2025年に入ってから、スマホ業界に大きな変化が起きています。ドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの3大キャリアが相次いで料金改定を発表し、事実上の値上げラッシュが始まったんですよね。長らく続いた「値下げ競争」が終わりを告げ、業界全体が新たなフェーズに突入したと言えるでしょう。
一方、楽天モバイルだけが「値上げしない」姿勢を貫いています。楽天モバイルは現状の価格据え置きを継続すると明言しており、業界の中で独自のポジションを保っているのが現状です。
そこで、今回の価格改定の背景と流れ、最もお得なプランを選ぶにはどうしたらいいかなど、さまざまな課題について解説していきます。
直近の料金改定動向・各社の発表内容
まず、実際にどのような値上げが行われたのか、各社の動きを時系列で整理してみましょう。表面的には「サービス向上」を謳いながらも、実質的な料金アップとなるケースが目立っています。
3大キャリアの値上げスケジュール
2025年春から夏にかけて、3大キャリアが次々と新プランや料金改定を発表しました。まず、ドコモが最初に口火を切り、続いてKDDI、ソフトバンクが後に続く形で料金改定を実施。まるで示し合わせたかのようなタイミングで、業界全体の価格体系が変わりました。
楽天モバイルの独自戦略
一方で楽天モバイルは、明確に「値上げしない」方針を打ち出しています。
楽天モバイルの三木谷社長は「経済圏全体で考えている」と発言しており、単体での収益よりも楽天経済圏への導線としての役割を重視していることが伺えます。
「実質価格」のわかりにくさと抱き合わせ戦略の実態
各社の値上げで特に注意したいのが、料金体系の複雑化です。これはガラケーの時代から問題だと思っていますが、未だにこの点は改善されません。
さらに厄介なのは、一見すると「お得」に見える料金プランの裏には、巧妙な仕組みが隠されているケースが多いという点です。
複雑化する料金体系
まず注意したいのが、各キャリアが打ち出す「実質価格」という概念です。表示価格だけ見ると一見お得に見えますが、実際には自社のサブスクリプションサービスや決済サービス、ポイント還元などの特典を前提とした価格設定になっているケースが多いんですよね。
この手法により表示価格と実際の支払い額に大きな乖離が生まれる場合があります。
囲い込み戦略の加速
各キャリアは単純な通信料金の競争から、自社エコシステム全体での囲い込み戦略にシフトしています。例えば、次のような戦略です。
- 動画配信サービスとのセット割引
- 電子決済サービスの利用促進
- ポイント還元プログラムの複雑化
- クレジットカードとの連携強化
つまり、そのキャリアに忠誠を尽くせば割引が得られるといった感じではあります。しかし、これらの特典を利用しないユーザーにとっては、実質的な値上げとなってしまうケースがほとんどです。
「談合的」な値上げ状況の背景分析
ここからは、なぜ3大キャリアがこれほど足並みを揃えて値上げできたのか、その構造的な背景を深掘りしてみましょう。単なる偶然ではない、業界特有の事情が見えてきます。
寡占状態による足並み
なぜ3大キャリアがこれほど足並みを揃えて値上げに踏み切ったのでしょうか。次のような要因が挙げられています。
市場の寡占状態による価格協調
3大キャリアで日本の携帯電話市場シェアの約85%以上を占める寡占状態(総務省「通信市場・端末市場の動向について」(2025年度資料))が続いています。このような市場構造では、各社が激しい価格競争を行うより、暗黙の了解で価格水準を維持する方が全社にとって利益が大きくなります。
実際に、楽天モバイルの参入により一時的に価格競争が激化しましたが、楽天モバイルのシェアが限定的(約5%程度)にとどまったことで、3大キャリアは再び安定した収益環境を取り戻したと言えるでしょう。新規参入の脅威が薄れた今、わざわざ収益性を下げる価格競争を行う必要性が低下しています。
5G投資とインフラコストの増大
各社が値上げの理由として挙げているのが「コスト増加』です。5G網の全国展開には1社あたり数兆円規模の投資が必要で、基地局の設置密度も4Gの3~5倍必要とされています。
加えて、近年の人件費上昇、電力料金の高騰、半導体不足による設備調達コストの増加なども重なっています。ただし、営業利益率15~19%という高水準を維持していることを考えると、これらのコスト増加が値上げの「唯一の理由」とは言い切れない面もあります。
政府の値下げ圧力緩和
2018年から2021年頃まで、菅義偉氏(当時官房長官・後に総理大臣)を中心とした政府は「携帯電話料金の4割削減」を強力に推進しました。この圧力により各社は格安プランの導入を余儀なくされ、実際に料金水準は大幅に下がりました。
しかし、2022年以降はこうした政治的な値下げ圧力が大幅に緩和されています。岸田政権下では携帯料金問題への言及が減り、むしろ企業の収益性向上や賃上げ促進が重視されるようになりました。この政治環境の変化により、各社は「値下げ圧力から解放された」状況となり、収益重視の経営に回帰しやすくなったと考えられます。
サービス高付加価値化による競争軸の変化
業界全体が単純な価格競争から脱却し、サービスの高付加価値化による差別化戦略に転換していることがわかります。
これにより、従来のような「安さ」を売りにした競争は影を潜め、各社が独自のエコシステム構築に注力するようになったという部分も大きいです。
