額が、ユーザーを「他社に移りにくい」状態に縛る「鎖」として機能しているわけです。
なぜ「また」こうした商法が復活してきたのか
背景にあるのは、規制と抜け道の「いたちごっこ」です。2019年以降、総務省は端末値引きの上限(実質的に2万円まで)やキャッシュバック規制を強化しました。これで過激な1円スマホや高額キャッシュバックは難しくなった。
しかし、キャリアが完全に黙っていたわけではありません。「残価設定型の分割払い」「2年後返却で残債免除」という形で、端末の実質価格を安く見せる仕組みを作り上げてきました。これが最初の世代の返却プログラムです。
そして今回の改定は、さらにその一歩先を行く設計といえます。プログラムを利用させながら、2年後に「自社で買い替えるか、2.2万円払って出ていくか」という選択を迫る形で、囲い込みを再実装しているのです。
総務省の有識者会合でも、返却プログラムの「わかりにくさ」や「囲い込みへの懸念」が指摘されてきました。しかし、現状では規制の網の目をくぐった設計になっているため、すぐに止められる状況でもありません。「第二世代」の囲い込みスキームが静かに広がっています。
一般ユーザーがハマりやすい具体的な落とし穴
では、実際にどんなミスが起きやすいのでしょうか。典型的なパターンをまとめます。
- 月額だけ見て「安い!」と契約してしまう
分割払いが低く抑えられているので月々の負担は軽く見えます。しかし2年後に返却する際、2.2万円の特典利用料が発生することを把握していないケースが多いです。 - 「どうせ2年後に乗り換えるから」と思いながら返却プログラムを組んでしまう
MNP前提でいるのに返却プログラムを利用すると、いざ他社に移るとき2.2万円の追加コストが生じます。 - 「使い続けた方が安かった」という逆転現象
端末を長く使う人にとっては、返却プログラムの月額費用を払い続けた挙げ句、2.2万円まで取られるという結果になりかねません。「返さない選択」の方がトータルで安くなるケースも出てきます。
そして、もう一つ見逃せない問題が、「販売現場でこの変更点がどこまで丁寧に説明されているか」という点です。店頭で「2年後に返すだけでお得!」と説明されても、2.2万円の利用料が生じる条件について十分に伝えられていなければ、ユーザーはあとから「聞いていなかった」と気づくことになります。SNS上ではすでにそういった声が多数上がっています。
どう身を守るか:チェックポイントと現実的な判断指針
では、返却プログラムを検討する際、何を確認すればよいのか?
最低限おさえておきたい確認事項は次の3点です。
- 返却時に発生する「利用料」の金額はいくらか(機種や容量によって異なる場合がある)
- 自社機種変更と他社乗り換えでは、総負担額がどう変わるか
- 「何年使うか」「キャリアを変える可能性があるか」を事前に決めておく
使い方別に、ざっくりとした判断指針を示すとこうなります。
| 想定パターン | 判断 |
|---|---|
| 2年後も同じキャリアで機種変更する予定 | 条件次第ではアリ。ただし免除特典の条件をよく確認する |
| 2年後に他社へ乗り換える予定 | 2.2万円が確実に発生するため、返却プログラムは避けた方が無難 |
| 3年以上使い続ける予定 | 分割払いの総額と2.2万円を合算して、一括購入との比較を |
| まだ迷っている | 返却プログラムには加入せず、まず様子を見るという選択肢も |
「どうせ同じキャリアで買い替えるから」という前提であっても、免除特典を受けるには購入タイミングや機種が条件に合致している必要があります。契約前に店頭またはWebで最新条件を必ず確認してください。
一番シンプルなのは「端末と回線を分ける」買い方
こうした複雑な条件に振り回されたくないなら、端末と回線を切り離して考える方法があります。メーカー公式サイトや大手量販店でSIMフリーの端末を購入し、回線は別途キャリアや格安SIMで契約するスタイルです。
このアプローチのメリットはシンプルで、総支払額が明確なこと、キャリアに縛られず自由に乗り換えられること、返却プログラムのような「条件付きの複雑さ」に悩まされないことが挙げられます。もちろん初期費用は大きくなりますが、少なくとも「2年後に何万円取られる」という仕組みとは無縁です。
まとめ:「月額」ではなく「総額」で考える時代
スマートフォンの購入にまつわる商法は、年々巧妙になっています。「月々○円」という目に見えやすい数字で安さを演出しながら、2年後の返却時に初めて全体像が見えてくる。そういう設計が、確実に定着しつつあります。
大切なのは、「月額いくら?」だけでなく、「2年間の総額はいくらか」「縛られる条件はなにか」「他社に移るとどうなるか」を事前に計算しておく習慣です。キャリアの説明は決して嘘をついているわけではありませんが、都合の良い部分が強調されがちであることも事実。書いてあること・言われたことの裏側を読む力が、いつもより求められる時代になったと感じます。
自分なりの「買い方ルール」を決めておくことも一つの手です。たとえば「返却プログラムには原則加入しない」「端末と回線は分けて購入する」「乗り換えの可能性があるなら絶対に返却プログラムを使わない」といったシンプルなルールを持っておくだけで、複雑な条件に惑わされるリスクは大きく下がります。
スマホは今や数年以上使い続ける高額な買い物です。ちょっとした確認の手間が、数万円の違いを生むことを忘れないようにしたいですね。

