2025年11月18日の夜、「インターネット壊れた」とも思えるような事態が起きました。XやChatGPTをはじめとする数多くのサービスが一斉に接続できなくなり、「いったい何が起きているんだ?」と不安になった方も多かったのではないでしょうか。
今回の問題は、Cloudflareで大規模障害が発生したのが原因。そこで、この大規模障害について、何が原因で、なぜこれほど広範囲に影響が出たのかを、できるだけわかりやすく解説していきます。
2025年11月18日夜、何が起きたのか
18日の午後8時48分ごろ、世界的なCDN(コンテンツデリバリーネットワーク)サービス大手の「Cloudflare(クラウドフレア)」で大規模な障害が発生しました。
Cloudflareとは、ウェブサイトの高速化やセキュリティ対策などを担う「インターネットの縁の下の力持ち」のような存在です。
CDNというのは、世界中に分散配置されたサーバーにコンテンツをキャッシュして、ユーザーに最も近い場所から配信する仕組みのこと。これによってウェブサイトの表示速度が向上し、大量のアクセスが集中しても安定してサービスを提供できるようになります。Cloudflareはこの分野で世界トップクラスのシェアを誇り、インターネット全体のトラフィックの約2割以上を支えているとも言われているんですね。
そんな「インターネットの心臓部」とも言える基盤サービスに障害が発生したため、それを利用している多くのサービスが一斉にダウンするという事態になりました。
時系列で見る障害の推移
今回の障害がどのように進行し、復旧に向かったのかを時系列で整理してみましょう。
20:48ごろ
Cloudflareのグローバルネットワークで大規模な障害が発生し始めました。ほぼ同時刻に、XやChatGPTなどで接続障害の報告が急増します。多くのユーザーが「タイムラインが読み込めない」「500エラーが出る」といった症状に見舞われました。
21:00ごろ
Cloudflare側が障害の発生を公式に認め、調査を開始したことを発表しました。このタイミングでステータスページが更新され、「Cloudflare Global Network experiencing issues(Cloudflareグローバルネットワークで問題が発生中)」という状態になっていることが確認されました。
21:21ごろ
一部で回復の兆しが見え始めたものの、エラー率は依然として平常時より高い状態が続いていました。完全な復旧にはまだ時間がかかる様子でした。
22:09ごろ
Cloudflareが問題の原因を特定し、修正の適用を開始したと発表。このあと段階的に復旧が進み、深夜にかけて多くのサービスが正常な状態に戻っていきました。
ただし、地域や機能によっては復旧のタイミングに差があり、WARP、Access、ダッシュボードなどの一部機能では、しばらく不安定な状態が続いたケースもあったようです。
障害の原因は何だったのか
Cloudflareの公式発表によると、今回の障害は「内部サービスの劣化(internal service degradation)」に起因するものとされています。具体的な技術的詳細はまだ完全には公表されていませんが、ボット対策の基盤サービスやネットワーク構成に関連する問題が発生した可能性が指摘されています。
複数の情報を総合すると、アプリケーション層の検証や保護コンポーネント(ボット対策、チャレンジ検証、アクセス制御など)でエラーが連鎖的に発生し、エッジサーバーでの応答が一時的に500系エラーに傾いたと考えられます。その結果、オリジンサーバーに到達する前の段階でリクエストが弾かれたり、積み残されたりする症状が広範囲で発生しました。
過去の大規模障害の事例を見ると、設定変更やソフトウェアのデプロイ、システムのバグなどが原因となることが多いですよね。今回も同様のパターンだった可能性があります。
どれだけ広い範囲に影響が出たのか
今回の障害の特徴は、その影響範囲の広さにあります。日常的に使われている主要なサービスが軒並み影響を受けました。
影響を受けた主なサービス
SNS・コミュニケーション系では、X(旧Twitter)が最も大きく注目されました。多くのユーザーが「ポストを読み込めません」というエラーに遭遇し、タイムラインの閲覧や投稿ができない状態に。
生成AI系では、ChatGPTをはじめとする会話AIや画像生成AIの一部が利用できなくなりました。仕事で使っている方も多いサービスだけに、影響は大きかったでしょう。
ゲーム・配信系も大きな被害を受けています。「リーグ・オブ・レジェンド」や「Valorant」といった人気オンラインゲームでログイン不可や接続障害が発生しました。