高収益構造の実態と値上げの真意
ここで見逃せないのが、3大キャリアの収益構造です。2025年時点での日本の大手キャリアの営業利益率は15~19%台と、きわめて高い水準で推移しています。具体的には、ドコモやKDDIの営業利益は年間約9,600億円、ソフトバンクも約6,700億円(2025年度予測)と、国内のインフラ企業の中でも際立つ高収益を上げているのが現状です。
この利益率は欧米の通信キャリアと同等かやや高めの水準で、設備投資や販促費を考慮しても「十分高収益」という評価が多くなっています。
「それでも値上げが必要なのか?」という疑問がユーザーの間で高まるのも当然でしょう。各社は人件費上昇、基地局増設、5G/6G対応、物価高騰を値上げ理由に挙げていますが、それ以上の高収益を維持している事実は否定できません。
端末販売規制の影響
2025年以降、端末の極端な割引(いわゆる「1円スマホ」)が規制されたことも、料金体系に影響を与えています。従来の端末販売利益や獲得契約数による収益モデルが制限された分、通信料金への上乗せ圧力が働いている側面もあるんですよね。
楽天モバイル vs MVNO:どちらを選ぶべきか
このような状況下でMVNO(格安SIM)や楽天モバイルの存在は、市場の健全性を維持する上で重要な役割を果たしています。
自分にとってどちらが最適かをチェック
3大キャリアの値上げが進む中、代替選択肢として注目されるMVNOと楽天モバイルですが、それぞれに特徴があります。
通信速度と安定性の違い
楽天モバイルは自社回線(MNO)のため、都市部では80~100Mbps、地方部でも50Mbps超の実測値が一般的で、混雑時でも大きく速度が低下しにくいのが特徴です。2024年からのプラチナバンド開始により、屋内や地方の接続も改善しています。
一方、MVNOは3大キャリアの回線を「間借り」しているため、早朝・夜間は30~80Mbpsと十分な速度が出ますが、昼休みや通勤時間など混雑時には10Mbps未満、場合によっては1Mbps以下まで落ちることも珍しくありません。これは実測データでも確認されている事実で、動画視聴や大容量利用には不向きな時間帯があります。
料金面での比較
料金の安さという点では、3GB程度の少量利用ならMVNOが月額1,000~1,500円と楽天モバイルの段階制料金(1,078円~)よりもさらに安い場合が多くなっています。
しかし、大容量利用では楽天モバイルの「20GB超で3,278円」のワンプランが業界最安クラスとなり、使い放題を考えるなら楽天モバイルの方が割安です。
エリアとサポート体制
エリア面では、MVNOが全国の3大キャリア網を利用できるため、楽天モバイルより圏外になりにくいメリットがあります。楽天モバイルは都心部・地方都市では格段に改善していますが、一部の地下やビル内部では依然として電波が弱い場所もあります。
サポート面では、楽天モバイルが店頭サポート、楽天ポイント付与、かけ放題無料など、MVNOより充実したサービスを提供しています。
項目 | 楽天モバイル | MVNO(格安SIM) |
---|---|---|
速度安定性 | 混雑時も大きく低下しにくい | 混雑時間帯は極端に低速化 |
エリア | 改善中(一部に弱みあり) | 全国キャリア網で◯ |
料金(少量) | 段階制でやや割高の場合も | 3GB以下は最安レベル |
料金(大容量) | 20GB超の無制限で割安 | 20GB超は高額 |
サポート・特典 | 店頭/ポイント/かけ放題◎ | 店頭×、特典は小さい |
どちらを選ぶべきか
通信品質を重視し、混雑時間帯に大量利用する人や楽天経済圏ユーザーには楽天モバイルが向いています。一方、昼休みや通勤時の利用が軽く、コスト重視ならMVNOが最適解となるでしょう。
ユーザーとしては、次の点を意識することが大切です。
- 自分が実際に使うサービスは何か
- 付帯サービスなしの「素の料金」はいくらか
- 他社への乗り換えコストと比較した場合の実質負担額
なお、楽天モバイルは乗り換え不要でも申し込むだけで10,000ポイント、さらに紹介した方には7,000ポイント、乗り換えなら最大13,000ポイントといったキャンペーンをしています。このようなキャンペーンを組み合わせてお得かどうかを判断してみてもいいと思います。
まとめ:冷静な判断で自分に合ったプランを選ぶことが大事
長らく続いた値下げ競争が終わり、各社が独自のエコシステム構築による収益確保に舵を切ったことで、消費者にとって料金比較がより複雑になっています。
この値上げが単純なコスト転嫁ではなく、業界の高収益構造維持に寄与している側面が強いことです。適正利益を超えた高収益を背景とした値上げは、消費者にとって納得しにくいものと言えるでしょう。
そのため、ユーザーには冷静な判断力が求められていると思います。表面的な「実質価格」に惑わされることなく、自分のライフスタイルに本当に合ったプランを選択する力が必要です。
MVNOや楽天モバイルといった選択肢も含めて、冷静に比較検討することが今後ますます重要になるでしょう。業界の変化を正しく理解し、賢い選択をしていきたいものです。
この記事は2025年9月時点の情報に基づいて作成されています。料金やサービス内容は変更される可能性がありますので、最新情報は各社公式サイトでご確認ください。