さらに、ビジネス・開発系のツール(CI/CD、ダッシュボード、API連携、各種SaaSサービス)や、EC・決済・予約サイト、ニュースメディア、運行案内サービスなど、本当に多岐にわたるサービスが影響を受けました。
ユーザーが体験した症状
具体的な症状としては、次のようなものが報告されています。
- ウェブページで「500 Internal Server Error」が表示される
- タイムラインや画像、リンクの読み込みが失敗する
- ログインができない、決済や予約などのトランザクションが途中で失敗する
- 画像や動画が表示されない
これらは一見バラバラの問題に見えますが、根本的にはすべてCloudflareのエッジサーバーにおける検査や中継の失敗、高いエラー率という共通の原因から生じていました。
「障害監視サイトもダウン」というメタ障害
今回の障害で笑うに笑えないのが、いわゆる「メタ障害』とも呼べる現象です。
通常、サービスに障害が発生した際、私たちは「Downdetector」のような障害監視サイトで状況を確認しますよね。ところが、これらの監視サービス自体もCloudflareを利用していたため、一緒にダウンしてしまいました。
「障害が起きているか確認したいのに、確認するためのサイトも見られない」という、なんとも皮肉な状況が発生。さらに、Cloudflareの公式ステータスページやダッシュボードも一時的にアクセスが困難になり、「何が起きているのか調べる手段がない」という混乱を生みました。
これは、インターネットの基盤サービスの障害がもたらす影響の複雑さと深刻さを、象徴的に示す出来事だったと思います。
なぜこれほど被害が広がったのか:単一障害点の問題
「なんで1社の障害で、こんなに広範囲がダメになるの?」と疑問に思った方も多いはずです。これには「単一障害点(Single Point of Failure)」という構造的な問題が関係しています。
Cloudflareは非常に優れたサービスで、多くの企業やサービスが次のような機能を利用しています。
- CDNによる高速コンテンツ配信
- DDoS攻撃などからの保護
- WAF(ウェブアプリケーションファイアウォール)によるセキュリティ
- DNS(名前解決)サービス
- ボット対策
これらの機能を使うことで、開発や運用のコストを大幅に削減できますし、セキュリティも向上します。特にスタートアップや中小企業にとっては、こうした基盤サービスの存在が事業の成長を加速させる大きな力になっているんですね。
しかし、それは同時に「Cloudflareという1社に大きく依存している」という状態でもあります。今回のように、その基盤で障害が発生すると、依存している全てのサービスが影響を受けてしまうわけです。
インターネットは多層・多事業者で構成されており、海底ケーブルの障害や主要クラウドの障害が起きても、直接の依存関係が薄いサービスは平常通り動き続けます。ただし、Cloudflareのような「横断的な経路・保護レイヤー」は非常に多くのサイトが利用しているため、ユーザーの視界には「インターネット全体が壊れた」かのように映ってしまうんです。
個人ユーザーとしてできること
今後、同様の障害が発生した際に、私たちができることをいくつかまとめておきます。
まず、公式の一次情報を確認することが大切です。Cloudflareや各サービスの公式ステータスページ、運営アカウントをチェックして、「本当に広域障害なのか」「自分の環境だけの問題なのか」を見極めましょう。
次に、複数のサービスやアプリで同じ症状が出るかを確認してみてください。1つのサービスだけの問題なのか、広範囲の障害なのかを判断する手がかりになります。
また、モバイル回線や別のブラウザ、別の端末で試してみるのも有効です。これでローカルな要因(自分の回線やデバイスの問題)かどうかを切り分けられます。
そして何より、広域障害の場合は時間を置くことです。利用者側でできることは限られているので、焦らず復旧を待つのが賢明でしょう。
重要な作業(決済や重要な投稿など)は、明らかにサービスが不安定な時間帯は避けるというのも、地味ですが効果的な対処法です。
まとめ:「インターネット壊れた」の正体
今回の「インターネット壊れた」とも言えるような現象は、Cloudflareという「見えないインターネットの道路公社」で大きな障害が発生し、それが社会の生活動線にまで波紋を広げた出来事でした。
インターネットは単一の企業が運営しているわけではなく、多層の仕組みが連携して動く巨大な社会インフラです。大規模障害をゼロにすることはできませんが、設計と運用の工夫で影響を限定的にすることはできます。
今回の障害は比較的短時間で復旧しましたが、またいつ起こるとも限りません。個人ユーザーとしてできることはあまり多くありませんが、とにかく慌てずに情報を集め、冷静に対処することが重要ではないかと思います。

